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ゆーくん、メイドと仲良くなる

「―――い」


 何だろうか? 声?


「―――――ください!」


 うるさいなぁ。静かにしようよ。こんな朝っぱらから、ご近所迷惑ですよ?


「起きてください!」


 布団をひっぺがされる。

 俺の真っ白な肌が外気にさらされてしまう。


「や、やめろぉ……そんなことをしたら、滅亡するぞ……!」


「何が!?」


 愛しの恋人(布団)と離された悲劇の主人公な俺は思わず呟く。


「ちょっ!? 布団が無いのにまだ寝るんですか!?」


「むー…………あと、半年……」


「冬眠する気ですっ!?」


 いや、まじで。半年は寝ていたい。妥協して半年だ。本当は一生の大半を寝ていたい……

 睡眠、それは至福である。

 俺はこの町製のパジャマに身を包んでいる我が身を抱き締め、丸くなる。


「ちょっとユークンさん! 起きてー!」


 尚も諦めていないのか揺さぶってくる。


「やめろぉ! マジで! 俺は一日に十八時間は寝ないと死ぬんだよ!」


「一日の活動時間がたったの六時間!?」


「そして起きたときに一日を棒に振ったと後悔するまでが一連の流れ」


「結局後悔してる!? というかもう起きてますよねっ?」


 む。バレてたか。本当は途中から完全に遊んでた。


 このやり取りのおかげで目が覚めたわ。明日からもしよう。


「おはよう。サシャ」


「はいっ! おはようです!」


 サシャの尻尾と耳は相変わらずのもふもふだなぁ。尻尾がゆらゆら揺れてる。

 それにニコニコしてるし。

 朝から良いもん見れた。



「さてと、今日は狩りのグループにまぜてもらう初日だな……頑張んないと」


 寝起きの俺は欠伸を噛み殺しながら決意をあらためる。 

 流石に昨日あったばかりの女の子、それもかなり可愛い子の前で大口あけて欠伸をする勇気はない。


「です! それじゃ、もう朝御飯の用意はできてますから、顔洗ったり着替えたりしたら昨日の食堂まで行きますよっ」


「了解した……」


 着替えを渡してサシャは部屋から一時的に出ていく。サシャは気が利くね。










「ん~、旨かったな、朝飯。昨日は緊張で味わかんなかったけど、やっぱり旨いのな。朝はあんまり食いたくない俺でもおかわりしたよ」


 俺は自分のほっそいお腹をさすりながら道を歩く。

 今は食事も終え、用意もすんだので、ユーヤに言われていた狩りの集合場所に向かっているのだ。

 

「にしても……気を付けて、か……」


 俺は先程言われた言葉を思い出してニマニマしてしまう。


 アリシアやアリスを初めとする幹部たちは皆、それぞれの仕事があるのか、俺よりも早起きして出ていったらしく、朝飯は俺一人だった。

 後ろに立っていたサシャに、誰もいないのだから一緒に食べないかと誘ってみたら意外にもオーケーしてくれたのだ。

 何でも、後ろに控えてたのは様式美だそうで、ユーヤは普段から使用人達も一緒に食べるように言っていたそうだ。昨日のはお客様だった俺をもてなすための食事会みたいなもので、使用人は皆時間をずらしていたらしい。だが、自己紹介も終えて完全に身内判定をされたようで、一緒に食べてもセーフと思ったようだ。


 そこで行儀は悪いのかもしれないが、食べながら色々と話をした。今日の予定とか、サシャのこととか。かなり距離が縮まった気がする。気のせいでなければ。

 サシャの両親は狩りのグループらしいのだが、サシャは幼いというのもあってこの館のメイドをやっているそうだ。  

 将来的にもメイドをするらしい。

 時々両親にお弁当を持っていったりするとも言っていた。


 その両親はグループの中でもかなり強いらしく、サシャはサラブレッドだそうだ。その血からか、サシャは特に戦闘はしていないが種族も犬人に進化している。ハイコボルトは獣っぽさがあるが、それの進化系である犬人、狼人は獣人に近い。


 通りでかなり人っぽい見た目なわけだ。

 どっから見ても犬耳美少女だもんな。獣っぽさがそんなにない。 

 そして俺が狩りをするという話をすると、気を付けてくださいね? とかなり心配な顔で言ってくれたのだ。

 俺は家族にも友達にも恵まれていた方だとは思うが、ここまで本気で心配されるというのはかなり嬉しかった。



「あぁ。気を付ける…………もっかいサシャの顔を見たいしね」


 俺は歩きながらその言葉を反芻する。

 胸に刻み付けるように。今日の仕事で死なないように。



「ん? サシャがどうしたって?」


「ひゃう!?」


 どうやら心ここにあらずで歩いていたらしい。 

 いつの間にか目の前には男の人が立っている。


「君かな? 新しく狩りをするこの部門に入ってくれるっていう人は」


 目の前の男の人がそう聞いてくる。

 俺は周りを見渡してみると、どうやらもう集合場所についていたらしい。ここは町の入り口。


「あぁ、はい! そうです」


「そっかそっか。僕は君の面倒を見ることになっているラスクだよ。よろしくね」


 ラスクさんはその優しそうな顔に笑顔を浮かべて俺に手を差し出してくる。


「あっ、よろしくお願いします」


 俺は緊張で汗ばむ手を軽く服で拭いてから握手をする。


「ところで……サシャは僕の娘なんだけど、どういう関係なんだい?」


 笑顔のまま、握る手が徐々に強くなっていくラスクさん。


 ちょっ!? 痛いんですけど!?



 

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