ゆーくん、サバイバル?
「さてはて、困った」
魑魅魍魎が蔓延るこの森で俺は、ビクビク震えながら周りを見渡している。あるのは……
木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、ゴブリン、木、木、木、木、木、木、木、木、木、ゴブリン、木、木、木、木、木、木、木……
……ゴブリン!?
思わず叫びそうになった。
しかし、叫んだら確実に俺の存在がゴブリンにバレるし、他の魔物とか呼びそうなので、口を手で押さえて、震える足を動かしてその場から離れる。ゆっくりと、音をたてないように。
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「はあはあはあはあ……」
ああー、心臓の音が煩いぜ。何とか気づかれずに逃げ出せた。
こんな森のなかに一人でポツンと突っ立ってる。それだけで心細いことこの上なしだよ。
それに、いつ俺じゃ逃げることも出来ないような魔物が出てくるかも分からないから、震えが止まらなかった。
そこに来ての、トラウマになりかけているゴブさん登場だよ……
今は何かメチャクチャでかい木のうろっぽい所に身を隠してる。
うろというか、根っこがマングローブみたいに地上に露出している木で、檻みたいな感じで絡み付いて根っこが生えている。そしてこの木、縄文杉のようにデカイので、絡み付く根っこの合間に潜り込める。そうすれば一時的に隠れられる。
そしてその空間で今、俺の無力さを再確認したところだ。情けない。
だが、それだけ現実が見れてるってことだと考えとく。
「今の俺の装備、そして戦力、方針、必要なもの……」
見た感じ、この森において、このうろは死角になると思うので、現状を確認することにした。
【装備】
・鉄の剣、使える気がしねぇ……
・本数冊、これは重要かもしれない。内容は、魔法の初級編、中級編。これは、使える……かな?
植物図鑑。うん。鑑定で代用可。
・ペン、異次元収納の試しに入れてみた。こんな状況で使えるのか?
・お皿数枚、以下同文。
・薄手の布の生地、以下同文。
・フォーク、以下同文。
・魔道具のランプ、上の一文目。灯りを確保出来る。
・でかめのパン一つ、これが唯一の食料だ。メチャクチャ大事。
【戦力】
少しだけ優遇されているステータス。ただし、戦ったこともなければ、その覚悟も危うい。敵を目の前にして吐くかもしれん。
さっき、こっそりうろから出て、初めて鉄の剣を振ってみたけど、ステータスのおかげか、結構いい音がした。ただ、これをゴブさんに当てるのは気が進まない。
魔法は、使えるかは分からない。ただ、才能は少しはあるはず。
【方針】
・生きる
一日生き延びろと言っていた。ならば、明日の今頃には迎えに来てくれる……はず。それまで生き残る。
【必要なもの、こと】
・水
・食料
・安全な場所
・勇気
・高いステータス
・生き物を殺す覚悟
・サバイバル知識
・やる気
・サバイバル技術
・スキル
・自分の力の把握
「こんなところか?」
自分で考えを上げてみて思った。
俺って、今襲われたら逃げるか、不恰好に剣をステータス頼りに振り回すだけだな。
早急に対処が必要だ。
「まずは……戦力アップだ」
俺はゲームでも、安全マージンの上をいかなければボスに挑まなかった男。ここは現実なのだから尚更だ。
「となれば……」
選択肢は四つ。
剣を振り続けて慣れるのを待つ。
魔法の本を読んでみる。
独自で頑張ってみる。
寝る。
「よし! 独自で頑張ろ!」
俺はそう決めた。