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次の日の朝早くレイラは外に出る為に身支度を整えていた。

「もう良い、この世界でのわらわの事は好きにすれば良い……本当に大切なのはこんな世界からさっさと抜け出す事じゃ。奴等が何か言ってきたとしても気にする必要等一切無い!この世界から抜け出す事だけを考えるのじゃ!奴等からその情報を聞き出してさっさとこんな世界から出て行ってやろうではないか!」

レイラは身支度を整えると勇み足でアコラの町へと向かった。

アコラの町に着くとレイラは最初に出会った人に早速話しかけた。

「済まぬ、ちょっと話を聞きたいんだが……水の洞窟という場所の事を聞いた事はないか……?」

「……何だ、レイラか?……知らないよ、そんな場所。他の奴に聞いたらどうだ?」

そう言うと町の人間はさっさとその場所から離れて行ってしまった。

レイラは拳を握りしめて不敵に笑った後、別の人を探してまた同じ事を聞いた。

「……済まぬ!ちょっと話を聞きたいんだが……水の洞窟という場所の事を知らんか⁉︎」

「あ⁉︎レイラじゃないか⁉︎知らないよそんな場所!あっちに行った!行った!」

レイラはうなだれながら膝に手を付いたが、すぐに気持ちを切り替えて顔を上げた。

「おのれ……絶対に今日でこんな事は終わらせるぞ……見ておれよ!」

するとレイラは開き直ったのか手当たり次第に町の人達に水の洞窟の事を聞いていった。

「済まぬ!水の洞窟という場所の事を聞きたいんだが……何か知らぬか⁉︎」

「ちょっと⁉︎レイラじゃない!知らないわよそんな場所!あっちに行ってよ!」

「……くっ……!済まぬ!水の洞窟という場所の事を聞いているんだが……何か知らぬか⁉︎何でも良い!何か知っている事があったら教えてくれ!」

「はっ⁉︎知らないよ、そんな場所。他の奴に聞いたらどうだ?」

「くっ……何故じゃ?何故誰も答えようとせんのだ……あっ!済まぬ!水の洞窟の事を聞きたいんだが⁉︎」

レイラは手当たり次第に道行く人に水の洞窟の事を聞いて回ったが誰も答えてくれる人はいなかった。

するとレイラの目の前を1人の老婆が通り過ぎて行くのが見えた。

「……くっ……あの人なら何か情報を教えてくれるかもしれん……若い奴等ではどうしようもないな……ここは丁寧にいかんとな……すみません!ちょっと話を聞いて頂けませんか⁉︎」

「はい?」

老婆はレイラから呼び止められるとその場に立ち止まった。

(……ここを逃せば後はないな……出来るだけ丁寧に……相手の事を考えながら話さねばならぬ……。)

するとレイラはいつもよりもかしこまった態度でなるべく慎重に老婆に話しかけた。

「……あの、すみません……水の洞窟という場所の事をお伺いしたいんですが……?何か知っている事はありませんか?」

「水の洞窟ですか……?いえ……そんな名前は聞いた事が無いですが……。」

「何でも良いんです!知っている事があったら教えて下さい!絶対にご迷惑をおかけしませんので!どんな事でも良いんで教えて下さい!……分からないのでしたら何か思い出せる事はありませんか……?」

すると老婆はレイラに優しく微笑むとゆっくりとした口調で話しかけてきた。

「……レイラ、良くやりました。あなたに必要なのは周りの事ばかりに気を取られるのではなく必要と感じたら自分の目的に集中する事です。今感じたその気持ちを絶対に忘れないようにして下さいね。」

「そなた……!まさかウンディーネ⁉︎」

「ええ……あなたの試練はこれで終わりです。さぁ早く元の世界に戻りましょうか?」

すると老婆の周りから光が放たれて辺りが真っ白に光り見えなくなった。

光が消えた後レイラが目を開けるとレイラは水の洞窟に戻って来ていた。

そしてレイラが上の方に目をやると精霊の姿をしたウンディーネが上空にいた。

「初めまして、レイラ。私がウンディーネです。あなたに出会える日をずっと心待ちにしていましたよ。」

するとレイラはウンディーネの姿を見て怒りが込み上げてきたのか取り乱しながら言った。

「……おのれ……!そなた一体どういうつもりだ⁉︎わらわをこんな目に遭わせて一体何になるというのだ⁉︎」

レイラの怒りに満ちた様子を見てウンディーネは凄く悲しそうな表情をした。

ウンディーネの表情を見たレイラはまた試練を受けなければいけないかもしれないという恐怖を感じたのか、すぐに我に帰って取り繕った。

「……いや……あの……わらわが悪かった……。わらわがもっとちゃんとしていればこんなに長い事かからずに済んだと思うのだが……。」

するとウンディーネはニッコリ微笑んで優しくレイラに語りかけた。

「良いのですよ、レイラ。私に恐怖を感じないで下さい。あなたに必要なのは恐怖を感じる事ではなくて自分自身をちゃんと持つ事なのです。それを知る為の試練なのですから。ですから私には言いたい事を言ってもらって結構ですよ。」

するとレイラは恐る恐る顔を上げた後ウンディーネの方を見て確認した。

「……本当か……?本当なのだな?」

「ええ……私に恐怖を感じる必要はありません。恐怖だけを感じても何も意味はありませんから……。」

するとレイラは改めてウンディーネに何か言おうとしたが、やはり思い留まって止めた。

「……いや、やっぱり良い……止めておく……。」

「……そうですか……それもあなたの自由です。でもこれだけは忘れないで下さいね。この試練はあなたを成長させる為に必要だからあったのです。ですから間違った捉え方はしないで下さいね。」

「……ああ、そうか……。分かった。ではそう思う事にしようかの……。」

「……。」

レイラはしばらく黙ってしまったがウンディーネは何かを思い出したかのようにレイラに話しかけた。

「そうだ……レイラ、洞窟の外でお仲間が待っていますよ。行ってあげたらどうですか?」

「お仲間……?ああ……わらわの従者達の事かの?」

「ええ……その方達もいると思うんですが……どうやらあなたと同じ精霊の使い手達も来ているみたいです。行ってみたらどうですか?」

「精霊の使い手……?そうか……ノートが陸地で暴れ回っておるからわらわを探しに来たのじゃな……?しかし何故この場所が分かった?アコラを見つける事はほとんど不可能なはずじゃが……?」

「……それなんですが……私達精霊は離れていてもお互いの居場所が分かります。先程あなたが試練を受けている間に風の精霊が私の下に来ました。ですからその方達は精霊の使い手と思って間違い無さそうですよ。」

「そうか……ではその風の精霊の使い手とやらに会いに行くとするかの。……そなたはどうするんじゃ……?わらわと一緒に来るのか……?」

「……ええ、これからノートを封印するまでの間あなたと行動を共にする事になります。よろしくお願いしますね、レイラ。」

「……うむ……では洞窟の外に出るとしようかの……。」

「はい。」

レイラはついに水の精霊ウンディーネを仲間にした。

レイラは外で待っているレイド達に会う為にウンディーネを連れて洞窟の外へと向かった。


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