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レイドはゾイが1人で生きていけるようになるまでの間、ゾイと一緒に旅をしていた。
そんな時、レイドはゾイに自分に起きた出来事について話し始めた。
「……え⁉︎そんな……じゃあ200年もずっとその姿のまま生きているんですか?」
「……ああ……まぁ慣れちまったらどうって事無いんだがな……良い加減終わりが見えないのも辛いぜ。さっさと普通に戻りたいんだがな……。」
「そんな……あの!僕がそのノートっていうのを取って来ます!そうすればレイドさんは元に戻れるんでしょ⁉︎じゃあ僕にやらせて下さい!僕も何かレイドさんにお礼がしたいから……。」
「はっ……良いよお前は、気にしなくて。それに今ノートがどこにいるか分からないんだ。とにかくお前は自分の事だけ考えてろ。良いな?」
「そんな……レイドさんは僕の恩人だから僕も何か役に立ちたいんです!やらせて下さい!」
「……だから良いんだって!……お前みたいなのに心配されるようになったら俺もお終いだな。……まぁこれは俺の問題だ。俺自身で片をつける。お前は首を突っ込むな。良いな?」
「……はい、分かりました。」
それからレイドとゾイは色々な場所を2人で旅して回ったが、ノートが見つかる事は結局1度として無かった。
そして月日は流れてゾイが18歳になる日を迎えた。
ゾイはレイドに剣術を叩き込まれ、1人前の男になったと言える程たくましく成長していた。
そしてレイドはゾイがもう1人でも十分生きていけると思ったのかゾイに話を切り出した。
「……なぁ、ゾイ。お前はもう十分成長した。もうお前なら俺の助けが無くてもやっていけるよ。これから先は1人で生きていってみろ。遅かれ早かれいずれ別れなきゃいけないんだ……だからここでお別れだ。」
「……レイドさん……。」
「……そこでだ……まぁ卒業試験とでも言うのかな……最後にお前の腕を確かめてやる。全力でかかって来い。良いな?」
「……レイドさん……はい、分かりました。よろしくお願いします……。」
レイドとゾイは剣を抜くとお互い一斉に斬りかかった。
レイドはゾイを巣立たせる為に戦ったのだが、結果はレイドの圧勝だった。
「……どうした?もう終わりか?」
「ハアッ!ハアッ!もう一回、もう一回お願いします!」
「……ああ、良いよ。何度でも付き合ってやるよ。」
ゾイはレイドに何度も挑戦したが全く歯が立たず、それを見たレイドは刀を鞘に収めた。
「ハアッ!ハアッ!待って下さい!レイドさん!もう1度だけ……もう1度だけお願いします!」
「……いや、もう良い。今のお前じゃ何度やっても同じだ。……だがお前も昔に比べたら随分と強くなった。今度やる時はそうだな……お前の名前が俺の耳に聞こえるようになった時だ。それまで楽しみは取っておく。なに、時間はあるんだ。何年かかっても良い。俺がお前の居場所を見つけられる位まで強くなれ。良いな?」
「レイドさん……はい!分かりました!その時までもっと精進して強くなってみせます!だからその時を楽しみにしていて下さい!」
「……ああ、分かった。頑張れよ。……じゃあ俺はもう行くぜ。達者でやれよ。」
「……あの!レイドさん!本当にありがとうございました!このご恩は一生忘れません!……必ずあなたに認めてもらえれるまで強くなってみせます!……だから……その時までどうかお元気でいて下さい!」
「……ああ、分かった。じゃあな、ゾイ。その時を楽しみにしている。また会おうぜ!」
「……はい!ありがとうございました!」
こうしてレイドはゾイの前から姿を消した。
しかしレイドがゾイの前から姿を消して50年近くの時間が過ぎたがレイドの耳にゾイの名前が聞こえてくる事は無かった。
レイド1年前
レイドがミッドガルドの町の外れでゴロツキ共を倒しているところをその場を通りかかったジェダが偶然にも見つけた。
(……何という強さだ……!こいつを仲間に出来れば大きな力になる!……しかし扱い方を間違えれば私に危険が及ぶかもしれんな……どうする……?)
ジェダが答えが出せず立ち止まっていると、ジェダの存在に気付いたレイドがジェダの近くまで歩いて行って言った。
「……何だ?俺に何か用か?」
「……いや、素晴らしい腕だと思ってな。……どうだ?良ければ私と一緒に来ないか?君なら歓迎するよ。……おっと……名乗るのが先だったな。私はジェダ。このミッドガルドの下の町を治めている。君の名は?」
「……俺か。俺はレイドだ。……まぁ良いぜ、あんたの考えに乗ってやっても。どうせ暇だったからな。」
「……そうか……ではとりあえず我々のアジトまで案内しよう。君ならば大歓迎だ。」
「……ああ、そうか。じゃあとりあえずよろしくな。」
「……ああ……ではアジトまで案内するから付いて来てくれ……。」
「ああ、分かった。」
こうしてレイドはジェダと出会い、それから行動を共にする事となっていく。
ジェダの正体が分かるとレイドは再びノートを見つける為に動き始めていく。




