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ドグールの目の前までやって来たノートはどうやって中に入るかに戸惑っていた。
(……何だこの場所は……?)
ドグールは王国の周りが木や植物に覆われていて高い城壁になっており、一見するとどこからも入る事が出来ないように見えた。
(城ごと破壊しても良いがそこまでする必要も無いか……まぁ良い、さっさと済ませよう。)
するとノートはドグール城の高い城壁をいとも簡単き飛び越えた。
「……おい、何か上から人が降ってきてないか……?」
「上から人?まさか気のせいだろ……!おい!誰か来る!全員構えろ!」
ノートが着地した場所には数人のドグールの兵士と思われる人々がいて、ノートが突然空から降ってきた事に驚きを隠せていなかった。
「……おい!何だこいつ⁉︎一体どうやってここに入って来た⁉︎」
「……さぁ、知るかよ。そんな事よりもこいつをさっさと片ずける事を考えた方が良いんじゃないか?」
「……違いないな。おい!絶対にこいつを城の中に入れるなよ!決して王の下へは行かせるな!良いな⁉︎」
「ああ、分かってる!」
兵士達は剣を抜きノートが襲ってくるのを待ち構えていた。
するとノートは少し笑みを浮かべた後声を荒げながら兵士達に言った。
「バカバカしい……貴様等に一体何が出来るというのだ⁉︎」
するとノートが突然兵士達に襲いかかり、兵士達は1人2人と次々とノートの力で怪物の姿に変えられていった。
「……おい!一体どうなってるんだ⁉︎何でこいつ等こんな姿になってるんだ⁉︎」
「分からん……!ちっ!おい!お前は城の中に行って王にさっさと逃げるように言え!ここは俺が食い止める!」
「……ああ……お前は大丈夫なのか?」
「さっさと行け!時間が無いんだ!早く行って王にこの事を報告しろ!」
「……ああ、分かった。」
怒鳴られた兵士は急いで城の中へ入って行くと王がいる王宮へと向かった。
王宮に辿り着くと兵士は急いで王に城の外で起きている出来事を伝えた。
「王様!大変です!城の外に怪しい者が現れました!その者に触れられた兵士達は次々に怪物の姿に変えられてしまいました!どうか早くお逃げ下さい!」
すると兵士の言葉を聞いた王が驚いて椅子から立ち上がると青ざめた表情をして言った。
「……何と言った、今⁉︎怪物にされたと言ったのか⁉︎」
「はい!そうです!早くお逃げ下さい!敵はもうすぐそこまで来ています!」
すると王は何かを思い出したのかぶつぶつと独り言を言い出した。
「……まさかノートが来たといのか⁉︎ノートの封印が解かれたという事か⁉︎……言い伝えの中の話とだけ思っていたが本当に人を怪物に変える事が出来るという事か⁉︎……ええい!おい!ジェンドはどこだ⁉︎どこにいる⁉︎」
「……いえ……今日はお姿を拝見しておりませんが……。」
「……くっ!あの馬鹿息子が……!こんな時にどこをほっつき歩いとるというんだ……⁉︎おい!お主!城の周りに行ってジェンドを探してきてくれ!ジェンドを見つけたらここから出来るだけ遠くへすぐに離れるよう伝えるのだ!」
「……はっ!かしこまりました!」
兵士が王宮から出ようとした時王宮の中にノートが入って来た。
「……あわわ……王様!こいつです!この男が他の者達を怪物に……うわぁ!」
するとノートに触れられた兵士の姿がみるみるうちに怪物へと変化していった。
「……くっ!ここまで来たか……!おい!そなたは早く城から出てジェンドを探し出せ!何としてもジェンドをこの場所から遠ざけるのだ!あやつをやられたらこの世界は終わりだ!急げ!」
「はっ……!かしこまりました!」
王に命令された護衛の兵士はノートがいる方向の反対側の出口から王宮を出て行った。
「……さてわしの出番みたいだな……いつかこのような事が来るならもっとちゃんと稽古を積んでおくべきだったか……。この老い先短い命、世界の役に立てるのであれば喜んでくれてやろうではないか!さぁ来い!相手になってやろう!」
「ふっ……死に急ぐか。それも良かろう。」
「何を⁉︎随分と余裕なのだな⁉︎良いから黙ってかかって来い!」
するとノートは一瞬で王の目の前まで移動すると王の体に触れた。
「ぎゃー‼︎一体何じゃ⁉︎体が熱い……?どうなっておる……?」
するとノートに触れられた王の姿がみるみる変わっていき、怪物の姿へと変化した。
「さぁ次はそなた達の番だ。覚悟は良いな?」
すると大臣が王宮の中に残っている兵士達に命令した。
「おい!お主!城の中にいる兵士達に出来るだけこの場所に集まるように伝えろ!それ以外の者にはただちに城の外に出るよう伝えよ!おい!他の者はただちにその者の周りを取り囲め!……よもやこのような事態になろうとはな……良いか⁉︎こやつを絶対に取り逃がすな!王の最後の願いを絶対に反故にしてはならんぞ!王子の下へは絶対に行かせるでないぞ!我々の手でそやつを食い止めるぞ!良いか⁉︎行くぞ!」
「はっ!」
大臣達がノートと戦っている時王から命令された兵士はジェンドを探して城の中を駆け回っていた。
「くっ……ここにもいない!おい!誰か⁉︎誰か王子を見なかったか⁉︎」
すると逃げようとしていた召使いが兵士の下へ近付いて来て言った。
「あの……王子様ならいつも良くいるお城の裏にある丘の上でお見かけしましたが……。いつものように丘の上で気持ち良さそうに寝ておられるようでしたが……。」
「そうか……分かった!ご苦労だったな!そなたはもう良い、さっさと逃げられた方が良いぞ。今王宮で他の者達が化物の相手をしておる。いつここまで来るか分からんぞ。早く逃げなさい。」
「はい!分かりました!」
すると召使いは走って城から出て行った。
兵士は裏口の方から城を出ると王子が寝ているという丘の上へと向かった。
兵士が丘まで着いてそこを登って行くと、ふっくらとした体の男が丘の上で気持ち良さそうに眠っていた。
「王子!起きて下さい!大変な事態なんです!王子!」
「……んー!何だ一体⁉︎ちょっとうるさいぞ!」
「王子!城の中にノートと呼ばれる怪物が攻め込んできました!城の中の人々がノートの手によって怪物の姿へと変えられていっています!このままでは王も……王子!今こそ土の試練を受けてお城を守られる時です!私も土のほこらまでご一緒致します!早く土のほこらへ行きましょう!」
「……そんな……父上が……まさか……?」
「……王子、お気持ちは分かります。ですが今は一刻の猶予も無いのです……さぁ早く土のほこらへ向かいましょう!土の精霊の力があればお城の人々を助けられるかもしれません!」
「……ああ、分かった……。」
ジェンドは兵士に連れられて土のほこらへと向かった。
果たして土のほこらでどんな試練が待ち受けているのか?
そしてジェンドは試練を無事乗り越えて土の精霊を仲間にする事が出来るのだろうか?




