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ゆーくん、また新しい人に会います

 さて、ここで皆さんに一つ問いたい。


 あなたは、握手した時に手を離さずにがっしり握りしめてメキメキさせる側の人間だろうか?


 …………俺の目の前には一人、そのタイプの人間がいます。

 ちなみに俺はそういう人が割りと苦手です。



「あ、あのー、スッゲェ痛いんっすけど……」


 顔をしかめながら言う俺。


「アハハ? 何のことかな? そんなことより、私の可愛い愛娘のことを話していなかったかい?」


 笑顔のまま更に力をこめるラスクさん。


「え、えーっと、は、話して…………ちょっ! は、離して! マジで! ラスクさん、俺の、俺の手のひらが! 手のひらぐわぁ! ゆ、指が、俺の指が手の甲側に曲がっていくゥ!」


 ただ強く握るだけではなくグニグニしたりして痛みを変えてきやがる!

 骨がメキメキ言ってるよぉ!?


「フフフ、そんなことはどうでもいいから早く」


 そ、そんなこと!?

 俺の利き手の骨がアート化しそうなのに、そんなこと!?


 というか痛みで喋れねぇ!

 口からは「痛い」以外の言葉が出てこない。


 俺はせめてもの抵抗と可能な限り強く握り返してみる。

 ラスクさんの手は、指などは細くて綺麗だがゴツゴツしている。優男とした風体だが、確かに男だ。男の手だ。

 こんなことで再認識したくなかったけど!


「む? …………ふむ。中々やるね。これは鍛えたらいいとこいくんじゃない?」


 どうでもいい!!

 離して! 可能な限り早急に! かつ最大限優しく!


「良いだろう。君が言う気がないのならとことん付き合おう。これでもユーヤ様から狩り班の実質トップを任されている身だ。負けないよ」


 やめてーー!!




「あんた何してんの!!」


 突然現れた女性がラスクさんにがげんこつを落とした。


「ゴフッ!?」


 げんこつの勢いでそのまま地面に少し埋まるラスクさん。

 …………マジかよ?

 地面に埋まるとか漫画やん。


 ちなみに、殴られた衝撃でラスクさんは俺の手を離したから俺まで巻き添えに、とはならなかった。

 


「あなた、大丈夫かしら?」


 そう言って俺を見るのは犬耳の女性。三十代後半だろうか?

 ラスクさんと同じくらい。

 と言っても、この世界の人達の見た目と年齢は信用ならないけど。

 

 なーんか、どこかで見たことがある気がする。


「あ、はい、だいじょばないです」


 だいじょばない。これは俺の口癖でもある。大丈夫ではないの意味。

 マイナスな意味だけどさ、普通に言うよりは面白味があるでしょ?


 

「そうかい。そんなこと言えんならきっと大丈夫だね」


 にっこりと笑う女の人。

 …………いや、割りと本気で手が痛い。これがステータスの差だとでも言うのか!


 …………あっ! この人! 見覚えがあると思ったら、サシャだ!

 どこかサシャと似てる。きっとお母さんだろう。


 この人はワイルドというか、豪快というか、そんな感じ。そしてサシャは小動物っぽいっていう違いはあるけど。

 雰囲気と顔の造形が。


「あんた! いつまで寝てんの! さっさと起きなよ!」


 ゲシゲシとラスクさんを蹴りだした。

 えー……


「……あ、ああ。すまない」


 起きんのかい!

 しかもあんだけのことされといて大したダメージも無さそう。


「うちの馬鹿亭主が失礼したね。親バカなのさ。

 私はナタリー。サシャの母親で、これの妻でもある。あなたの話は聞いてるよ。ヨロシクね」


 そう言って握手を求めてくるナタリーさん。

 俺は思わず握手というトラウマ(さっき出来たばっか)を思いだし、ビクッとなってしまった。


「! あんた! この子、あんたのせいで怖がってんじゃないか!」


 ローキックをかまし始めた。

 バスン! バスン! ってサンドバッグ蹴るようないい音が。


「ははは。妻からの愛が重いね」


 甘んじて受けているラスクさん。やはりダメージは薄そうだ。

 蹴られてもよろめいたりしていない。


「そういえば昨日サシャが、世話する人が増えたと言っていたな。君だった……ヘブゥ!?」


 あ、話してる途中で腹にかなり重い一撃が入って吹っ飛んでった。

 スゲー。木を二、三本へし折ってやっと止まった。


「旦那が怖い思いさせてすまないね。ちゃんと後で絞めとくから」


 いや、むしろ貴女の方が怖いです。



「カハッ! ……いやー、ナイスな蹴りだったよ、ナタリー。今日も魔物を沢山狩れそうだね」


 そして何事もないように戻ってくるラスクさんもやっぱり怖いです。

 口から血を垂らしながら笑顔キープなんだもんなー。



 そんなわけでその後は取りあえず自己紹介をした。

 サシャとはメイドとして世話をしてもらっていること、とても良い友達だと思っていること、ちゃんと話した。



 

「なんだ、早くそう言っておくれよ。僕の愛する娘を唆す害虫かと思ったじゃないか」


 いや、言おうと思ったけど言えなかったんだよ。十割あなたのせいで。

 しかも害虫って。


「だから言ったろ? あんたはサシャのことになると突っ走りすぎだって」


 そうなだめるナタリーさん。

 

 俺はもう学んだよ。ナタリーさんにはさからっちゃいけないってね。


「今日から暫くは、あたしと旦那があなたの指導役をすることになってる。内容は主に森の魔物と戦わせるつもり。

 狩りをするったって、一人でそこそこ戦える位は戦闘力が欲しいからね」


 ナタリーさんが本題に入る。


「それで、あんた、ステータスはどんな感じなんだい? ああ、具体的には言わなくて良いよ。大切な情報だからね。何が得意とか、そんなことでいいんだ」


 ナタリーさんが尋ねてくる。

 もう一度自分でもステータスを確認しておこう。





ユークン 種族  人族

性別  男


レベル 1

HP    1000/1000

MP    1000/1000



・パワー    500

・スピード   500

・ディフェンス 500

・マジック   500

・マインド   10

・ラック    10



ユニークスキル

・異世界人セット




「異世界人セット」


 世界を渡った異世界人がたまーに持つことがあるセット。

 言語に不自由しない。

 鑑定スキルを内包。

 異次元収納を内包。

 全体的に何にでも適性を小アップ

 身体能力を元の世界よりもアップ。不調を治す。

 また、このスキルは鑑定されても表示されない。






 んー、何が出来るんだろう?



「…………荷物持ち?」


 ズッコケるラスクさんにナタリーさん。


「「狩りをしにきたんだろ(でしょ)!?」」 


 おお、流石夫婦。息ぴったり。って、言ってる場合じゃないか。


「いやでも、なんというか、器用貧乏?」


 うん。そんな感じ。何かに特化しているって感じはない。


「…………それじゃあ、何をしたいとかはあるかい?」


 ラスクさんが若干呆れながらも聞いてくる。


「んー………………あっ! やっぱさ、魔法剣士とか憧れるよね!」


 異世界と言えばね!


「ふむ。魔法剣士か……。ちなみに、魔法と剣、どっちを主体にするんだい?」


 へ? どっちを主体? 


 ん~、つまりは、剣の合間に魔法を使うか、魔法の合間に剣を使うかってことだよね。


 ならば!


「どちらでもない、でおねがいします」


 俺は満面の笑みで、そう言ってみた。



ブクマ、評価、よろしくお願いします!

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