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ゆーくん、オタクじゃないけど

「ここって日本の俺の部屋の倍くらいあるんですけど……?」


 俺は自分の部屋というところにアリスに手を引かれ案内された。  しかし、いざ部屋に入ってみるとそこは俺には勿体なさ過ぎるほどにデカイ。

 普通の高校生であるゆーくんには間取りやら何畳だとかは分からないが、10メートル×10メートルはあるのでは? いや、本当に10メートルってのも適当極まりないが。

 部屋のなかには木製の家具が配置されている。

 テーブルに椅子にベッドにタンスにと。

 ただ、その家具一つ一つにもこだわりを感じる。


「ここがユークンの部屋になるわよ。何か不便なことがあったらそれを鳴らすといいわよ」


 ついてきていたアリシアが部屋の外から(ゆび)()す。

 その先には小さなテーブルの上にベルが置いてあった。


 マジか。あの(かね)ってメイドさんとか執事さんを呼ぶだよね?

 

「ん。試しに鳴らしてみ?」


 アリスが部屋の入り口で突っ立てる俺をすり抜けて部屋のなかに入り、鈴を持ち上げる。

 手招きするので俺も部屋のなかに入った。


「ん」


「あっ、ありがと」


 差し出されたベルを受けとる。

 

 銀色のベルだ。リーフっぽい装飾もされている。

 細かいな。だけどお洒落だな~。


 俺はそのベルを軽く振り、鳴らしてみる。澄んだ綺麗な音色だ。





「よびましたかっ?」


「ひょえ!?」


 部屋の入り口から聞いたことのない声が聞こえる。

 少し驚いてしまった。

 俺は思わず変な声を出してしまう。少し恥ずかしい。


 顔を赤く染めないよう、口角を動かさないように気を付けて入り口を見てみる。


 そこには、アリシアの隣に立つ小柄な女の子が。俺の知らない子だ。


 女の子はメイド服を着ている。

 まさか現実でメイド少女を見られるとは……

 

 しかしなにより、その女の子には…………犬耳があった。付け加えて言うと尻尾もあった。

 茶色のショートカットと同色の大きな瞳。顔は普通の人間とほぼ変わらない。恐らくはハイコボルト系統の女の子だろう。進化しているのかは定かではないが随分人間っぽく見える。


 あと全体的に小動物感が凄い。うん、可愛い。

 これは、その活発な雰囲気とメイド服やらが相まって……萌える。


「おやっ? そちらのかたははじめましてですねっ?

 ウル様から連絡のあった方でしょうかっ?」


 その犬耳少女、いや犬耳美少女は尻尾をブンブン振りながら首をかしげる。


「あ、うん。はじめまして。多分俺がウルさんの連絡の人だと思います。貴女は……?」


 俺は返答する。


「私はこの館のメイドをしてますサシャですっ。というか、さっき呼びましたよねっ? よねっ? ご用件は何でしょっ?」


 犬耳美少女は耳をピンと立て、目をキラキラさせる。

 何かしらやりたくてしょうがないみたいだ。


「えと、今日からしばらくはここに泊まることになったから、挨拶をと」


 俺は癖で鼻先をかきながら言う。


「おおっ! 律儀な方ですねっ! 分かりました! 何かあったらそのベルを鳴らしてください。何処でも私が聞きつけ参りますのでっ!」


 うん。かなり元気のいい娘みたいだ。

 見た目的にはアリスとそう変わらない、か?

 いや、サシャのが幼いかも?

 十代半ばか、前半かも。


「ん。サシャは耳がめちゃいい」


 アリスが手を自分の頭に立てて乗せ、犬耳を表現しながら言う。

 …………可愛いな。


「はいです! 伊達に超聴覚のスキルは持ってないですよっ!」


 エヘンと胸を張るサシャ。

 その胸が大変慎ましいと思ってしまったのはこの町に来てから毒されたのだろうか? 巨乳が何気に多かったからな……。


 にしても超聴覚ね。耳がとても良いってことだろ? 羨ましいな。日本にいた頃のゆーくんは耳がそんなに良くなかったからな。音楽とか聞きすぎたわ。ゲームとかしすぎたな。

 転移した今ではけっこう耳も良いが。


 というか、何処にいてもこのベルの音が聞こえるって半端ないね。


「ああ。宜しく頼みます。サシャさん」


「サシャですっ! さんはいらないですよっ?」


 サシャからさん付けはいらないと言われた。

 だけど、


「いやでも、俺ってさん付けがデフォルトだし……」


 余程仲がいいか、ノリだとかふざけてでもない限りは女子を呼び捨てには出来ない性分なんだよね。


「サシャ!」


「いやでも……」


「サ…シャ……!」


 や、やばい。尻尾が垂れ下がっていく。悲しそうな雰囲気に心が痛い。

 アリシアとアリスもジト目な気がする。


「さ、さしゃ」


「はいですっ!」


 あっ、尻尾がビーンなった。


「それじゃあ用があったら何時でも何処でもそれ、鳴らしてくださいませっ!」


 サシャが消えた。 


 ステータス、なのか?

 あんな中学生位の子がどんな身体能力だよ。


「全く、サシャは……

 落ち着きのない子です」 


 アリシアは消えたと思われる方を向いている。


「ん。友達。サシャはとてもいい子だよ」


 アリスはアリスでそんなことを言っている。


「ああ。それじゃあ私たちは自分の仕事に戻るわね。ご飯の時間になったらサシャが呼びに来ると思うわ」


「私も戻るね」


 そう言うと二人は自分のやることに戻っていった。


 俺はそれを見送る。




「はああ~~。つ か れ た! 今日もう色んなことありすぎじゃね!? まだ終わってないけど!」


 俺は背中からベッドにダイブする。

 ボフッとベッドに体が受け止められる。

 思ったよりかは柔らかかった。


 俺は天井を見つめ、


「…………うん。色々あったな。いつの間にか異世界来てて、ステータス見て、少し調子のって、現実を知って、自分の弱さに直面して、助けられて、なんとか交渉して、仲良くなって、姉ができて、もう一人姉ができて、自分の書いた町に感動して、ユーヤに会って、メイドに会って…………うん。濃密過ぎるわ。これの何れか一つだけで小論文書けるわ」


 思い出す。


「どうしようかな…………これから。

 このままユーヤに寄生するのも申し訳ないしな……」


 俺はどうしたいか、どうしたらいいかを考える。


「…………」


 天井を見ても答えはでない。


「…………出来ることを、しよう。そう、例えば何か仕事とか」


 今までは自分が働くなんて考えてもみなかったが、そうしたい気分だった。

 この町の人達の役に立ちたい。そう思った。


「後で、言ってみるか」


 俺は先ずはユーヤに仕事を聞いてみることにした。



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