三話 勇者の兄弟
――バキィ!
大量の地雷を踏んでしまう夢を見て飛び起きる。何だあれ、怖すぎるだろ。
「シューマ、聞いているのか? シューマ、シューマ!」
「ぅん? どうしたんだよ兄上」
「どうしたんだよじゃない、どうして下町なんかの市場に、一人で、ひとりで行ったのか聞いているんだ」
そう言いながらプンプンと怒る兄上。今年十八歳の童貞。
兄上は勇者ではないが将来父からこの家を継ぐことになっている長男であり、国の奴隷予備軍だ。好きな女のタイプは小さめな子と言っている犯罪者予備軍でもある。
「一人で行ったのは、ダメだったと思ってるよ。下町は奴隷商が隠れているっていうし……」
「なら何故だ!」
「だって見張りとかいたら、楽しめねぇじゃん!」
「た、確かに! だがダメなものは駄目だ。家のルールを守らん奴は明日から一週間外に出さないからな!」
兄上は少し頭の出来が悪いが、そこがいいと言ってくれる女性は大体兄上よりも年上だったりするのだ。
だから顔はいいのに童貞……、次男の兄貴は十二歳で捨てたと言っていたからな。兄貴はカッコいい超絶イケメンな脳筋だからっていうのもあるのだろうが、まあ兄貴の話は追々しよう。
「一週間外に出してもらわなくても俺は別にいいけど」
「シャァーナン様、乗馬の時間は外に出てもいいのでしょうか?」
兄上と親友が話を始めたので聞き流しながら食事を再開する。こちらでも食べながら話すのはマナー違反だ。前に兄貴とやったらデコピンで半殺しにされた。あのときは命の危機を感じたなぁ。
「では授業中は外に出ても言いということで」
「ああ、流石に授業を遅らせるわけにはいかないからな」
二人の話が終わったようだ。あとで部屋に戻ったときにでも親友に聞こう。
そして俺の食事も終わった。デザートは俺の買ってきたリカのパイだった。
「アクナ、シューマをちゃんと見張っていなさい」
「はい」
兄上も食べ終わったらしく、軽い挨拶を済ませて席を立つ。身分が上の者から部屋を出るのがマナーなのだ。
さてと、俺も部屋に戻るかと立ち上がりながら伸びをする。お腹がいっぱいで苦しい。