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六話 勇者と親友

 アクナ。

 俺の付き人であり、友人であり、兄弟のような存在だ。

 

「……そんなの、伯爵家の娘のあんたならこんなことしなくても簡単に奪えるだろ」

「何を言っているの、奴隷を貰うには勝負をして勝たなければいけない、でしょう?」


 主がいる奴隷を手に入れるには勝負で勝たなければいけない。それは奴隷商人と最初に交わす契約だ。

 これを破れば裏の警察、死月が動き破った本人を殺す。言い訳問答一切無用の殺しは裏社会の名物になっている。

 規律を守れない奴には死を届ける季節を問わないサンタクロースなのだ。


 まあ、そんなことよりもだ。


「アクナ、どう思うよ」

「……私を奴隷と知っている人は少ないでしょうし、私を欲しいと言うならあちらの方も知っている可能性が高いです。どこからこれらが漏れたのか、調べた方がいいと思います」

「じゃなくて勝負の行方だよ。俺があの女に乗馬で勝てる確率は?」

「……」

「おい」

「……五分五分でしょうね」


 こいつ嘘ついていやがる。


「貴方の条件はないようだから、場所を移しましょう」

「待て! こういうのは普通は自分の奴隷を競わせるだろう? うちのアクナとそこのねえちゃんで戦えばいいじゃないか!」

「貴方のペットは何でもこなすようじゃない。そんな挑戦権を無くすようなこと出来ないわよ」

「だからって主人が勝負するのはおかしいだろ!」


 本来の奴隷勝負とは、双方が欲しい奴隷又は挑戦者が欲しい奴隷と同じ価値を持つ物を持ちより始められる。

 勝負の内容は多岐に渡り、殺し合いという殺伐としたものから硬貨の掴み取りという少し変わったものまで、双方が納得すればどんなものでも良いと決められている。

 片方が納得できなかったら話し合いで解決するしかなく、もし無理に我を通したら罰金を支払わなければならない。

 この女はその罰金――中銀貨一枚日本円でおよそ百万円――を簡単に支払えるだけの財産を持っているのだろう。罰金を支払う前に勝負が付けばその勝負は無効にならずに済む。

 罰金を払った後に一方的な要求の勝負をするのは難しく、双方きちんと話し合った上で勝負をしなさいと怒られる。

 ついでに一方的な要求二度目には金板を支払うことになる。日本円でおよそ百億円、前世でも現世でも見たことも触ったとこもないぞ。ヤバイ、貴族って頭おかしい。

 三度目には死が待っている。仏の顔も三度目には堪忍袋の緒が切れ真っ赤になるのだろう。勿論違反者の血で。


 奴隷勝負とは賭け事のような物だ。金を人に変えただけで本質は大人たちの汚い欲望で満ち満ちている。

 怪我をするのが怖い貴族たちは勝負とは関係のない奴隷を使って競わせる。それが普通の奴隷勝負。

 だから俺がいくら親友のためと言っても、自分の身で勝負をするのは貴族として恥ずかしい行為なのだ。


「大丈夫よ、貴方がどんなに悩もうと私の決定には逆らえないの。ほら、さっさと行くわよ! 本当に女々しい男……、うざいわね」

「お嬢様そのお言葉遣いはお止めください」


「……行きますよ、シューマ様」

「……あー、頭使うのはお前の仕事のはずだろ。アクナ」

「私はシューマ様がたくさん悩んでくださるだけで嬉しいのですよ。ほら、歩かないとまた転移魔法を使いますよ」

「それ苦手なんだって! わかったよ行くよ。で、なんとしても勝ってくるよ」

「ええ、今までそうしてきたのですから。これからもそうしてください」


 お兄ちゃんが下向いてちゃダメだもんな。

 次回、奴隷勝負!

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