15
「おい、立てるか?ジェダ様の所まで案内する。付いて来てくれ。」
レイドがそう言うとエイルとマリーは怯えながらも仕方なくその場から立ち上がった。
そしてレイドが門をくぐるとその後を付いて行き、下の町へと繋がる門をくぐった。
エイル達が門をくぐったのを確認するとレイドは門を閉じた後鍵をかけた。
「……あなた一体何者なの……?」
「ああ、俺か?俺はレイド。ジェダ様に雇われている……まぁ傭兵みたいなもんだ。」
「……そう、ジェダ様の……。」
「ああ、あんたの事はジェダ様からさっき聞いたよ。安心しな。ちゃんとジェダ様の所まで送り届けてやるからよ。」
レイドに案内されてエイルとマリーはジェダがいる場所まで向かっていた。
ミッドガルドの下の町はほとんど文化が発達しておらず、どの建物を見ても随分古びた感じだった。
整備されてない荒れた道を歩いていると町のあちらこちらに大人や子供が座っていた。
彼等の中には敷物の上に商品を置いて路上で販売している者もいた。
下の町を歩いてしばらく経った頃、町の奥にある古びた建物の前でレイドが立ち止まった。
「ここだ。この中でジェダ様がお前達の事を待っている。さぁ入ってくれ。」
レイドが中に入るとエイル達もレイドの後を付いて行き古びた建物の中に入って行った。
レイドは建物の中に入ると階段を上って2階に進み、2階の奥の部屋まで行くとそこで立ち止まった。
「ここだ。この中でジェダ様がお前達の事を待っている。さぁ入ってくれ。」
レイドはそう言うと部屋のドアをノックした。
「ジェダ様、レイドです。客人をお連れしました。」
「……入りなさい。」
ジェダの声が聞こえたレイドは静かにその部屋のドアを開けた。
「……入ってくれ。」
レイドにそう言われるとエイル達は部屋の中へと入って行った。
すると部屋の中で年老いた老人が机に肘をつきながら椅子に座って待っていた。
「……久しぶりだな、マリー。いつ以来だ?元気にしていたか?」
「……はい……お久しぶりです、ジェダ様。」
マリーがジェダの事を知っているような感じだった事にエイルは驚いていて、エイルはマリーの方をじっと見つめていた。
「……その子か?例の精霊の使い手というのは……。」
「……はい。今ノートは彼女を狙ってこのミッドガルドに来ていると思われます。お願いします、ジェダ様。私達を当分ここでかくまって頂けませんか?今上の町は怪物達で溢れ返っています。今エイルが殺されでもしたら世界は本当に助からなくなってしまいます。お願いします、ジェダ様!私達を助けて下さい!」
「……。」
ジェダは返事をせずにしばらく黙っていたが、1つ息を吐くとレイドの方を見て言った。
「……レイド、この2人を客間に案内して差し上げなさい。大事な客人だ。私は1人になってこれからの事を少し考えたい。」
「……分かりました、それでは2人を客間にお連れ致します。」
レイドはエイル達の方を見た後何も言わずにドアを開けて部屋から出るように促した。
するとマリーは部屋からは出ずにすがるような態度でジェダに再び懇願した。
「……お願いします、ジェダ様!この娘を失えば本当に世界は終わってしまうんです!ジェダ様以外に頼れる方は私達にはいません!だから!……お願いします……私達をここでかくまって頂けないでしょうか……?」
「……マリー、少し考える時間をくれないか?我々にも色々と事情があるのでな。今日は疲れただろうから少し休みなさい。何、怪物達もここまでは入っては来れんさ。安心して休むと良い。」
「……はい、分かりました。」
マリーは部屋を出る前にジェダの方を見て1度頭を下げた後エイルを連れて部屋から出た。
部屋から出るとレイドが客間に向かって歩き出したのでエイルとマリーもその後を付いて行った。
部屋に向かっている途中レイドが後ろを振り返らずに何気なくマリー達に話しかけてきた。
「……勝手だな、お前達。普段はこの場所の人間の事なんて気にかけないくせに困ったら一緒に戦おうってか?まぁ俺には関係無いけどな。」
「……でも……あなたもこの町以外が無くなったら困るでしょう?このままだったら上に上った時怪物だらけになるのよ?それでも良いの……?」
「はっ……俺には関係無いね。まぁそうなったらそうなったで面白そうだけどな。」
そう言うとレイドは話すのを止めて客間に着くまで黙って歩いて行った。
客間の前に辿り着くとレイドは立ち止まった後マリー達の方を振り返って言った。
「……ここだ。後はお前達で勝手にやれよ。ちゃんと案内したぜ。じゃあ俺はもう行くからよ。」
「……ええ、ありがとう。」
「……。」
マリーはお礼を言ったがレイドは返事をする事無くその場から立ち去ってしまった。
レイドがいなくなるのを見届けるとマリーはエイルの方は見て言った。
「さあ、エイル。中に入りましょう。……大丈夫よ、私がジェダ様と話をしてきっと何とかする。あなたは何も心配する事なんて無いわ。」
「……はい、ありがとうございます。院長様。」
話を終えたマリー達は客間のドアを開けて部屋の中へと入って行った。
マリーとエイルはジェダとの話を終えるまで部屋の中で大人しく過ごす事にした。
ジェダと話を終えるまではこれから先の事を考えると不安だったが、マリーは自分の使命の為にエイルを必ず守り通さなければならないと胸に誓っていた。




