第06話「諏訪の國」
私は、独りになった。私を信仰していた者達は皆月に行ってしまった。独りになるのは、何万年ぶりだろうか……。
今は、旅をしている。てゐと大國主に別れを告げるため、手紙を送っておいた。顔を会わせたら、月読命たちを思い出してしまいそうだったから。
今の私は妖怪。神力が少くなれば妖力が表に出てくる。やはり私は長生きしているからなのか、妖力が多い。
森を歩けば、「大妖怪だ!」と言われ皆逃げていく。
最終的に力に自信がある者達だけが残った。
敵の種族は様々。
各それぞれの攻撃を仕掛けてきた。
しょうがないから闘う事にした。
妖力を少し出してから、私の周りの理を操る。
『空間』を広げ
『時間』を遅くし
『重力』を強くして
『五感』を鈍らせた
そして、紅い目で睨み『恐怖』を与えた…………
彼らからすれば、一瞬の出来事だっただろう。
急に周りが広くなり、身体が重くなった。
彼らは恐くなった。何よりも恐かったのは『赤い目』だっただろう。逃げ出そうにも身体が動かないのだ。
私は、私の周りの理を戻した。
彼らは、動けるようになり一安心したが、警戒もした。
私は闘いたくないので
「貴方たちに危害を加えに来たのではない」
と、言った。
「私は闘いたくない」
「た、闘いたくないだと!そんな強い力を持っていながら、闘いたくない……のか」
「しかし、我々はそなたに負けた。なすすべもなく負けた」
「私達は負けた。私達はどうすれば良い?」
「えー?なら、此処等に面白い所ない?」
「面白い所ですか……。なら、此処から東に行くと『諏訪の国』があります。そこには、二人の神が1つの社に祀られているとの噂を耳にしました。ど、どうでしょうか?」
「んー、じゃあそこに行こっかな~。そんじゃあ、じゃあね」
と、私は言いながら素早く逃げた。
彼等がどうなったかって?それは別の御話で……
そんでもって今は、『諏訪の国』の結界内の上空に居る。
諏訪の国には、意外と大きな湖があり、その湖をもスッポリと入る結界で囲まれている。
私は、社の近くの森に降りた。
すると、急に私の陰が消えた。消えたというより、違う陰が被さった。
私は横に跳ぶ。さっきまで私の居た所に長く大きな柱が刺さった。
やっぱり余所見はいけないね…。
私の背後からも柱が来た、気付くのが一瞬遅れたために「左肩から足」にかけて吹っ飛ばされた。周りには、私の血と肉がぐっちゃぐちゃに飛び散っている。
その血と肉がビチャビチャと音を発てながら私の方に戻っていく。
完全に身体が戻る頃、柱を飛ばしてきた張本人と目が付いた帽子をかぶったのが降りて来た。
二人からは神力を感じるから、噂の二人だろう。
柱を飛ばしてきた方が話し掛けてきた。
「あんたは此処に何の用だい?あんたから、微かだけど神力を感じるけどあんたは神だった者かい?」
「特に用事はない。一応今も神だよ。最近、信仰してた者達居なくなっちゃって神力が少ないだけ」
「なら、あんたは敵ではないんだね」
「敵ではないことは確かだよ」
「ならば私達の社に招待しようじゃないか!」
と言いながら、私を掴み連れ去られた。
連れ去られた先は、社。私の社の5、6倍はある大きさだった。
社の中で色々聞かれ話した。彼女の事も色々と分かった。
柱を飛ばしてきた方が『八坂神奈子』、
変な頭のが『洩矢諏訪子』。
私の『宇迦之御魂神』を言ったとたんに諏訪子が気絶して、神奈子は目を見開いたまま数秒動かなかった。
そんなに有名な名だとは知らなかった。
気絶した諏訪子を私の尻尾の上に寝かせといた。
することがないので私は神奈子と話している。
私の信仰していた者達が消えた事や、私の異常な再生の仕方について色々聞かれた。
酒が廻ったのか、凄い絡んで来た。かと思うと寝てしまった。
少し経ってから、姓を東風谷と名乗る巫女がやって来た。
他の二人をちゃんと寝かせるため、運ぶのを手伝った後私も寝た。
朝早く起きて、社の周りを散歩してから諏訪子たちに別れを告げ、私はまた旅に出た………。