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レイド達はミッドガルドの近くの駅からマナサ高原の近くにある駅へと向けて出発した。
時代の流れとは驚くべきものでレイドが150年前にビブレストに向かった時は線路の上を走るのは蒸気機関車だったのが、現代では弾丸列車へと進化していた。
レイド達が弾丸列車へ乗り込むと汽車とは比べ物にならないスピードで列車は進んだ。
かつてレイドが150年前に乗った汽車の何倍もありそうなスピードで列車は目的地へと向かっていた。
そして列車はあっという間にマナサ高原の近くの駅へと到着した。
(昔はもっと時間がかかったんだけどな……時代の流れってのは恐ろしいものだな……。)
レイドは列車から降りている途中かつてビブレストに向かった事を思い出しながら感慨に浸っていた。
列車から降りて駅を出るとそこには昔の景色と変わらない雪景色が一面に広がっていた。
(ここから先は何も変わってないのか……?って事はまたあの山を登らないといけないのか……?おいおい、勘弁してくれよ……。)
レイドは沈み込みそうな気持ちを切り替えながみ皆の方を見て言った。
「さぁ、ここから先は随分長い時間歩くぞ!覚悟しといてくれよ!それが済んだらビブレストはすぐそこだ!」
レイドのその言葉を聞いてマリーが周りを見渡した後恐る恐る尋ねた。
「……本当に何日もかけて歩くのね……私がいて邪魔にならないかしら……?」
「嫌だったらそこの駅で待ってろよ。お前がいたってあまり変わらないからな。別にそこで待ってたって良いんだぞ?」
「……いいえ!私も行くわ!こんな大事な時にこんな所でじっとしてられないもの!それにエイルに何かあった時は私が助けてあげなきゃいけないもの。」
するとエイルが突然マリーの上着の袖を掴むと首をよこに振りながら言った。
「私は大丈夫です。院長様はここで待っていて下さい。必ずここに戻って来ますから。」
「ダメよエイル!もし何かあったらどうするの⁉︎あなただけじゃどうする事も出来ないでしょ⁉︎私の心配はしなくて良いからあなたは黙って私の言う事を聞いていなさい!」
「……でも……。」
すると思うところがあったのかゼックスがマリーに言った。
「その娘の言う通りだよ。あんたが来ても足手まといにしかならない。大人しくそこの駅で待っていたらどうだ?」
「あら……あなたがそんな事言っても何の説得力も無いわね。私はあなたが1番危険だと思っているんだけど?」
「はっ……そうかよ。じゃあ勝手にしな。」
辺りに険悪なムードが漂っていると見かねたレイドがマリーに言った。
「ゼックスの言う通りだよ、マリー。この先の山道を登りきるのは本当に大変なんだぜ。それに仮にその娘が歩けなくなっても俺達のどちらかが担いで歩けば良い。でもそうなるんだったら2人よりも1人の方が良いだろ?お前には悪いと思うけどお前がいたら邪魔にしかならない。俺もお前はそこの駅で待っていてくれた方が良いと思ってる。」
「……でも……それじゃあエイルはどうなるの⁉︎あなた達2人に任せておけとでも言うの⁉︎」
「……お前も分かるだろ?仮にお前が付いて来たって俺達には敵わないさ。それに……ノートを倒す為にはこの娘が必要なんだ。なに、俺が絶対この娘は守り通してやる。お前は心配しなくて良いからそこの駅で休んでな。」
「……あいにくだけど私はあなた達の事を完全に信用してないの……いざとなったら私の命に代えてでもエイルを守るつもりでいるわ。悪いけどあなた達の言う事を聞く事は出来ないわね。」
「そうかよ……じゃあ俺はどうなっても知らないからな。勝手にしろよ。」
するとエイルが院長の服を掴むとまた首を横に振りながら言った。
「院長様……私の事は大丈夫です。心配しないで下さい。……それに……この人達はそんなに悪い人達じゃないような気がするんです。だから院長様は私の事は気にせずこの場所で待っていて下さい。」
「あなたは気にしなくて良いから大人しくしてなさい。今は私の言う事を聞いていれば良いの。」
「……でも……。」
「良いから……!お願いだから私の言う事を聞いて!」
「……はい、分かりました……。」
マリーにそう言われるとエイルは黙り込んでしまった。
状況を見かねたレイドが皆の方を見て言った。
「良し……じゃあ行くか?ここでじっとしていても仕方ないしな。この先の山を登ればビブレストはすぐそこだ。」
レイドが歩き出すと他の者達もレイドに続いてマナサ高原へと向けて歩き出した。
レイド達はマナサ高原の入口に辿り着くと長い長い山道を登りきる為の一歩目を踏み出した。




