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エイルが光の中に入ると、光の中に町の中に人がいる光景が映し出されていた。

その光景をよく見てみると、町の中にエイルとエイルの母親のエミーの姿が映っていた。

エミーは用事があったのかエイルに釘を刺してその場所から離れようとしていた。

「良い、エイル?私が戻って来るまで絶対にここから離れちゃダメよ。分かった?約束出来る?」

「うん、分かった。大丈夫だよ、お母さん。早く行って来て。」

「そう……じゃあお母さんすぐに戻って来るからね。それまでここでじっとしているのよ。良いわね?」

「うん、分かった。」

そう言うとエミーは急いでその場所からどこかへと向かって行った。

そしてエイル達のやり取りを遠くで見つめるある1人の人間がいた。

その人間の姿をよく見てみると、何と昔のマリーの姿が映っていた。

「……あれはまさか精霊なの……?……確か精霊の力でノートを封印していると聞いた事があるわね……。……じゃああの精霊がいれば私にも大きな仕事が任されるかもしれない……さっきの女が精霊の使い手なの……?……どちらにしてもあの子供は手に入れておいた方が良さそうね。」

するとマリーはエイルの方に近付いて行ってエイルに話しかけた。

「……ねぇ、あなた。さっきのはあなたのお母さん?……あなたのお母さんにあなたの事を連れて来て欲しいと頼まれたんだけどちょっと一緒に来てくれるかしら?」

「……おばさん誰?お母さんはさっきここにいるように言ってたけど……。」

「……事情が変わったのよ。急いでいるからすぐにあなたの事を連れて来て欲しいと言っていたわ。さぁ、早く私と一緒にお母さんの所へ行きましょう。」

「……。」

エイルが返事が出来ずに黙っていると、その様子を見ていたシルフがエイルに言った。

「ダメだよ、エイル!エミーはここで待っているように言っていたよ!その人の言っている事は嘘だよ!信じちゃダメだよ!」

「……。」

するとシルフの言葉を聞いたマリーが突然エイルの手を引っ張ると、エイルを連れてそのままどこかに行こうとした。

「……痛い!止めて!おばさんは一体誰なの⁉︎やっぱりおばさんの言っている事は嘘だよ!早く離して!」

「……良いから一緒に来なさい!大人しくしてなさい!」

「嫌だよ!お母さん!怖い!助けて!」

「……静かにしなさい!言う事を聞かないと一生あなたのママに会う事が出来なくなるわよ!それでも良いの⁉︎」

「……。……一生……?一生お母さんに会う事が出来なくなるの……?……そんなの嫌だよ……。」

「……そう……じゃあ私の言う事を大人しく聞いて頂戴。……大丈夫、後であなたのママの所にちゃんと連れて行ってあげるから。それまで大人しくしてなさい。良いわね?」

「……分かった。」

するとマリーはエイルを連れてそのままどこかへと行ってしまった。

シルフはエイルの事を見失わないように必死でエイル達の後を追いかけていた。

しばらくすると用事を済ませたエミーが先程の場所にエイルを迎えに戻って来ていた。

しかしエミーがさっきの場所に戻ってもその場所にエイルの姿はどこにも見当たらなかった。

「……何でいないの……?……エイル!エイル!一体どこにいるの⁉︎……すみません!さっきこの場所に小さな女の子がいたと思うんですけどどこに行ったか分かりませんか⁉︎」

エミーは近くにいる人達に必死にエイルの事を聞いて回った。

一方マリーはエイルを連れて、エミーがいる場所から遠く離れた建物の中へと入って行った。

建物の中に入るとマリーはシルフに質問した。

「……ここまで来れば大丈夫かしら……。……それでちょっと聞きたい事があるんだけど、精霊さん。精霊の使い手というのはこの子なの?それともこの子のお母さん?どっち?」

「……エミーだよ。エイルは私のパートナーじゃない……エミーの子供だよ。……ねぇ、お願いだからエイルをエミーの下に返してあげて。エイルには何の関係も無いはずだよ!」

「……出来ない相談ね、それは……私からも1つ質問があるんだけど良いかしら……?あなたがノートを封印していると聞いた事があるんだけどそれで間違いないかしら?」

「……うん、そうだよ……でもその為には私だけじゃなくてエミーの力が必要なんだ!だからエイルは関係無い!早くエイルをエミーの所へ返してあげて……。」

「……そう、分かったわ。じゃあ質問を変えようかしら……じゃあ別の事を聞くわよ。もしあなたの力を使う事になるとすれば、それはエミーじゃなくてエイルでも出来るの?どっち?」

「……それは……。……エイルにはまだ無理だよ。エミーじゃないと私の力は使えないよ、きっと……。」

「……そう、困ったわね……私はこの子をエミーの所へ返す気は無いわ。この子をそのまま別の場所へと連れて行く。そうすればあなた達は私の下で働いてくれるかしら?……どうなの?」

「……それは……私には答える事が出来ないよ。エミーに相談してみないと……。」

「……そう、分かったわ。じゃああなたがエミーの所まで行って状況を説明して来て。ここに戻って来る時はあなた1人で戻って来るのよ。良い?もし約束を破ったらこの子がどうなるか分からないわよ?」

「……分かった。……じゃあエミーの所に行って話してくるよ。それで良いんでしょ……?」

「ええ、そうね。じゃあいってらっしゃい。」

「……うん、じゃあ行って来るよ……。」

シルフはエイルに何が起きたかを伝える為に急いでエミーの下へと向かった。

エミーはまだ必死にエイルの事を探していたが、しばらくするとシルフが戻って来て今起きている状況をエミーに説明した。

「何ですって⁉︎それじゃあエイルは誘拐されたというの……?……そんな……私が目を離したばっかりにこんな事に……。」

「……うん……どうするの、エミー?彼女はエイルの事を返さないって言ってる……。」

「……そう……そのマリーっていう女は私達の事を働かせるって言ったのね⁉︎」

「……うん、そうだよ。……どうするの、エミー?私には決められない……エミーがどうしたいかを教えて。私はその通りにするから……。」

「……ゴメンね、シルフ。そのマリーという女の所へ戻ってあなたの要求に従うと伝えて。その代わりエミーには危害を絶対加えないように言って。良い?」

「……うん、分かった。……本当にそれで良いんだね?そう伝えるよ?」

「……ええ、大丈夫よ。エミーが心配だから早く行ってあげて。よろしくお願いね、シルフ。」

「……うん、分かった。じゃあ伝えて来るね。」

エミーから伝言を預かるとシルフは急いでマリーがいる場所まで戻って行った。

マリーの下に辿り着くとシルフは急いでエミーからの伝言をマリーに伝えた。

「……そう……じゃあ私の言う通りにするという事ね……分かったわ。じゃあ今度はノートを持って私が指定する場所へ来てもらえるかしら?場所は今から教えるわ。その事を彼女に伝えて来てもらえるかしら?」

「……うん、分かった。」

シルフはマリーから伝言を預かると急いでエミーの下へと戻って行った。

エミーはシルフから伝言を聞くと、意を決した表情でシルフに言った。

「……分かったわ。ノートを持っていけばいいのね?じゃあそうすると伝えて。……それと、シルフ。あなたがいないと私はノートに触れる事が出来ないわ。その女にその事も伝えて。あなたと一緒にノートを持って行くって。」

「……うん、分かった。じゃあそう伝えて来るよ。」

シルフはマリーの所へ戻るとエイルから預かった伝言を伝えた。

「……そう、分かったわ。じゃあ今から指定する場所にあなた達2人でノートを持って来て。良い?今から場所を教えるわよ?」

「……うん、良いよ。」

シルフがエミーの所へ戻ってマリーからの伝言を伝えると、エミーは急いでノートを取りに向かった。

そしてマリーはノートを無事手に入れると急いでマリーに指定された場所まで向かった。

エミーがマリーに指定された場所へ行くとマリーが1人でその場所で待っていた。

「……あなたがエイルを……エイルはどこなの⁉︎さっさとエイルを返しなさい!」

「まぁ、怖いわね……残念だけどそれは無理ね。あの子はもう別の場所に移しているわ。あなた達が私に何かしようとしても無駄よ。その時はあの子の命が無いと思う事ね。」

「くっ……。……。」

「……心配しないで。もしあなた達が私の言う事を聞いてくれるのだったらあの子には何の危害も加えないから。……それに定期的にあの子が無事かどうかを確認させてあげるわ。どう?悪い話じゃないでしょ?」

「……。……分かったわ。あなたの言う通りにする。だから絶対にエイルには危害を加えないと約束して。そうすれば私はあなたの言う通りにするから。」

「……ええ、良かったわ。あなたが話が分かる人で。じゃあこれから長い付き合いになると思うけどよろしくね。」

「……ええ……。」

こうしてマリーはエミー達の力を使ってノートを手に入れた。

マリーはその後中央政府にかけあってノートを封印する為の施設のエポルタ修道院を作った。

エミーはマリーに言われた通り、エポルタ修道院でノートの管理をしながらエイルの事をずっと案じていた。

その後エミーは病気にかかり満足に動く事が出来なくなっていた。

エミーは自分の最後が近いと悟ったのか、シルフに最後にエミーに対しての伝言を残そうとしていた。

「……シルフ、私はもう長く無いわ。エイルはまだ試練を受ける事は出来ないけどノートを封印する事だけだったらあなたの力で出来る?」

「……うん……それだけならエイルでも可能だよ……でもそうなったらエミーはもう風の精霊の使い手じゃなくなるよ。それでも良いの?」

「……ええ、私は構わないわ。エイルの下に行ってあげて。あなたがいればエイルはきっとこの先も大丈夫なはずよ。シルフ、何かあったらエイルを助けてあげてね。」

「……うん、分かった。」

シルフが黙っているとエミーが静かに口を開いた。

「……それと……ゴメンね、シルフ。もう1つだけお願いがあるの。……エミーがもしこの場所から逃げ出す事が出来そうになったら私からの言葉をあの子に伝えて欲しいの。」

「……うん、良いよ。何て伝えれば良いの……?」

「……エイル、あなたを襲っている心配や不安からは何も生まれないわ。お母さんの事はもう何も心配しなくていいからこれからはあなた自身の事を考えて生きてみて。そうすればきっとあなたに相応しい生き方が見つかるはずだから。あなたは自由よ。……そう伝えて。」

「……うん、分かった。ちゃんと伝えるよ。……エミー、もう良いの?」

「……ええ、エミーの所へ行ってあげて。……今まで本当にありがとね、シルフ……。」

「……うん、私もエミーと一緒で楽しかったよ。……エミー、ありがとう……。」

「……うん……ゴメンね、シルフ……。……さぁ、エイルの所へ行ってあげて。エイルをよろしくね……。」

「……うん、分かった。……じゃあね、エミー……。」

「……ええ……さよなら、シルフ……。」

そして光の中の映像が消えるとシルフがエイルの所へ戻って来た。

「……エイル、君の最後の試練はマリーから解放される事だよ。これは現実世界に戻ってやらなくちゃいけないんだ。……大丈夫?……出来る?」

「……うっ……うん……大丈夫……ちゃんとやる……。」

「……分かった。じゃあ現実世界に戻るね。……エイル、守ってもらう事ばかりじゃダメだよ。自分でどうにかする事が大事なんだ。そうじゃないとエミーも安心出来ないよ……。」

「……うっ……うっ……分かった。ちゃんとする……お母さんにもう心配かけたりしない……私がちゃんとしてお母さんを早く安心させてあげなきゃ……。」

「……分かった、じゃあ現実世界に戻るよ。」

こうしてエイル達は光の空間から抜け出した後、エイル達を乗せた竜巻はマリーが待っている場所へと向かった。

果たしてエイルはマリーに自分の口で言葉を伝えてマリーから解放される事が出来るのだろうか?

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