ゆーくん、町に行くみたい
どうもどうも! 自分の書いた小説の世界に迷い混んだらしいユークンです!
ちなみに、今後は名前をユークンでいこうと思ってます!
ステータスがそう表示されてるしね。
どっかの武将っぽい名前で格好いいと思う。
まあ、狼猫狐の要素がどっかにふっとんでるけど。
どこ行ったんだろね?
さて、そんなこんなを言ってるわけですが、今現在ユークンはグロッキーです。
「ちょ、ちょっと、貴方大丈夫ですか!?」
アリシアが焦りつつ聞いてくる。
俺は、そんなアリシアに向けてニッコリと微笑み、
「だいじょばない」
…………と告げてから、オロッた。
オロッたってのは……まあ、察してくださいな。語感で。
「ず、ずびばぜん、背中を擦っていただけると……」
「……ハア、ちょっと、貴方軟弱すぎませんか?」
「知ってます」
とか言いつつも背中を擦ってくれるアリシア、優しい。
えぇ。自分が軟弱者だってことは知っていますとも。じゃなかったら今ごろ適当な魔物つかまえて俺ツエーしてるだろうし。
今も、さっきのゴブリンの首跳ねで気分が悪くなってる。
見た直後はアリシアと必死で話してたから忘れてたけど。
「はあ、あんがと……
なんとか、おさまってきた」
吐き気も大分おさまった。
「いえ、問題ありません。っと、しばしお待ちを」
アリシアが俺に言うと、影魔法を、(まあ、アリシアのスキルは進化してるから厳密には違うが)使い、俺の出したものを地面に埋めている。
すげー! 魔法だ! 初めて見た!
…………凄い。とても凄んだけど、初めて見た魔法が、自分の吐瀉物の処理だとは、微妙すぐる。
俺が感動とか、落胆とかの感情で微妙な表情をしていると、
「終わりましたよ。では行きましょう」
どうやら、終わったみたいだ。
「あぁ。えっと、ありがと?」
俺は女性に、ましてやこんな美人に醜態を見せてしまった恥ずかしさを押し殺しつつ、お礼を言う。多分、俺の顔はひくついていると思う。
「お気になさらず」
相変わらずツーンとしてるなぁ。
それからは移動を再開した。
…………す、すげー。
今は移動中なわけだが、アリシアさんがメッチャ凄い。
先導するために俺の二歩先ほどを歩いているのだが、ふと立ち止まると、また歩き出す。
そんなことを繰り返してる。
それの何が凄いのかと言うと、俺も暫くしてから気付いたのだが、アリシアさん、魔物をしとめてらっしゃる。
さっきから全然魔物に遭わない。
これは、アリシアが俺に魔物を殺すところを見せないよう、そして死体を見せないようにしてるんだと思う。
地面に血がついてる所があったけれど、死体は無かったし。
死体も何処かに退かしてるらしい。
本当にアリシアはこういう気遣いが素晴らしい。
時々、俺の方を振り返って心配そうな目を向けてきてるし。
「疲れてはいませんか?」
むっ? アリシアが前を向きつつ、尋ねてくる。
「だいじょぶですよ? なんだか体の調子がよくって」
やっぱりこの世界に来てからは体の具合がとても良い。
吐いたのは無かった方向で。
「そうですか」
アリシアは何事もなかったように歩き出す。
「貴方って何故だがとても心配になるんですよね。
ウル様が言うには、弟がいたらこんな感じらしいのですが。
私もそう思いますね。貴方は目を離したら何かしでかしそうです」
え、えーっとぉ? いきなりの弟宣言ですかい?
どう返したら正解なのですか?
「そ、そっすかね? じゃあ、アリシアさんは俺のお姉ちゃんになりますね」
これしか思い付かなかった。
というか、俺って会話が得意じゃないんだよね。話してるときに頭のなかで会話を組み立てるとか、皆とてつもなく凄いことしてるよ。
あんな少ない時間で。
だから俺はメールとかだと上手く話せる。時間を気にせずに返事ができるから。
だけれども、この世界に来てからはそういう処理能力も上がってるのか、会話がスムーズに進む。何気に嬉しい。
「…………お姉ちゃん……」
アリシアは何かを感じ入ってるっぽい。
「ふむ。悪くないですね。貴方、これからは私のことをお姉ちゃんと呼びなさい」
ふぇ? な、なんだかとんでもないことを決められた?
というか、
「えっと、それって、アリスと被りません?」
うん。アリスは年上で気に入った女の人をお姉ちゃんと呼ぶから俺がそんな呼び方をしたら被る。
ちなみに、アリスとは俺の小説の登場人物です。金髪ショートカットに赤眼のメチャクチャ可愛い女の子。
勇者なんだけど、それを勘づいた何者かに大怪我を負わされた挙げ句に、奴隷として売られていた不憫な子。奴隷からは解放されているし、それまでに奴隷だからといって何かをされたわけではない。それでも大変な思いをしたのだろうが。
だけど本人は気にしてないっぽいけどね。
「…………では、アリシア姉さんでお願いします」
アリシアがそう言ってくる。
というか、もう姉設定は確定なんか?
「ほら、呼んでください」
急かしてくるなよ!?
「えーっと? あ、ありしあねーさん?」
「ぐっ!? こ、これは…………中々良いものですね」
アリシアが大げさに反応する。
へー、アリシアってこんなユーモアのある人だったんだ。
仕事人みたいな、いつも冷静、みたいなキャラを書いてたつもりなんだけどね。知らないことばっかだ。
というかさ、アリシアさんよ、あなただけずるくないかね?
「ってかさ、アリシア姉さん、俺は姉さん呼びするのに、姉さんは他人行儀なのですかね?」
俺は思いきって言ってみる。うん、普段だったら言えないと思う。異世界に来たことで思ったよりも興奮してるのか、何かしらの変化があったのか。
…………まあ、いっか。
「わ、わかりま……わかったわ。ユークン」
お、おおぅ、こ、これは破壊力あるなぁ……
俺はさっきのアリシア以上にリアクションをとってしまう。
「ふふっ」
あっ! 笑ってもらえた!
どうやら、アリシアとは打ち解けてきたみたいだ。
というか、アリシアがフランクに、敬語を使わずに話す相手っていたっけ? いないよね?
じゃあ、俺が初? なんか嬉しいね。
…………まあ、仲良くなるのが、思ってたのとは全然違う方向だが。
「見えてきたわよ。主殿の町が」
町が見えてくる。主人公のユーヤがつくり、おさめる町だ。
「おお……! すごい、綺麗だ……」
俺は思わず、感嘆の声をもらしてしまった。
自分で書いた町だが、そんなことは全く関係ない。実際に見ると、そんな知ってただけの知識とか、吹っ飛んでしまった。