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ここは海上都市アコラ。

陸地から遠く離れた海の上に巨大な都市が浮かんでいてほとんどの人々からその存在を知られてはいなかった。

アコラには水の守り人と呼ばれる人々が集まって生活しており、水の精霊の使い手と呼ばれる者が代々一族を支配していた。

この時代の精霊の使い手はレイラという美しい姿をした女性でアコラに住む人々全員から尊敬を集める存在だった。

この話はレイド達がアコラに向かう少し前の出来事である。

屋敷の中でレイラがくつろいでいるとレイラの従者の1人が慌ててレイラの部屋の中に入って来た。

「ハアッ!ハアッ!レイラ様!大変です!大陸でノートが復活したと大騒ぎになっております!どうか早く試練を受けられる準備をなさって下さい!」

レイラは驚いた表情を見せたが座っていた椅子から腰を上げると1つ深い息を吐いた。

「……はー……ついにこの時が来たのか……。よもやわらわの代でこの時が来るとは考えてもおらぬかったがこれも神のお導きという事なのか……。分かった!そなた達も準備を整えよ!水の洞窟に向かうぞ!」

「はっ!ただちに他の者にも準備させます!レイラ様も身支度を整えられ次第正門の前までお越し下さい!我々も準備を整え次第早急に向かいます!では私も準備がありますので、正門の前でお待ちしております!」

「うむ!急ぐのじゃ!ボサッとしている暇はないぞ!」

「ははっ!」

レイラは自分の部屋に戻ると簡単な荷造りを済ませた後正門へと向かった。

レイラが正門に着くとレイラの従者達がすでに正門の前で待ち構えていた。

「レイラ様!我々の準備は整っております!いつでも出発出来ますぞ!レイラ様は準備はよろしいですか⁉︎」

「うむ、わらわは問題無い。では参るぞ。早く試練を終わらせて人々をノートの悪夢から救うのじゃ!」

「ははっ!」

レイラは従者達を引き連れて水の洞窟へと向かった。

水の洞窟に着くとレイラが立ち止まった後従者の方を振り向いた。

「そなた達はここで待っていろ。ここから先はわらわの仕事だ。良いか?わらわが戻って来るまでこの中には誰も入れぬようにな……。」

「ははっ!かしこまりました!レイラ様もどうかお気をつけて……。」

「うむ……では行って参るぞ……。」

レイラは従者達と目があったからなのか勢い良く水の洞窟の中へと足を踏み入れて行った。

しかし従者達の姿が見えなくなった頃レイラは突然怯え出しその場に座り込んでしまった。

「……何故じゃ……何故よりにもよってわらわの代でこのような事が起きる?何故わらわがそのような化物と戦わねばならぬのだ……?……放っておけば良いではないかそんなもの……!わらわが戦わずに済む良い方法は何かないものか……?」

するとレイラはしばらくの間洞窟に座り込んで独り言を言い出すと立ち上がろうとはしなかった。

「……何故わらわが人助けなどせねばならぬのだ……いつもは自分勝手な事ばかりしている人間達を助けてやる必要など本当にあるのか……?そんな奴等の為にわらに化物と命懸けで戦えというのか?もしもの事があったら一体どうするというのだ……?ああ、神よ。何故あなたは私にこんな過酷な運命を与えられるのですか?私はあなたの教えをずっと守ってきたつもりですのに。わらわがそんなに憎いですか?神よ。」

すると洞窟の奥からレイラに話しかけてくる者がいた。

「レイラ……早く私の下へと来て下さい。私はこの場所でずっとあなたの事を待っていました。そんな所でじっとしていてはいけません。あなたにとって大事な使命がこれから待ち受けています。あなたはその使命を与えられた人なのですから。今もあなたの事を待っている人が大勢います。さぁ早く私の下へ来て下さい。一緒にノートから苦しめられている多くの人々を救いましょう。」

洞窟の奥から声が聞こえてきて、レイラは驚き声が聞こえてきた方を見た。

しかししばらくして声の主が水の精霊だという事に気付いたのか怒りが込み上げてきた様子で声が聞こえてきた方向を睨み付けながら言った。

「……誰じゃそなた?一体何の権利があってわらわにそんな事を言っておる?戦わねばならぬのはわらわなのじゃぞ……それを……それを使命の一言だけで片ずけようと申すのか⁉︎だったら他の者に頼めば良いではないか⁉︎わらわがそんな化物と戦わねばならぬという理由にはならぬ!それを……一体わらわの事を何だと思っておるのじゃ⁉︎」

「……。」

レイラは文句を言った後、水の精霊の言う事を聞こうとはせずにその場から一歩も動こうとはしなかった。

水の精霊はレイラに何か言うような事はせずにレイラが自分から動き出すのをただじっと待っていた。

しばらくするとレイラが水の精霊がいる方向を向いて何か話しかけ出した。

「……もし……もしもじゃ、わらわがそのノートとやらを倒したらどうなる?わらわに何か良い事があるとでも言うのか?……ただ何もないのに人助け等する気等起きん……もしも……仮にじゃ、わらわに何か良い事が起きるとでも言うのならまぁ考えても良いのだがな……。」

レイラの言葉を聞いた水の精霊は洞窟の奥でニッコリ微笑んだ後、優しい口調でレイラに語りかけた。

「あなたの使命は多くの人々を救うものです。あなたがその使命を果たして人々を救う事が出来ればあなたにはそれに見合った物がちゃんと手に入るでしょう。心配しないで下さい、レイラ。きっとあなたの思い描いている通りになります。だからあなたは余計な心配はせずに早く人々を助ける為に動き出して下さい。」

「……信じて良いのじゃな?わらわはそなたの言った事を信じてノートとやらを倒しに行くのだぞ。……それはそなたの言った事を信じたからじゃ。信じて良いな……?」

「ええ、大丈夫です。レイラ、私は洞窟の奥で待っています。精霊の使い手が精霊を手に入れる為には決められた試練を乗り越えなければなりません……あなたが私の下に来てくれる事を心待ちにしていますよ。」

レイラへの話を終えると水の精霊の声は洞窟から聞こえなくなった。

レイラは水の精霊との話を終えると納得したのかその場から立ち上がって洞窟の奥へと向かって歩いて行った。

「……仕方ない……行くとするかの。」

果たして精霊を手に入れる為の試練とは一体どんなものなのか?

そしてレイラはその試練を乗り越えて水の精霊と無事出会う事が出来るのだろうか?


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