ゆーくん、スタイルを決める
今回は少し短いです。
「どっちも? それはどういう……?」
「ラ○トセイバーです」
そう、俺が思い描いているのは、某星の戦いに出てくる有名な剣、ライトセ○バーである。
振る度にヴィィン、ヴィィンって音がする、悪役は紫色で、味方は青か緑の光の剣のアレである。
一度は憧れるよね。
あれってどうやれば再現できるのかな?
光魔法? 雷魔法? 火魔法?
あっ、なんだったら、でっかいガスバーナーみたいな剣でもいいな。
熱で焼き切れるよね? もしくは水魔法で水圧で切るやつとか。
いや、水圧のは無理かな? あれってかなりの圧力で、かつ金属の粉とかが混ざってるから切れるんだよね?
「ラ○トセイバー?」
「はい。ラ○トセイバーです……ごめんなさい。やっぱ無理かも」
やっぱり俺じゃ再現できる気がしないわ。
いずれ達成したい目標にしとこう。
「聞いた話だと、属性剣っていうのがあるらしいよ。剣に風を纏わせて切れ味を上げたり、火を纏わせて、斬ったら燃えるようにしたり」
「あっ、じゃあそれで」
なんだ。良いのがあんじゃん。
剣に魔法を纏わせるってバリエーションが多そうだし。
俺って何にでも少しずつ才能アップのスキルがあったしね。
だったら広く浅くいくのも一つの手かな。
「それじゃあ、君は何か魔法は使えるのかい?」
「魔法? いえ、見たこともそんなに無いくらいです」
俺は頭を横に振る。長めの前髪が揺れて目にかかってちょっとうっとおしいな。
「そうか……。実は僕達夫婦は魔法はあまり得意では無いんだよね。僕は武器の扱いが、ナタリーは体術が得意なんだよ。取りあえず僕達はそれを教えるでいいかな?
身体を動かす基礎にもなるし、魔法を使うにしても覚えておいて損はない。魔法は他の人に教わってほしい」
ラスクさんがそんなことを言ってくれる。
是非もないよな。
というか、仕事の手伝いをさせてほしいってことだったのに、俺を育ててくれて、皆凄い優しい。
俺自体の戦闘力とか、自衛を考えてくれたのかな。
ヤバイ。皆いい人すぎる。
「はい! お願いします!」
「了解したよ。じゃあ、先ずはナタリーに教えてもらって」
「あっはい」
俺はナタリーさんに向き直る。
すると、ナタリーさんはニッコリと微笑み、
「実戦あるのみ!」
あっ、駄目だ。この人、脳筋だ。
綺麗な人なのに勿体無いね。
あっ、俺は人妻には興味はありません。念のため。
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「ということで、見たところあなたの身体能力はまずまずってところだから、そうそう死にはしないでしょう。取りあえず、この森で一日生き残りなさい」
それじゃーねー、と言ってナタリーさんは消えてしまう。
「…………」
ここは森のそこそこ奥。手持ちは昨日の夜に異次元収納のスキルの試しで入れた幾つかの物と、渡された鉄の片手剣と、数冊の本のみ。
道が分からないから自力では町まで戻れるかも危うい。
森の中に置き去りにされたのだ。
最初は、狩場にでもいくのかな? とか思って素直についてきたけど、まさか放り出されるとは……
獣の鳴き声が遠くに聞こえる。
ヤバイ。泣きそうだ。瞳がうるっとする。
(やりやがったなーーー!! あんにゃろぉーーー!!!)
俺は心のなかで絶叫する。
声に出したらマジで魔物を呼び寄せそうだからね。
この冷静な判断。我ながら惚れ惚れするぜ。