ゆーくん、異世界に落ちちゃったみたいです
あらすじにある通りです!
元は読者様からの「作者が自分の書いた小説の中に落ちる話」という希望で、別作品の番外編として投稿していましたが、別作品の方が良いかな~と思ったので、投稿し直しました。
内容が分かりやすいように、何回も書き直していくかもしれません。ご了承くださいませ。
よろしくね!
「えっ、えーっとぉ? ここどこよ?」
そう俺は呟いてみる。
まあ、勿論誰からも返事は無いんだけどさ。
周りを見た感じは…………まあ、大自然だよね。
平原だよ。地平線が果てしないぜ。
つか、こんなとこ日本にあんの?
モンゴルとかの平原よりも凄いんじゃない?
「うーん?? さっぱりだ。皆目けんとーもつかん」
俺は首を捻る。
とりあえず俺の記憶を遡ってみる。何かヒントがあるやも知れんし。
俺は普通の高校生。理系で、受験生だ。
成績は中の上。顔も中の上。
見栄を張ればどっちも上でも通じる……と思う。
客観的な評価でだよ?
そんな感じのいたって普通の学生。
まあ、人と違うところと言えば自作の小説を、狼猫ゆーくん狐という名前で投稿してるくらい?
「…………ん? 小説?」
そーいえば、この世界って、異世界っぽくない?
ほら、あそこなんて緑色で小汚ない子供みたいな魔物が……
って、はあ!?
魔物じゃん! 魔物いんじゃん! どうしよ!?
俺は内心のドキドキを外に出さないように気を付けつつ、そーっと逃げ出した。
まあ、最初からかなり離れてたけどね。でも逃げる。
しょうがないじゃん。ビビりだもん。
「はあはあ。ここまで来れば、万が一にも見つかんないだろ」
ふう。良い汗かいた。
あれ? そう言えば、俺ってこんなに走れたっけ?
俺は致命的に運動が苦手だ。なんでかっていうと、体質的に何故か太らないんだよね。
一見すると女子に羨まれるような体質に思うかも知れないけど、そんなことはない。
太らないっていか、むしろ痩せすぎだから。ガリガリだから。
なんでだろうね? ご飯は人と同じかそれ以上食うんだよ?
でも太んない。いや、肉がつかない。ほっそい。
だからスタミナも全くない。
ってことで、運動はもはや諦めてるんだよね。
だけど、何故か今はかなりの距離を走れた。なんぜ?
考えてみる。
…………answer、ここが異世界だから。
俺の体もそれ仕様になった。
かな?
これには根拠がある。
もうひとつ、運動以外にも。それは、目だ。
俺は日常的にコンタクトしてんだよね。もしくは眼鏡。
じゃないとぼやけてまともに見えないからさ。
なのに、今は眼鏡もコンタクトもしてないのに、めっちゃ見える。
これは確定じゃね? 異世界なんじゃね?
「更に言うと、ここって俺の書いた小説の世界の可能性もあるんじゃね?」
うん、可能性は無きにしもあらず、だよね。
「確認の仕方は……
やっぱあれかな? ステータス」
俺は小声で呟いてみる。俺の書いた小説だとこれでステータスが出てくる筈。
いやさ、平原の真ん中とはいえ、恥ずいやん。中2的な病気の人かと思われるじゃん?
まあ、中2病なのはあってるけど。
じゃないと小説書かないって。
まあ、少しだけよ?
ユークン 種族 人族
性別 男
レベル 1
HP 1000/1000
MP 1000/1000
・パワー 500
・スピード 500
・ディフェンス 500
・マジック 500
・マインド 10
・ラック 10
ユニークスキル
・異世界人セット
…………マジっすか!
マジで俺の書いた世界じゃないですか! やべぇっす。なんか、やべぇっす。こう、心に来るものがあるね。
…………というか、マインド低くね?
まあ、確かに心弱いけどさ……そんな風にステータスでまで言う必要無いじゃん……
えーっと、ステータスは……俺って確か、パワーとかはオール100が一般人、ってしたよね。
なら、割りと強め?
というか、この異世界人セットだよ。
これが一番のジョーカーだよ。
俺はこのスキルの内容が知りたいと念じてみる。
「異世界人セット」
世界を渡った異世界人がたまーに持つことがあるセット。
言語に不自由しない。
鑑定スキルを内包。
異次元収納を内包。
全体的に何にでも適性を小アップ
身体能力を元の世界よりもアップ。不調を治す。
また、このスキルは鑑定されても表示されない。
「よかったーー!! 当たりだー!」
必要なもん大抵入ってんじゃーん!
しかもこの視力とか、体力とかもこれのお陰っしょ?
ありがとう!! 異世界人セット!
俺はこの世界でも一応すぐに死ぬことは無さそうです!
「よし! まずはレベル上げだよね!
町とか今行っても良い未来が見えないし。そこら辺のちょっと強めの冒険者とかにかつあげされるビジョンが見える」
我ながら割りと適格な未来予想だと思う。
「よし! なら、弱そうな魔物を探すぜ!
…………って! さっきのゴブリンっぽい魔物と戦っときゃよかった!」
俺は割りと落ち込んだ。
まあ、でもあの時点では俺の能力がわかってなかったから仕方無いのだと自分に言い聞かせる。
「もと来た道へ戻るかね」
俺はまた走り出した。
自分の走れるスタミナの多さに興奮しながら。
「うぇぇ、キモい……
リアルで見ると案外キモいんすけど……ゴブリン」
俺はゴブリンと対峙する。
というか、こいつマジでキモチワルイ。醜悪すぎぃ。
手に持った良い感じの棒を振り回してみる。
ビュンビュン鳴る。
おお! 身体能力アップってスゲー。
いける気がする!
俺は少し離れた所でボーッとしてるゴブリンに棒を打ち付ける………
イメージをしてみる。
…………ヤバイ。無理。怖い。
何が怖いって、自分が怖い。こいつを、今目の前で生きてるこいつを、棒で殴打するとか、そんなことする俺が怖い。
手が震える。体が石みたいに固くなってる。
動けねぇ……
ステータスを見る限り、俺のが圧倒的格上。
だけどさぁ、俺、こえーよ。
そう言えば俺って、学校の生物の授業でも、教科書に載ってる、体の構造とか、カエルの受精卵とか見んのも辛い男だった……
グロいんだもん。毎回思うけど、目玉の断面図とか正気の沙汰じゃないよぉ。
何なの、オレ? さっきレベル上げだー! とか言ってさ……
生き物、ましてやこんな人型のやつ殺せるわけないじゃん……
調子乗りすぎだよ……
!! ゴブリンが俺に気付いた!?
動け、俺の体……! ゴブリンが俺に向かってきてる……動かないと、殺されるぞ!?
「グギャギャ!」
ああ、目の前にゴブリンの棍棒が……
こえーよぉ。今度は自分が死ぬことがこえー。
情けねぇなあ。
いつもは、いつ死んでもいいとか簡単に思ってるくせにさ。
いざ目の前に直面したら、死にたくない、だもんな。
ああ。投稿してる小説、最後まで書かないと……
俺は死を覚悟して目を閉じる。
…………? 衝撃は?
俺は何時までもこない衝撃に不思議に思いつつも、恐る恐る目を開けてみる。
そうすると、目の前には首を跳ねられたゴブリンと、青っぽい黒髪? の美女が。
はっ? こんな綺麗な人見たことないんですが。
俺の今までの人生で、テレビの有名人とか入れても断トツのトップ。
というか、もしかして……この人は。
「貴方、大丈夫ですか? 大丈夫なら、もう私は行きますが」
あ、間違いないわ。この人アリシアだ。
俺の書いた小説のヒロイン、主人公の恋人一人目。吸血鬼王っていう種族で主人公ことユーヤの配下でもある。
この他人には冷たい感じ。
でも、助けてくれる感じ。
って、ちょっ! まっ! まって!?
「す、す、すいません! ちょっと待って!?」
「はあ? 何故ですか? 見た感じは怪我もなさそうですが」
ぐっ、い、いやまだだ。これで退いたらマジで俺はどうしようもない。色々と。
俺自身の性根のこととか。この先どうするかとか。
「ちょっと待ってください! 貴女、アリシアさんですよね!?」
「? 何故私の名前を? 町で聞きましたか?」
よかった。話を聞いてくれるみたいだ。
「えーっと、実は、貴方の主の知り合いでして……」
うん、間違ってない。
「? 本当ですか?」
「ああ! ほんとほんと! 確かめてくれても良いです!
ウル経由で、ユーヤに、日本人が迷い混んだって言ってくれれば!」
あぁ、これなら主人公のユーヤもわかってくれるだろう。
日本人という単語も入れてるし。
ウルっていう人は、元々ナビゲータースキルなんだけど、それが人間の体を手にいれたっていうヒロイン。正妻設定。沢山の人との同時念話とかも出来て色々万能にこなす魔法使い。
えっ? アリシアさん、なんでそんな不機嫌そうなん?
「貴方、今ウル様と主殿のことを呼び捨てに……」
ひいいい!? そ、そうだった! アリシアってこんな人だった!
ってか、なんで、自分の作品の人物に敬称つけなきゃなんないんだよ!?
「す、すみませんでした。ウルさんとユーヤさんです。はい」
せめて、さん付けで。これが最大の譲歩っす。
「…………まあ、良いでしょう。ウル様に確認をとります」
ふ、ふう。なんとかなったか?
今アリシアは虚空を向いている。きっと念話をしてるんだろう。
「主殿に確認がとれました。主殿の町まで案内します。付いてきて下さい」
よ、よかったー! ユーヤがトップをしている町の保護下に入れれば、まだなんとかなるかもしれん!
「ありがと! アリシアさん!」
「いえ、なんということはありません」
やっぱ冷たいなあ……
それからはアリシアに案内してもらって町まで移動し始めた。
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