16
次の日エイルとマリーが客間でくつろいでいると客間のドアをノックする音が聞こえた。
「コンッ!コンッ!」
「ジェダ様の使いの者だ。マリーとか言ったな?ジェダ様がお待ちだ。お前1人で来い。」
「……ええ、分かったわ。今行くからちょっと待ってて。」
マリーは立ち上がりエイルの前に行き、エイルの前に立つと肩に優しく手を置いて言った。
「大丈夫……あなたは何も心配しなくて良いから。ここで待っていなさい。すぐに戻って来るから。」
「はい、分かりました……。」
エイルと話を終えるとマリーはドアを開けて部屋から出た。
ジェダの使いの案内でジェダが待っている部屋に行くと、ジェダがソファーに座ってマリーの事を待っていた。
「……来たか、マリー。こちらへ来て座りなさい。」
「……はい。」
ジェダはマリーが座った後もしばらく黙っていたが少し経って口を開き始めた。
「……本当に久しぶりだな、マリー。もう30年近くになるのか、お前がこの町を出て行ってから……。あの時は突然お前がいなくなったから皆驚いたものだったな……。」
「……。」
マリーが返事を出来ずに黙っているとそれを察したジェダが話を続けた。
「……お前から連絡があった時は本当に驚いたぞ……もうお前とは会う事は無いと思っていたからな。お前は
我々の掟に背いてた出て行ったのだからそれで連絡してきたという事は余程切羽詰まった状況なのだろうな?」
「……はい……私にはジェダ様以外頼れる方がいませんでした。……ジェダ様、私はあの時受けなかった罰を……どんな罰でも受けます!ですからエイルは……エイルだけは助けて頂けないでしょうか……?」
「……。」
ジェダはマリーの問いかけにすぐには答えずしばらく黙っていた。
そしてジェダは随分時間が経ってようやく口を開いた。
「……マリーよ……私もあれから随分時間をかけて色々と考えたがお前の願いを聞き入れるのは難しいのだ……。お前も知っていると思うがこの町の人々は上の町の人間を憎んでいる。……例えそれがこの世界の終わりを意味するような事が起こったとしても決して納得する事は無いだろう……。私も本来ならお前の頼みを聞き入れてやらねばならんと思うのだが私はこの町の主なのだ。例え世界にとってそれが大事だったとしても私にとって重要なのはこの町の人々の意思なのだ。すまんな……お前も願いを聞き入れる事は私には出来そうにもない……。」
「そんな……それでは私達の世界はこれで終わるのですか……?今エイルを外に出して殺されでもしたらそれこそノートの思い通りになってしまいます……それにノートもいずれはこの町の存在に気付いて門を破って襲って来るかもしれません……そうなればこの町の人々も一緒に滅ぼされるのではないのてすか……?」
「……そうかもしれんな……だがそうなれば我々は神が望んだ運命だと思おう。もとより我々にとって命等容易いもの……この町に生まれた人々は皆生まれながらにそれ位の覚悟は出来ておる。外部の人間から受けた憎しみに比べれば死など本当に容易い事……その憎しみを晴らしてくれるのがノートという存在なら……我々は喜んでそいつに従おうではないか!」
「……‼︎まさか……⁉︎」
ジェダの言葉を聞いたマリーは嫌な予感がしたので急いでその場から立ち上がるとエイルがいる部屋へと向かった。
マリーが部屋についてドアを開けると部屋の中にエイルの姿はなく、マリーはショックでその場に座り込んでしまった。
「……そんな……まさかこんな事になるなんて……。」
マリーはショックでしばらく呆然としていたが、しばらくすると我に帰ったのか突然立ち上がった。
(……いけない……!今探しに行けばまだ間に合うかもしれない……!落ち込んでてもしょうがないわ……探すだけ探してみよう……!)
マリーはエイルがまだ近くのどこかにいると信じてその場から走り出した。
エイルを見つける為にマリーは建物の中をしらみつぶしに探したが建物の中にエイルの姿は無かった。
マリーは慌てて建物の中から出て外を見渡してみたがエイルの姿はどこにも無かった。
「……ボーッとしている場合じゃない……急いでエイルを探さなきゃ!無事でいて、エイル!」
マリーはその場から走り出して町の中にエイルを探しに行った。
マリーは町の至る所を駆け回ってエイルの事を探し回ったがエイルの姿はどこにも見当たらなかった。




