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WANDERER2  作者: 北乃銀杏
赤の帝国編
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敵勢力圏からの脱出。その8

メインモニターにはアキヤマの姿が大きく映し出されていた。


それを眺める人々の様々な思惑をよそに会話が始まった。



「これはこれは、閣下。小官の如き若輩者に御用がおありとは、どのような風の吹き回しでありましょうか?」



口の端を少し上げたにやけ顔でアキヤマが口火を切った。



「アキヤマ。実はお前にお願いと言うか、任務があるのだが。」


「ほう。しかしながら、閣下。私には何故か既に異能の力は無くなっておりましてな。今はただの人でありますゆえ、お役にたてることがあるとは思えませんがね。」


「いや、Will Diverの能力は必要ないんだ。現在その宇宙船に残留させている艦隊の指揮を執ってもらいたいのだ。お前にとって最も最適な任務なのだろう?」



これには、さすがのアキヤマも驚きを隠せない表情であった。



「…イズミ。君は私を信用すると言うのか?その艦隊を利用して、またクーデターを起こすかもしれんぞ?」


「信用…か。ある意味信用しているよ。お前は戦いを欲しているのであろう?それが満たされている限りは裏切らないだろうよ。もっとも、その艦隊の者たちがお前のクーデターに加担するとは到底思えないしね。」


「ふふ、その通りかもしれんな。なるほど利害が一致しているというわけだな。しかも私を起用すると言う事は、相当深刻な状況なのであろうな。いいだろう。詳細を聴こうか。」




現在の母艦及び遠征艦隊の状況や、母艦に迫りつつある敵の大艦隊の状況等を簡潔にまとめて説明した。


説明している最中、アキヤマは自分の顎に手を添え物思いにふけっているように目を閉じて聴いていた。



さらに中将待遇で宇宙艦隊に招喚し、残留艦隊1万隻の全権と宇宙防衛軍の情報を閲覧する権限を与える旨を伝えた。




「お任せあれ。」


先ほどとはうって変わって、引き締まった表情で敬礼をしつつアキヤマが応えた。





☆☆ ☆☆ ☆☆




星々が煌めく暗黒の大海原。


その中を最大戦速にて進む艦隊。


その小さな粒のような艦船一つ一つに、そこに乗船する多くの者たちの様々な思念が交錯している。


しかし、それらを包む広大な空間は全てを飲み込み静寂を繕っているかのようであった。




「閣下。アキヤマ…中将は、信用に値する人物なのでしょうか?」


「ふむ。俺はある意味信用している。君たち参謀を信用しているようにね。」


「閣下。トイバタ大佐の懸念は私も同感でありますぞ。我々としましても、閣下を信用しているからこそ今回の件に同意しただけのことであります。」


「ああ、すまない。別に茶化しているわけではないのだよ。この「信用」と言うものを可視化させて証明する手段がないもので、最も信用している君たちを引用して言ったまでなんだよ。何と言うか…俺の直感と言うか、奴の事は俺が一番知っているものでな。」


「左様でありましたか。しかし、私的にも戦史に数々の栄光を刻んで来られた、あのアキヤマ中将の戦いぶりと言うものを、実際この目で見てみたいとの思いも同時にあります。」


「ふむ。その点においては私も同感ではありますな。」


「今回は選択肢があまりなかったのでアキヤマに賭けてみようではないか。それよりも次のワープ可能宙域までは、どのくらいの時間がかかりそうだい?」


「はっ!日付が変わるころには、全艦ワープ態勢に入れる見込みであります。」


「先ほど入りました情報によりますと、敵艦隊と母艦との予想される接触日時は最短で3日程との事でありました。我が艦隊も限界に近い速度で進んでおりますが、およそ5日程かかる見込みであります。」


「この2日間をアキヤマが持ちこたえてくれればいいのだが…もっとも、母艦自体の防衛力も相当なものであるから大丈夫とは思うのだが。」




俺は、母艦に残して来ているボタンやコマチ姉さん、そして多くの仲間の事を思い描き、今後の方針について思いを馳せていた。




☆☆ ☆☆ ☆☆




2回目のワープを終え、再び艦列を整え前進を開始して数時間後、全艦にけたたましく警報が鳴り響いた。



「何事か!?」


「閣下。先ほど敵艦隊を捕捉いたしました。我が艦隊の10時方向で距離は約10光秒。およそ1万5千隻ほどの艦隊であります。」



俺は歯噛みをしながら苛立ちを隠せないでいた。



「閣下。ここは敵艦隊の眼前に機雷群を撒き、これを無視して先を急ぎますか?」



そんな様子を察したのか、トイバタ大佐は消極案を提示してきた。


俺は深く呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。



「いや、ここで躱しても意味がない。それどころか後ほど後背を脅かされる恐れもある。この場で迎え撃とう。ナグモ、タカハシ両提督の旗艦に回線を繋いでくれ。」



赤く点滅する警告灯とけたたましく鳴り響く警報の中、各部署で各人がせわしなく動き、そして緊張していた。



再びこの静寂の空間の一画に変化が生じようとしていた。




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