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東方白狐録  作者: 白狐さぐじ
第1章 神話時代
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第05話「帰宅後と再会、月と別れ」

 てゐと別れてから、あの都市に帰った。

 都市は、私が旅に出たときよりも発展していた。

 私の神社と月読命(つくよみ)達のビル以外面影が感じられなかった。


 しかし私の帰る所は一つしかないので御倉神社に行くと、何故かスサノオが居た。

 居たというか、住んでた…。

 スサノオは、私を見るなり


「おお、やっと帰ったかミクラ!何処行ってたんだ?旅の話を聞かせろ。儂は今暇なんじゃ」


と、次々と聞いてきた。

 なんとなく『わかった』と返事すると、胡座(あぐら)をかいていたスサノオは私をひょいっと掴み膝の上に座らせた。

 座るしかなかった。

 それから旅に会った『面白い人間の話』や、『闇を操る妖怪の話』、『他の村の話』を話した。

 するとスサノオは、


「その面白い人間の名は大國主と言うか?」


と言ってきたので


「ん?そうだけど」


と私は返事した。


「そうか、やはりな。あやつがお前の事を話しておったからもしやと思ってのぅ」


「…で、その大國主がどうしたの?」


「ああ、あやつがお前に会いたいと言っておってな」


「私に?」


「そうじゃ。お前に久しく会いたいとな」


「ふーん、私に…」


「どうしたんじゃ?」


「明日行ってみようかな」


「そうか、場所は分かるか?」


「うん、知ってるよ。(てゐから聞いたんだけどね)」



それから、スサノオは私の頭を撫でながら『可愛いのぅ』とか言っていた。


 ところでこのスサノオ、意外とスケベ親父である。

 今も頭をなでらがら、私のそこそこある胸を触ろうとしてきた。

 (素早くその手を叩いたけど…)

 と、こんな風に変態親父である。


 さて寝るかと思い、寝床に行く。久方ぶりに狐に戻り、丸くなる。

 最近は、疲れがとれなかったので、すぐに眠ることが出来た。



 朝早く起きて、大國主の所に行く準備をする。

 スサノオは、昨日は此処に泊まったらしい(私はすぐ寝たから分からない)。

 で、スサノオは何か用事があるからと帰った。

 私は、走りやすい狐の姿になり、大國主の元に向かう為走った。



 大國主の居る都市に近くなった辺りで人型になる。

 狐の姿の尻尾は、九つ。

 それでは、妖怪と見られ退治の対象とされてしまうためである。

 そんなこんなで、都市に入った。

 都市の奥に一際大きな建物、たぶんそれが大國主の屋敷だろう。

 屋敷の門に、門番が二人。その内の一人が私に話し掛けた。


「何用で此処に来た」


「おほ…大國主に会いに来た」


「大國主様にか。ならば、会っても良いか確認するが、何か特定出来る名はあるか?」


「ミクラって言えば、たぶん分かるよ」


「ミクラか、わかった確認してくる」


と、言いながら一人は屋敷に入っていった。

 二、三分経った頃、門番の一人が戻ってきた。


「御許しが出た。ミクラ様どうぞ御入り下さい」


と言ったので、私は敷地内に入り、建物の中に入る。

 廊下の奥の大きな部屋に入ると、大國主は居た。

 大國主は、私を見るなり飛びついてきた。

 大國主を離してから、色々と話した。

 今悩んでいること、最近あった出来事など色々と…。

 それから、今日は此処に泊まった。



 朝早くに起きてから私は、この都市の中を散歩した。

 私の住んでる都市とは違い、何とも()()()だった。

 大國主の所で朝食を頂き、それから帰った。









 大國主と再会してから2、3年経った。

 最近は、暇潰しの一つとしてお面作りをしている。

 お面と言っても、作ったのは二つ程でどちらも狐の面。


「今日は」というか、ここ最近は、大國主の所に行っている。

 最近、月読命(つくよみ)達は忙しくて会う機会ない。

 理由は何となく知っているから、わざわざ会おうとは思わない。


 今日は、てゐが来ていた。

 てゐとは仲が良い方だと思っている。

 今、てゐが大國主に会うまでの話を聞いている。

『てゐは、海の向こうにある島で生まれたらしい。そこで数十年生き、その島を出る為に嘘をついた。ワニ(サメ)を騙して海を渡ったのだが、最後の最後に口を滑らして騙した事を言ってしまった。毛皮を剥がされて痛がって居たところを大國主に助けられた。』

と、こんな感じの話だった。

 大國主に助けられた時は、まだ獣の姿で人型にはなれていなかった。私と会う少し前に人型になったばかりだったみたいで、歩くのは慣れない行動だった為家に招いたのが真実。

 そういった秘話も聞けた。


 そんなことを話したり聞いたりしていると、廊下から足音が聞こえた。門番が小走りでやって来て、大國主と少し話すと、戻っていった。

 また、足音が聞こえたけど門番とは違う足音だった。

 足音の張本人は月読命(つくよみ)。何か難しそうな顔をして入って来た。


「お邪魔するよ」と言い私たちの前に座った。


「急ですまないが、我々は……今夜、此処の土地を離れることになった。行く場所は、『月』だ。そこで君たち、『因幡 てゐ』と『ミクラ』の二人はどうするか今、聞きに来た」


と言うと、てゐは聞き返した。


「え!?何で?どうするかって?」


「深い理由を言うことは出来ない。どうするかは、我々に付いてくるかどうかだ」


「大國主は、残るの?」


「儂は此処に残るが…?」


「じゃあ、私も此処に残る」


「てゐは此処に残るか。ミクラはどうする?」


「ん、私は………この『(地球)』で生まれたから、生まれたこの土地に残るよ」


「そうか、ミクラは何故だか知らないが私たちが此処を離れる理由を知ってるようだな」


「まあ、何となくだけどね」


「ふむ、二人は残るのか。ならばこれで会うのは最後かもしれないな。

最後に言う言葉が思い付かないな。ならば『さようなら』と言うしかないな」


「貴方と会った回数は少なかったけど、この『因幡 てゐ』から最後に貴方に幸運が訪れるを願うよ」


「私から言うことは『また会えたら』としか言えないよ。

月読命(つくよみ)と会ってから結構経つけど、こうやって話すことはなかったらな~。

私は月読命(つくよみ)たちに会えて嬉しかったよ!」


「ああ、ありがとう。会うことがあるか分からないが、また会えたら良いな。

では、私はそろそろ戻らなければならないのでな……。さよなら」



 夜になって外に出て空を見ていた。

 すると、数隻の巨大な舟が月に向かって飛んでいった。

 私は、死なない。いつの日か会えたら……



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