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レイラが洞窟の中を奥まで進み続けると行き止まりにぶつかった。
「……何じゃこれは……?どうなっておるのじゃ……?」
洞窟の奥へはそれ以上進む事が出来ずにいたのでレイラはその場で立ち尽くすしかなかった。
しかしレイラはじっとしていても仕方ないと思ったのかその場から移動しようとした。
「……仕方ない……他の場所を探してみるとするかの……。」
レイラが最初に来た道を戻っていると道の横にある一面に広がる大きな湖が目に止まった。
「……待てよ……?水の洞窟というのだから水が関係しているのか……?……あの湖まで降りて行って確かめてみるか……?もしかしたら何かあるかもしれんな……。」
レイラは疑いつつも道の横にある崖から降りて行き湖に向かった。
レイラは湖の前まで降りて行ったが特別何か変わっているという事はなかった。
「……考えすぎか……しかしあの水の精霊というのは一体どこにおるのじゃ⁉︎わらわの事を呼んでおいて姿すら見せぬではないか⁉︎これではどうしようもないぞ!……このままここにおっても仕方ないな……一旦洞窟の外に出ようかの……。」
レイラが洞窟の外に出る為に崖に足をかけた瞬間突然突風のようなものが吹き荒れてレイラの事を襲った。
「!……何じゃ⁉︎一体どうなっておる⁉︎」
すると次の瞬間レイラは突風に流されて足を踏み外し湖の中へと転落した。
「……!うわぁ!何じゃ一体⁉︎一体どうなっておる⁉︎」
レイラは突然の突風で湖の中へと放り出された。
「……!まずい!早くここから出らねば……!……⁉︎ん……?」
レイラは慌てて湖の中から出ようとしたが湖の中では陸地と同じように呼吸が出来たので不思議と苦しさはなかった。
しかしレイラが湖の中を泳いで上に上がろうとしても外側から水圧がかかって跳ね返されて不思議と湖の中から出る事が出来なかった。
「……どうなっておるのじゃ一体……?何故外に出る事が出来ぬというのじゃ……?」
レイラは何度か湖の中から出ようとして脱出を試みたが何度も水圧に跳ね返されてしまい、しばらくすると外に出ようとするのを止めてその場で考え込んでしまった。
「……どうすれば良いというのじゃ……?外に出ようとしても跳ね返されてしまう……このままではずっとこの中に居続ける事になるのか……あー!どうすれば良いのじゃ⁉︎一体⁉︎」
するとどこからともなく水の精霊の声が聞こえてきた。
「レイラ、試練を乗り越えて下さい。あなたにはその資格があります。あなたならきっと出来るはずです。さぁ目を瞑って集中してみて下さい。」
レイラは水の精霊が何を言っているのか良く分からなかったが、この状況ではどうすれば良いか分からないのでとりあえず言う通り目を瞑った。
レイラが目を瞑ってしばらく経つと水の精霊が話しかけてきた。
「レイラ……もう良いですよ。目を開けて下さい。」
レイラが水の精霊に言われた通り目を開けてみると目の前にレイラが住んでいる屋敷の中のいつもの光景が広がっていた。
「……どういう事じゃ……?何故家の中におるというのじゃ……?……さっきまで湖の中におったよな……?一体どうなっておるのじゃ……?」
目の前の光景を疑わしく思ったレイラは机や椅子等目に付いた物に直接触れてみた。
しかしレイラが触れた物は確かにいつもと同じように感触があり、レイラは目の前で起こった出来事が信じられずただただ呆然としていた。
レイラはしばらくの間呆然として動けなかったが、我に帰ったのか突然部屋の辺りを見回しながら叫び出した。
「……おい!水の精霊!そなたであろう!わらわをここに連れて来たのは⁉︎一体どうなっておるのじゃ⁉︎きちんと説明してくれぬと分からぬではないか⁉︎」
レイラは部屋の中を歩き回りながら叫び続けたが水の精霊からの返事はなかった。
「……どうしたというのじゃ一体……?何故返事をしてこん……?」
レイラは水の精霊を見つける為に部屋の中を探してみたが水の精霊の姿はどこにもなかった。
このままじっとしていても仕方ないのでレイラはとりあえず屋敷の中を探してみたがどこにもいなかったので水の洞窟へと向かう事にした。
「またあそこに行かねばならぬというのか……今度中に入ったらもう出てこれんかもしれんな……中に入るのであれば慎重に考えんといけんな……。」
レイラは足取りが重そうに水の洞窟へと向かった。
しかしレイラが水の洞窟に到着すると驚くべき光景が待っていた。
それは先程まであったはずの水の洞窟がなくなっていたのだ。
「!……どういう事じゃ……?先程まであそこには洞窟があったはず……あの洞窟が無くなっているという事はわらわはもうこの場所から出られぬという事か……?」
レイラはしばらくの間洞窟があったはずの場所の前で立ち止まっていたが突然その場で暴れ出した。
「……あーもう!一体どうなっておる⁉︎おい!水の精霊!どこかで見ているのであろう⁉︎だったら返事の1つでもしてくれて良いではないか⁉︎このままではどうしようもないぞ!」
しかしレイラがどれ程大きな声で叫ぼうとも水の精霊から返事が返ってくる事はなかった。
レイラはしばらくの間叫び続けていたが疲れたのか叫ぶのを止めて黙ってしまった。
そしてレイラは我に帰ったのか屋敷がある方向に向かって歩き出した。
「……あー、考え込んでも仕方ないの。とりあえず家に帰って休む事にするか……詳しい事はまた明日になってから考えるとするかの……。」
レイラは水の洞窟を後にしてそのまま屋敷へと向かってしまった。
そして屋敷に着くとレイラはいつものように食事と入浴を済ませてさっさとベッドの中へ入り込むと眠りに就いてしまった。




