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東方白狐録  作者: 白狐さぐじ
第1章 神話時代
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第04話 「暇潰しの旅」

 不老不死となった私の歳は、今では200万以上になっている。

 今、私は旅に出ている途中。

 あの都市に居ても暇なため、近くにある村を転々としている。



 此処は、海沿いの道。

 今は丑三つ時。

 つい先程、大勢の人達がぞろぞろと歩きながら私の前を通りすぎてった。

 私の前と言っても、あいつらから私は見えていない。

 私は空間を操り、『私からあいつらを見えても、あいつらから私は見えない空間』を作り、その中に居た。

 今は外に出ている。

 また誰かが来たが、今回は一人だけだった。

 彼は私に気づき、私に九本の尻尾があることから妖怪だと分かると警戒した。


「妖怪が俺に何のようだ!」


「何って、私は何もしないよ」


「何もしない理由みたいなものはあるのか?」


「まあ、今は神様だから人間を襲わないだけ」


「神様か、これは失礼した。私は、大己貴命(おほなむち)と言う者だ。今は、ちょっと用事で旅をしている途中だ」


「へぇー。私は、ミクラ。神の名は、宇迦之御魂神。暇だから旅をしてるだけ」


 二人でよろしくと言うと、大己貴命の腹の虫が鳴った。

 私は、りんごの木を生やし、りんごを実らせた。

 そのりんごを大己貴命に渡した。

 大己貴命は、木を生やした事を驚きながらもりんごをかじった。

 『甘い!』とか『美味しい!』とか言いながら食べていた。

 それを見ながら、私も食べる。


「穀物の神様は、こんなことも出来るのか」


「正確に言うと私は、自然の神様。自然は操れるよ」


「自然の神様か。それは凄いな」


「そんな事よりそろそろ寝た方がいいんじゃないの?私が見張ってあげるよ?」


「おお!そうか、ありがたい。ならば、何か礼をしなければ…」


「しなくていいよ。神様の私に、普通に接してくれただけでも良かったから」


「そうか…。なら早速寝させてもらう」


と、彼は言いながら寝始めた。


 寝息が聞こえてきた。

 (こいつ、私が神様だと言えば直ぐ信じるし、見張ってやるって言っても信じるけど大丈夫かな。)

 まあ、他の妖怪は私の神力で近寄れないからいいけど。


「さて、私も結界を張って寝るとするかな」


『狐の姿で寝ようかな』と思ったが朝起きた大己貴命に驚かれるのはめんどくさいのでやめといた。





 誰かに頭を撫でられてる事に気づき、目を開けた。

 まず最初に見たのは、大己貴命の顔。

 次に自分の格好と状態を考えた。

 (えーと、私の頭は大己貴命の膝の上……膝!?)

 考え出した結論で顔がどんどん赤くなっていく。

 動きたいにも動けない。

 大己貴命が急に下を向いたので、目が合ってしまった。

 私は目を反らすと、


「ん?起きてたのか」


と、言われたので頷き、起き上がった。


「おお、すまんな。神様だと分かっていても、寝顔が可愛くて…ついな」


 ハッハッハッと笑っているが、私は初めてのことなので恥ずかしい…。



 そんなことより、今は朝。

 昨日のりんごの木に、また実を実らせ、大己貴命に渡し私は私の分をかじった。

 長く生きてきたが、やはり食事は楽しいものだ…。


 食べ終わると残るりんごの芯。

 昨日の分と今日の分を一ヵ所に集める。其処らにある土を一握り掴み、その土をりんごの芯に少しずつかける。

 すると、土が掛かった部分は地面と同じ土に変わった。

 これは、自然を司るからこそ?出来ること。

 りんごの芯をそのままほっといても土に還るが、虫が湧いたりするから私の能力で素早く土に戻す。


 そのあとは、大己貴命と少し話し『また会えたら会おう』と言い別れた。







 大己貴命(おほなむち)と別れてから1日経った。

 今は夕方のはず。

 森の中を歩いていたが、今私の周りは夜のように真っ暗だ。

 闇に覆われていて、全く見えない。

 何が何処にあるのか、私は何処に居るのかも分からない。

 分かってあるのは、これが妖怪がやっている事だけ。

 この暗闇から妖力を感じる。

 能力を使い、私の少し周りの闇を消す。

 足元には、人骨がごろごろと転がっていた。

 少し進むと、村だったのか、潰れた家を数個見つけた。



 急にドサっと上半身が地面に落ち、びっくりしたが直ぐ再生されるので気にしない。

 しかし、私を切り裂いた張本人は、甲高い声で叫びながら木の影に隠れた。

 それと、同時に周りの闇は消えた。

 木の影に隠れた妖怪は、髪が金で私より背が高かった。

 私の再生が終わる頃に、


「あああ、あんた何者よ!」


「ん?私は妖怪だよ」


「そんなの分かってるわ!何その再生力、あんたの名は?何の妖怪なの?」


「相手に名を聞くんなら、自分の名を言ってからじゃないの?」


「分かったわよ。私はルーミア。私はこれでも4000年は、生きてるわ。さっきは、闇を操る程度の能力を使って、襲おうと思ってたけど…」


「へー、闇ね…。私はミクラ。妖狐だよ。目が赤いのと、毛が白いのは生まれつき。貴女よりは長生きだよ」


「ミクラね、よろしく。ボソボソ(ミクラって私より長生きなのね。)というか、さっきの再生力は何?」


「私は不老不死だからだよ。死なないから長生き。そもそも生きてるのかな…」


「死なないのね…」


「…うん。ルーミアって此処の…村の人達食べたの?」


「ええ、そうよ。最近食べれる人間が少なくなってるからね。ミクラは人間食べないの?」


「私これでも神様やってるから、最近は食べてないな~」


「神様!?」


「大丈夫だよ。私は滅多に妖怪は殺らないから」


「そ、そうなの」


と、まあそんな感じに話した。

 2ヶ月程ルーミアと過ごした。

 (暇だったから……)

 ルーミアは、ずっと独りだったらしい。私と話せてうれしいみたいで素の笑顔を見ることが出来た。





 今、私はあの都市に帰るため近道をしたのだが、竹林で道に迷っている。

 周りを見ても竹が同じように生えている。

 もと来た道にも戻れない。

 でも、近くに妖怪が居るのか妖力を感じる。

 妖力のある方に向かうと、潰れかけた家があったのだが、何故かウサギが多くいた。

 そのウサギの内、人型は一人しかいない。

 その一人が私に気付き他のウサギを避難させ、驚いたことに神力を発しながら近づいてきた。


「妖狐が私達に何の用だい?」


「私はこれでも神様だよ」


と、言いながら神力を出す。


「あれれ、あんたも神様なんだ。えーっと、私は『因幡 てゐ』。白兎神だよ」


「私はミクラ。宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)よ」


「え!?宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)って、あの宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)?これは、驚いた。私より歳上じゃないか」


「そんなに有名かな…?」


「大國主が言ってたから」


「大國主?」


「あれ~?・・あ!大己貴命(おほなむち)なら分かる?」


「ん?知ってるよ。それが?」


大己貴命(おほなむち)の今の名前が大國主だよ」


「だから私の事、知ってたのか…」


「うん。というか、此処で話すより私達の住んでる家で話そうよ」


「え、良いの?」


「もちろんだよ。ほら、入って入って」


と、言われたので家の中に入った。

 家の中は、ウサギがいっぱい居た。

 今の私は、尻尾と耳を出したまま。

 座ると、尻尾を触ったり、乗ったりしてきた。

 てゐは、触って良いかと、聞いてきたので良いよと返事をすると触ってきた。


 そのあとは、此処に来るまでの事など色々と話し、今日はこの家に泊まった。


 次の日、てゐと他のウサギに別れを告げ、久し振りにあの都市に帰るため向かった…。



また読んでいただければ幸いです

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