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WANDERER2  作者: 北乃銀杏
赤の帝国編
3/15

敵勢力圏からの脱出。その3

2回目のワープを終え、警戒態勢のまま次のワープポイントを目指した。


あらゆる方向に無人偵察機を飛ばしつつ、兵たちには交代で休息をとらせていた。



そんな中、俺はいつものように二人の参謀との会話に興じていた。


「閣下は「Will Diver」と呼ばれる能力者と聞き及んでおりますが、どのような能力なのでしょうか?」


「ああ、それね。一種の錬金術のようなものさ。頭で思い描いたものを周りにある物質を用いて創造することが出来るんだ。」


俺は掌に1本のペンを創って見せた。


「おお…」


二人の参謀は驚き思わず声が漏れた。


「これは便利なものでありますな。学生時代の私にもこの能力があったなら、忘れ物をして叱られる回数が減ったでありましょうな。」



「それはそうと、閣下。ここは我々に任せてお休みになられてはいかがですか?」


「ああ、そうさせてもらうよ。君たちも交代で休んでくれよ。」



俺はそう言いながら「指令室」を出て、自室に向かった。

とは言っても、指令室の目の前の部屋が司令官室であったのだが。




「トイバタ大佐。閣下は見かけは十代の青年のように見えるのだが…本当に数百年も生きてこられた方なのだろうか?」


「そう聞き及んでおります。なんでも母艦で共に生活をしているプラエタリタ人の持っている不老の遺伝子を合成し、移植に成功した方らしい。」


「ふむ。不老不死とは羨ましいとは思わんかね?トイバタ大佐。」


「…私は、遠慮しておきましょう。人生を楽しく感じるのは、人生が有限であるからに他ならないと小官は考えておりますので。」


「そんなものかね。まあ確かに、無限に明日というものがあれば、私なら物事をずっと先送りにしてサボってしまいそうではあるな。」





☆☆ ☆☆ ☆☆




「進行方向に展開させている偵察機のレーダーに感ありです。」


日付が変わってしばらくたった時、オペレーターが何かを察知したようであった。


「よし。映像を出せるかい?」


「はっ!映像をだします!」



メインの巨大モニターに、無数の船の残骸が映し出された。



「赤い船の残骸と黒い船の残骸…間違いない、ナグモ艦隊はこの宙域で敵と戦闘を行ったようだ。」


「そのようですね。船体側面の識別ナンバーを見ましても、ナグモ艦隊所属の艦艇のものですね。数から察っしますと、ナグモ艦隊の優勢で戦闘が行われた感じでありましょうか?」


「そんな感じですな。この残骸の跡を辿っていけば、何かしらが掴めるやもしれませんな。」




俺は艦隊の速度を落とさせて、前方宙域の索敵を密にさせた。


すると、ある地点で両軍の残骸の数が一気に増えていた。

いや、黒い残骸の数がおびただしくなっているとの表現の方が正確であろうか。



「敵艦隊を追撃していたら、あそこの小惑星帯で待ち伏せていた敵艦隊に不意を突かれた―と言ったとこだろうか…多分ここで一気に崩れて後退したのだろう。」


「なるほど。そう言われてみれば、そうかもしれませんね。」



「閣下。さらに前方5光秒の位置に巨大な要塞化された小惑星があります。どうやら敵の補給基地のようなものの様であります。」


オペレーターが淡々と報告してくる。



「なるほど、これをナグモ元帥は察知したのだな。」


「閣下。敵方に動きがみられません。我々を未だ察知できていないのではありませんか?一気に攻撃を仕掛け後顧の憂いを断つのが上策かと。」


「俺もそれを考えていた。しかし、ナグモ艦隊との会戦の様子から察するに、敵の索敵網はかなり優秀かもしれない。我々の事を察知してはいるが動けない状況と考えてみたら…どう思う?トイバタ大佐。」


「はい。閣下の御懸念もっともと思われます。しかし、ここはカミ大佐の進言にも一理ありとも考えます。」


「ほう。ではどうする事が上策と君は考えるかね?」


「ここは分艦隊を使い、敵の基地を攻撃させましょう。我々本隊はナグモ艦隊救援に急ぐのです。」


「分艦隊だけでは不測の事態に対応できないのではないか?」


「はい。小官が思いますに、この方面の艦隊及び基地の駐留艦隊は、ナグモ艦隊追撃の為不在なのでは?と。もし待ち構えていましても高速艇で分艦隊を組織させれば損害なく転進できるものと考えます。なにより偵察機からの情報を頼りに進軍しますれば、大丈夫と判断いたしました。」


「なるほど。よろしい。やってみよう。後顧の憂いが取り除けるのであれば、これに越したことはない。タカハシ中将に連絡を。」


「はっ!」



タカハシ中将は、タカサゴ ハクのことである。

過去の宇宙軍元帥・高橋柏正をオリジナルにもつ彼は、現在宇宙軍中将として従軍していたのである。




「…以上のような作戦である。君の奮闘に期待するものである。」


「フユ。任せとけって!」


「こら。ここでは閣下と呼べよ。ハク。」


「アイアイサー!大将閣下殿!」



タカハシ中将の姿がモニターから消え、俺は大きなため息をついて二人の方に向き直った。


「ああ見えて優秀な司令官なので、安心したまえよ。」



二人はクスクス笑いながら敬礼をした。




この宙域で分艦隊と分かれ、本隊は一路次のワープ地点へと急いだ。

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