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次の日の朝、レイラはいつものように目を覚ますと朝食の準備を始めた。
「はあーぁ……さぁ朝食の準備をしようかの……。」
レイラが朝食の準備を始めると台所中にその音が響き渡った。
「トンットンットンッ!ジャッジャッ!」
レイラはいつものように朝食を作り終えると料理をテーブルに並べて朝食を食べ始めた。
朝食を食べている間もレイラはどこか上の空で集中して朝食を食べる事が出来なかった。
「はぁ……本当にいつもと変わらぬ世界じゃな……あの洞窟がなくなった事以外は変わった事があるようには思えんな……どれ、じゃあ今日はもう少し他の場所も調べてみるとするか……。」
レイラはあまり食欲は無かったが少し無理をして朝食を食べた後身支度を済ませて屋敷から外へと向かった。
レイラはアコラの町に着くといつもレイラの事を慕ってくる従者達の下へと向かった。
従者達はアコラにある大広間で訓練をしていたので向かってみると、そこにはいつもと変わらぬ従者達の姿があった。
その光景を目にしたレイラは安心したのかいつものように従者達に話しかけた。
「おい、お前達。何かいつもと変わった事は無かったかの?わらわにはどうにも気がかりな事があってな……お前達にも一緒に調べて欲しいんじゃが……。」
するとレイラの存在に気付いた従者達はいつもとは全く違うとても厳しい態度でレイラに言った。
「何だ、レイラか?何の用だ?俺達はお前なんかに用はないぞ。さっさと消えな!目障りだぞ!」
レイラはとても驚いた様子だったがその表情はみるみる険しくなり、怒りに満ちた様子で従者達に言った。
「……何じゃと……?そなた達自分が一体何を言っているのか分かっておるのか……?わらわを誰だと思っておる⁉︎無礼だぞ!慎まぬか!」
するとレイラが思ってもいなかった態度で従者達が返してきた。
「……何だと⁉︎おい!お前レイラのくせに何だその態度は⁉︎お前いつから俺達にそんな口が聞けるようになったんだ⁉︎ふざけた事を言ってるとただじゃ済まさないぞ!」
「……おい、レイラにこんな事を言われたら俺達はいい笑い者だぞ。このままこいつを帰していいのか?」
「……ああ、そうだな……良し、じゃあ1つこいつを懲らしめてやるとするか?」
「ああ、早くやっちまおうぜ。誰かに見られる前にとっとと済ませちまおう。」
従者達はとても苛立った表情でレイラの周りを取り囲み出した。
レイラはその光景を見て驚いて体がすくんで身動きを取る事が出来ず、ただただ慌てて辺りを見回していた。
「……何じゃ⁉︎一体何をするつもりじゃ⁉︎そなた達、自分が今一体何をしようとしているのか分かっておるのか⁉︎おい!止めぬか!下がれ!下がれと言うのが聞こえんのか⁉︎」
すると従者達は怒りを露わにしながらレイラに食ってかかった。
「何だと⁉︎レイラのくせに一体何だその態度は⁉︎おい!やれ!こいつは痛い目にあわなきゃ分からないみたいだぞ!」
「ああ、そうみたいだな。おい!さっさとやるぞ!」
従者達の1人がレイラの体を押さえつけると他の者達はレイラに殴る蹴るの暴行を加えた。
「ぎゃあ!止めぬか!何のつもりじゃ、一体⁉︎痛い!おい、止めろ。止めてくれー!」
レイラがどれ程叫ぼうとも従者達はレイラを殴る事を止めず、ただひたすらレイラの事を痛めつけた。
そしてしばらくすると気が済んだのか従者の1人が他の者達を手で静止した。
「ハァッ!ハァッ!……おい!もう良い、止めてやれ!これ以上やると不味い……おい、レイラ。これに懲りたらもう2度とあんなふざけた態度を取るなよ。次やったらこんなものじゃ済まさないからな。」
レイラはあまりにも酷く痛めつけられたショックで返事をする事が出来なかった。
「……おい、もう良い。行こう。こんな奴の相手をいつまでしていても仕方ない……さっさと訓練の続きをしようぜ。」
「ハァッ、ハァッ!……ああ、そうだな……もう良いやこんな奴……。良し、もう行こうぜ。こんな奴相手にしていても仕方ないしな。さっさと訓練の続きをしようぜ。」
「ああ……。」
従者達はレイラを殴り終えて気が済んだのかそのままどこかへと行ってしまった。
従者達が去った後もレイラは痛みで起き上がる事が出来ずにずっとその場所で倒れ込んでいた。
しばらく寝転んでいたが余程悔しかったのかレイラは突然声をあげて泣き出してしまった。
「うっ!うぐっ!何故じゃ⁉︎何故わらわだけこんな目に遭わぬといけぬのじゃ⁉︎許さぬ!絶対に許さぬ!」
従者達が去った後もレイラはずっとその場で泣き続けていた。
そしてしばらく時間が経つとレイラは起き上がり痛みを堪えながら自分の屋敷へと帰って行った。
レイラは屋敷に帰るとそれから自分が迷い込んだ世界の事を調べる事も無く、ただ何日も屋敷の中で呆然と過ごしていた。
レイラが従者達に襲われて1週間近い時間が過ぎようとしていたがレイラは屋敷の中から出てこようとはせず、自分を失ってしまったのか外の世界の事を調べる事もしなかった。




