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WANDERER2  作者: 北乃銀杏
赤の帝国編
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敵勢力圏からの脱出。その6

両軍とも激しく主砲を撃ちあい、眩いばかりの閃光を放ち始めた。


こちらの盾を務める艦の強化されたシールドは、敵の集中砲火にも良く耐えていた。


逆に寡兵ながらも敵の防御陣を少しずつ崩し始めていた。



「閣下。ここまでは上々でありますな。しかし、敵もこのまま手をこまねいてばかりもおりますまい。」


「そうだね。カミ大佐。君が敵の司令官ならどう攻めるかね?実のところこちらとしても相手に動いてもらわないと打つ手がないのも事実なんだ。」


「私なら…そうですな。数の利を生かし別働隊を組んで相手の左右、もしくは上下を脅かすでしょうか。」


「なるほど。そうされると俺たちはピンチだね。トイバタ大佐ならどうするかね?」


「私なら、一旦後退して艦隊を3つに分けて中央を囮に左右から挟撃でしょうか。」


「おっと、それは一大事だな。今度はこちらの司令官となって、それぞれの対策案を考えてみてくれないか?」


「では、私から。敵から別働隊が出てきたら、正面の盾艦をそのままに後方の部隊の総力にてその別働隊を叩くでしょうな。」


「うんうん。なるほど。正面の盾は意外と役に立つね。」


「次は私ですね。3方向に分かれて向かってくる敵に対して、盾艦の艦列を2つに割って、それぞれ左右に振り分け挟撃を防ぎます。しかる後に中央の艦隊で正面の敵に突撃を敢行致します。」


「おお。ここでも盾艦大活躍だな。君たちが優秀で俺も助かるよ。」


「閣下におかれましても、何かお考えがあるのでしょう?」


「あるにはあるのだがね…君たちがほとんど言ってしまったんだよ。後はそれら以外の敵の戦法については、盾艦の活用の応用をするまでさ。」





☆☆ ☆☆ ☆☆




「閣下。前線の盾艦部隊から入電です。シールドを保つためのエネルギー出力がそろそろ限界に達するとのことであります。」


オペレーターがこちらに振り向き報告してきた。


「かねてからの計画通り、盾艦部隊を入れ替える。迅速に陣の再構築を行うように伝えてくれ。」



「閣下。そろそろ敵も焦れてきている事でしょう。この機に何かしらの行動に出てくるやもしれません。」


「承知しているよ。寧ろこの時を待っていたのさ。おおいに敵を釣ってやろうではないか。」





こちらの前線が動き出したのを確認した敵の艦隊は、これを好機とばかりに中央の部隊を突出させてきた。


こちらの前線に砲火が集中し始めた。



「この程度では前線は乱れはしないが、想定外に正攻法で来るもんだな。これも敵の矜持と言うものなのだろうか?」


「ふむ。司令官としての矜持は称賛に値するかもしれませんが…付き従う兵士たちは気の毒でもありますね。」


「まあね。でも、俺たちはこれも利用しないと勝てないから仕方がない。前線には敵の砲撃にて混乱してるように演じてもらうことにしよう。」



敵の砲撃により、こちらの前線の艦列に乱れが生じ始めた。


それに勢いづいた敵の中央艦隊は、尚も突入してくる。



前線は左右に分断された形になった。



目の上のたんこぶであった盾艦の前線をようやく突破した敵艦隊は愕然とした。



そこに存在するはずのこちらの中央軍の姿が無く、眼前にはただただ広大な暗黒の空間が広がっているのみであった。




左右に分断されたように演じていた前線と共に、本隊も左右に分かれて移動していたのであった。



敵の中央軍は、完全に敵中に孤立する形となり左右から挟撃される状態に陥ったのである。




「よし。全艦によーく狙って砲撃を開始するように伝達してくれ。」


「はっ!」



左右から一斉に砲撃を受けた敵の中央軍は、総崩れとなった。


左右の両翼も中央軍を救わんと前進してきたが、盾艦とその隙間から砲撃する狙撃部隊により阻まれていた。




「それにしても、敵は先ほど君たちの提案していた攻撃とずいぶん違った選択をしてくれたもんだね。」


「はい。私もそれを考えておりました。敵はあくまで数で劣る我々に対して小細工を弄することを嫌ったのでしょうか?」


「そうなると、やはりそれが相手方の司令官の矜持なのか、それとも相手の国全体における思想的なものなのかが気になるところだね。」


「そうですな。国全体の思想的なものでしたら、これからも少しは楽になるのでしょうかね?」


「ずっとそうなら、そうだろうけど。価値観の違う相手と知れば途端にその思想も隅に追いやられることになるかもだがね。」




眼前で総崩れになっている敵の艦隊を見つめながら、俺は一抹の不安を抱えていた。




この状況下においても、奥に控えている敵の3つの艦隊は動こうとはしなかった。


やがて敵中央軍からの組織的な抵抗が止んできたのをきっかけに、俺は敵司令官に対して相手国の言語で降伏勧告を行った。



しかし、敵の司令官はそれを是とせず自決をしたのであった。


重ねて、司令官を失った敵の残存艦隊に武装解除の後にこの空域からの撤退を申し入れた。


残存艦隊は、その申し入れを受けて撤退を開始し始めた。



ただ前方の3つの艦隊は、臨戦態勢を保ったままこちらに向かって前進を開始した。




「他の司令官も撤退を是としないようだね。」


俺はため息をつきながら頭を抱えた。


「もしかしますと、先ほど司令官不在になった途端にすんなりと撤退しましたので…司令官と言う立場での何かしらの軍規のようなものが存在するのかもしれませんね。」


「ああ、十分に考えられるね。」



俺は徹底抗戦を覚悟した。



――本当は一刻も早くナグモ艦隊を救出して帰投したいのだが…

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