四話 勇者のお勉強
――悪いことをした人間は後世で罪を償わければならない。
昔まだ魔族と俺たち人間が戦争をしていた時代の言葉だ。
国は勇者を身分問わず奴隷として戦場に出し、多くの犠牲を出した。奴隷だから、罪を償わなければいけないから、殺しても構わないと国中が思っていた。
なので戦争が終わり、一時的にだが魔族と友好を結んだとき、戦争で生き残った勇者を魔族に殺させた。
これで私たちは本当の友達だ、なんて言って笑顔で握手でもしたのだろう。
魔族よりも勇者の方が嫌われているのだ、昔も今も。
そんな腐った歴史を持つこの国の貴族には、何故だか勇者がたくさんいる。何代か前の王は刻印勇者だったらしい。
悪いことをした人間は後世で罪を償わければならない。もしかしたら腐った偉人たちが罪を償いに来ているのかもしれない。
幸いなことに俺の前世は違う世界の冴えない男だったし、罪に問われるようなことはしていない。
たまにそういう違う世界の記憶を持った勇者が生まれるのだが、大体は前世に工事現場で働いていたおっちゃんとか、大学試験を間近に控えた高校生などで罪に問われるようなこともしてこなかった人が多い。
だからだろうか、昔の国よりは勇者は悪だと言ってくる人は少なくなったし、社交場にも勇者がいたりする。
これは全て昔の勇者たちが頑張った証なのだと歴史の先生は言う。
「でもさ、そもそもなんで勇者を悪だと決めつけてんだろうな」
「魔法が使えるのなんてその時代魔族しかいなかったんですから仕方ないのでは?」
「うぇー、でもさぁ、普通魔法使える人間が生まれたら持て囃して煽てて魔王討伐に行かせた方が楽じゃない?」
「当時の魔法が使える人間は、大体混ざりものでしたからね。いくら少しとはいえ魔族の血が入った者を丁重に扱うのは嫌だったんでしょう」
「そういうもんかねぇ」
「人間なんてそんなもんですよ」
元王様が言うのならそうなんでしょうね。