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レイド達がアコラの町に滞在して数日の時間が経ったがレイラが水の洞窟から出て来る気配は一向に無かった。
その事に痺れを切らしたレイドはシルフを見つける度に怒りながら詰め寄るようになっていた。
「おい!シルフ!まだなのか⁉︎大体2カ月以上も試練を受けている奴を待っているのがどうかしてたんだ!おい!本当にこのまま待っていて大丈夫なのか⁉︎何とか言えよ!」
するとシルフはエイルの後ろに隠れるように逃げた後レイドに言った。
「もう、うるさいなー……だったら1人で他の精霊の使い手達を見つけに行けば良いでしょ?」
「それが出来ないからお前に言ってんだろ……!おい!さっさとどうにかしやがれ!このまま待っていてもしょうがないだろ⁉︎」
「もうー、本当にうるさいな……分かったよ。じゃあちょっと待ってて。……ねぇエイル、君はどうした方が良いと思うの?」
「……私は別に……皆さんと一緒だったらそれで良いわ。」
「……そっか……君らしいね。分かった。じゃあ私がウンディーネにどうなってるか聞いて来るよ。それで良い?」
「……ああ、さっさとそうしろよ……俺達も行くぞ。洞窟の前で待ってるからな。」
「分かった、じゃあ皆んなで水の洞窟へ行こう。」
レイドの提案でエイル達は水の洞窟へと向かう事になった。
水の洞窟に着くとシルフが皆の前に飛んで来て言った。
「じゃあここで待ってて。中に入ってウンディーネに話を聞いて来るから。」
「ああ、頼んだぞ。」
シルフは水の洞窟の中へ入ると大きな声でウンディーネの事を呼び出した。
「ウンディーネー!どこにいるのー!いたら返事をしてー?」
シルフの声が聞こえたウンディーネはまたどこからかシルフに語りかけてきた。
「シルフですか……一体どうしたのですか?」
「うん、あのね……皆んなが遅いって言ってるんだ……まだ時間はかかりそうなの?」
「そうですか……すみません……。レイラがこの試練を乗り越えるまで私から助ける事は出来ないんです……私が言えるのは待っていてもらうしかないという事ですね……。」
「そっか……じゃあ私からそう言っておくよ。じゃあもう行くよ。」
「はい……分かりました。何度もごめんなさいね、シルフ。」
「うん、大丈夫。皆んな急いでいるみたいだから。でも大丈夫、ちゃんと言っておくから。」
「ええ、よろしくお願いします……。」
シルフはウンディーネから聞いた話をレイド達に伝えに行った。
(……私があなたに手を差し伸べれば私はあなたと会う事が出来なくなってしまうんです。お願い、レイラ……どうか自分の力でこの試練を乗り越えて下さい。)
ウンディーネはただただ祈りながらレイラの事を信じるしかなかった。
一方レイラはというと試練の為に用意された世界で相変わらず屋敷の中で暮らす日々が続いていた。
この試練の本当の目的とは何なのか?
それは普段から人々の尊敬を集めるレイラが人の目を気にする事無く自分の目的を達成を達成出来るかという事にあった。
この試練の目的は試練を受ける本人が最も苦手としている事を乗り越えられるかにあった。
普段人々から酷い扱い等受けた事が無いレイラがどんな酷い扱いを受けようとも自分を見失う事無く目的を達成出来るかという事にあった。
しかしレイラは周りの目を気にして外に出ようとはせず、水の洞窟を探す事も止めていた。
そんなレイラが周りを気にするのを止めて水の洞窟を発見した時水の試練は達成されるのであった。
その為にはレイラ自身が現在の状況に観念して、今置かれている状況を完全に受け入れる必要があった。
しかしレイラはその状況を受け入れるどころか日に日に良くない考えを持つようになっていた。
「何故じゃ?何故わらわばかりこんな目に遭っておるのじゃ……おのれウンディーネ……絶対に許さぬぞ。」
レイラはいつの間にか不平や不満ばかりを口にするようになっており問題を解決しようとはしていなかった。
ウンディーネはレイラの事を助けてあげたいがそれでは試練を乗り越えた事にならないので、ただ黙ってレイラの事をじっと見守っていた。
レイラは周りの目を気にするあまり、いつの間にか自分自身を1番傷付けているという事に気付いていなかった。
しかしレイラがそこから抜け出す為には最早周りを気にせずに自分の目的に集中する以外方法は無かった。
そしてレイラは屋敷の中で毎日過ごしているうちについに限界が来て言った。
「もうダメじゃ!もう耐え切れん!ええい!もう良いわ、あんな奴等!とにかくこの世界から脱出する事が先決じゃ!明日外に出て何か情報を聞き出さねばな……。気にする必要等無い、あんな奴等!さっさとこんな世界から抜け出しておさらばすれば良いだけじゃ!」
そしてレイラはついに外に出る為に水の洞窟の在り方を探す決意を固めた。
果たしてレイラは周りを気にせずに自分の目的を達成して目を覚ます事が出来るのだろうか?




