20
エイル達が待っている酒場に向かっている途中、恐る恐るマリーがレイドに聞いた。
「……ねぇ、あなたはどうして私を助けに来たの……?あなたにとって私はどうでも良いはずだと思うんだけど……?」
「ん、ああ。エイルって娘に頼まれたんだ。俺にはあの娘が必要だからな。だからお前を助けただけだ。」
「……そう……エイルが……あなたがエイルを必要としている理由は何なの?あなたがどんな理由でエイルを必要としているかは分からないけど私はあなたにエイルを渡す事は出来ないわ。もしあなたがエイルを奪う気だと言うのなら私は止めなくちゃいけない。」
「参ったな……お前に手をかけたらあの娘が協力してくれなくなるかもしれない……仕方ない。お前にはちゃんと説明しておいた方が良さそうだな。あのエイルって娘にはさっき話したんだが俺はノートの力を手に入れた人間なんだ。」
「……ノートの力を手に入れた⁉︎」
「ああ……200年前位になるな。俺はノートの力を手に入れようと思ってノートを奪いに行ったんだ。だがどういう訳かノートに触れた瞬間気絶しちまった。ノートに触れた奴は皆怪物の姿に変わるらしいんだが何故だか俺だけこのままでな……まぁおかげでずっとこの姿で生きるはめになっちまったんだがな……。」
「……そうなの……それは大変だったでしょうね……。」
「ああ……だから俺はノートを破壊しようと思っているんだ。あいつが生きていると俺はずっとこの姿のまま生きていかないといけないみたいなんでな。いい加減こうやって生きていくのにも疲れちまったしな。元に戻る方法を他にも色々探してみたけどどうやらノートを破壊する以外方法が無いみたいなんだ。あの娘には関係無いかもしれないが悪いがあの娘をもらっていくぞ。」
「……そんな理由があったの……私達も目的はあなたと一緒よ。ノートを破壊しなきゃいけないと思っているわ。……私もあなたと一緒に行動させてもらえないかしら?何か役に立てるかもしれない。……それにあなたみたいな頼もしい仲間が加わってくれたら本当に心強いわ。あなたと一緒ならノートを本当に倒せるかもしれない。あなたと一緒に行動させてもらえないかしら?」
「ああ……そうか。じゃあよろしく頼むよ。」
「良かった!ありがとう!じゃあお互い協力して頑張りましょうね!」
「ああ、そうだな。」
レイドとマリーが酒場に着いたので中に入るとエイルとゼックスが離れて座っていた。
2人とも気まずかったのか黙っていたので酒場の中は静まり返っていた。
するとエイルがレイド達に気付いて入口の方に駆け寄って来た。
「院長様!ご無事だったんですね⁉︎良かった!」
エイルは涙ぐみながら嬉しそうにマリーの近くに寄って来た。
マリーはエイルが無事だったので安心したのか1つため息を吐いた後、エイルをなだめる為に優しい口調で話し始めた。
「ええ、心配かけてごめんなさいねエイル。私の方は大丈夫だったわ。あなたは?何か危ない目には合わなかった?」
「いえ………私は大丈夫です。それより院長様がご無事で本当に良かったです……。」
「そう……ありがとう。私もあなたが無事でホッとしているわ。」
「院長様……。」
エイルは安心したのかマリーが来た途端泣き出してしまったが、しばらくするとレイドが話をする為にゼックスの方に近付いて行った。
「ゼックス、あの女には俺の事情は説明しといたぞ。手伝ってくれるって言ってるぞ。さぁビブレストに向かうぞ。」
「……そうか!分かった……いよいよだな……その場所にはお前さえ辿り着く事が難しかったのだろう?相当な危険が伴うんだろうな……心してかからねばな。」
「ああ、そうだな。……ようやくビブレストに入る為の鍵を手に入れたんだ。さっさと準備して出発しようぜ。」
レイドとゼックスは話を終えるとゆっくりとエイル達がいる入口の方に向かって歩き出した。
「……マリーとか言ったな。お前に1つ聞きたいんだがビブレストっていう場所の事は知ってるか?」
その言葉を聞いたマリーは一瞬驚いた顔をしたが、気を取り直した後軽く頷いてレイドの質問に答え出した。
「……ええ、名前位なら聞いた事があるわ。詳しい事は知らないけど言い伝えで聞いた事位ならね。私達の目的もそこに行く事なの。もしかしてあなた達もなの?」
「ああ……どうやら考えている事は同じみたいだな。俺は1度ビブレストの近くまで行った事があるんだ。まぁ随分昔の話になるがその時はビブレストに辿り着く事は出来なかったよ。」
「そうなの⁉︎それでその時は一体どんな事があったの?詳しい話を聞かせてもらえないかしら?」
「ああ、そうだな……じゃあ少し昔話をしないといけないな……。」
レイドはこれから一緒に行動を供にするエイル達にビブレストに行った時の話をし出した。
深刻そうな表情で話すレイドの身に果たして昔一体何があったというのだろうか?




