ゆーくん、考えてませんでした
書き足すかも。
「はじめまして。同郷の人」
そうユーヤは言った。
部屋のなかには俺とアリシアとアリス、それにユーヤが居るのみだ。もしかしたらアッシュ (小説の登場人物)とか吸血鬼とかが聞いてるのかもしれないけど。
アッシュはコボルトからの特別な進化で灰狼という、世界に唯一アッシュしかいない種族になっている。普段は獣人の姿をしていて、灰色の髪と紫色の髪のクールなイケメンだ。ユーヤの配下で、忠誠心が高い。
ところでさ! なんなん!? ユーヤ!? もお! イケメンって何言ってもイケメンなのな!
俺は心のなかで叫ぶ。
ユーヤが超絶美形すぎる!!
俺がはじめましてかどうか迷っての曖昧な挨拶も、きょとんとってした後、にこやかに言うんだもんなー!
ってか、銀髪金眼って実在するんですね! はいはいかっこいいよー!
ユーヤは元は社畜で、気付いたらこの世界で卵のなか。出てみると、自分はベビードラゴン。そこから色々成り上がったりして、今は白銀神竜で通常は人の姿をしている。その姿は銀髪金眼で、目付きは少し鋭い。そして超絶美形とか、そういう設定だった。
だが、やり過ぎたよな。俺。
かっこよすぎるもん、ユーヤ。
なんとかそんな内心を押し殺し、悟られないようにする。
「俺が日本人だってことは?」
俺はそうユーヤに聞くと、
「ああ。信じているさ」
さらっと答える。
「まあ、ユーヤ……様が持ってる特別な鑑定で俺の称号とか見れば……
……え? 信じてくれんの??」
俺はまさかそんな簡単に信じてもらえるとは思っていなかったので面食らってしまう。
「ああ。信じてる。君が黒髪黒眼だとか、日本語喋ってるとか、理由は色々あるが、なんというかこう、君は信じられる人間だと思えたんだよな。
あと、俺のことは好きに呼んでくれ」
ユーヤはニコニコしたまま言ってくる。
おおふ。よくもまあ、恥ずかしげもなくそんなこと言えるな……
えっ? なに? 「信じられる人間」?
…………いや、照れるけど、ユーヤが嘘でなく本気で言ってることは分かるなぁ。どうしたらいいの? これ。
「そ、そっすか。ユーヤさん」
無理だわ。今思えば相手は元社畜。こっちは学生。
経験がちげぇ……。というかユーヤって全然普通の社畜じゃないよね? 俺がこの物語の作者だということは黙っておこう。狂人だと思われかねないと思う。
俺は考えていると、
ユーヤは「ところで」と前置きして告げてくる。
「君はどうしたい?」
え?
「君はどうしたいんだ? 日本に帰りたい? それともここで暮らしていきたいのか?」
俺がどうするか?
…………正直、まったく考えてなかった。
「帰るんなら俺も出来るだけ助けてやろう。方法を探してやる。この世界で生きていくならこの町に家を用意してやろう」
ユーヤは選択肢を提示してきてくれる。
「俺は……俺は…………」
「はあ~~、優柔不断はこの世界でも変わらないか~」
俺はユーヤとの対談を終え、部屋から出ると大きく溜め息を吐く。
「どうしたのよ? というか、主様とユークンとでよくわからない言語使って。あれ何?」
アリシアが俺のことを複雑な目で見てくる。
のけ者にされたからかな?
「いや、あれは、なんというか、俺とユーヤさんの故郷の言葉……だよ」
俺は言葉を濁す。
「ふーん。で、結局この町にとどまることになったのよね?」
「ああ、うん。暫くはこの町に居させてもらうことになったよ」
俺は思い出す。
あのとき俺は「考えときます」と、先伸ばしにすることしか出来なかった。
まあ、日本に帰るか、この世界に居るか。悩むよなぁ。
取りあえずのところは観光気分で滞在させて? みたいな。
「ん。取りあえず、部屋、案内する」
アリスに導かれて、俺の部屋になることになった部屋に案内される。
この無駄にでかい屋敷の一部屋を貸してもらえることになったんだ。