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WANDERER2  作者: 北乃銀杏
赤の帝国編
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束の間の休息。その2

休暇を終えた俺は、参謀2人を伴ってアキヤマのいる「宇宙防衛軍総司令本部」に向かっていた。


そこには俺自身の執務室もあるので、登庁しているだけと言われればその通りなのだが…


アキヤマは、そこの地下にあるゲストルームと言う名の牢獄にいるのである。


牢獄と言っても、設備は整っておりちょっとしたホテルのスイートルームのような感じであった。監視を兼ねた世話係も複数人ついていて、何不自由なく生活できているようになっている。


とはいえ、未だ戦犯扱いなので自由な外出の許可はおりないのであった。


しかし、この前の戦闘指揮が実に見事であったようで、アキヤマの傘下で働いた士官からも世話係の士官からも羨望の眼差しで見つめられ、本当に何不自由なく暮らしているようである。


カミ大佐もトイバタ大佐もうっすらと緊張の面持ちであった。



係りの者に案内され、アキヤマの居住区に入った。


豪華と言うほどではないが、品のいい感じの調度品がバランス良く配置され、居住者の性格を表すように整然と整えられていてとても綺麗に掃除も行き届いている様子であった。



「よう。イズミ。よく来たね。何もないところだが…お連れの諸君も遠慮なく上がってくれたまえ。」


参謀の2人は直立で敬礼をしていた。


「おいおい。君たち、こいつは英雄である前に犯罪者だぞ。」


俺は悪戯っぽくそう言うと、アキヤマの正面のソファーに腰を掛けた。


「お前はひどい奴だな。犯罪者である前に英雄であると言ってくれ。ささ、君たちもお掛けなさい。」


促されるままに2人は席についた。


間もなく世話係の士官たちが、飲み物とお茶受けのお菓子をもって来てテーブルの上にそれぞれ並べ始めた。



「この前の会戦の話を聴きに来たであろう?」


出された紅茶の香りを堪能しながらアキヤマが切り出してきた。


「相変わらず話が早いな。その通りなんだ。ご教授頂こうと思って参謀2人を引き連れまかり越したのさ。」


素直な所は昔と変わらんなと、口の端で笑いながらアキヤマが語り始めた。



「正直、今回の会戦については、私自身特に策も自信もなかったんだ。そらそうだよな。数世紀にわたって艦隊の提督から遠ざけられていたのだからな。」


「こちらの艦隊の主装備や敵の情報と、何から何まで未知数だったものでな。しかし幸いにも2日程の猶予があったので、その間に頭に詰め込めるモノは詰め込んださ。」


「しかし、知れば知るほど調べれば調べるほど絶望的な状況って事は把握できた。特にあの宙域では遮蔽物の類もほとんどなくて、おまけに宇宙潮流の類のようなうねりも無く穏やかだったしね。」


「だが私は危機的状況って奴が嫌いではないんだよ。寧ろ頭が冴えると言うか、いいアイデアが次々と浮かんでくるんだ。そこで目を付けたのがレールガンさ。」



ほうほう!と俺たちは身を乗り出さんばかりに聞き入っていた。


「やはり敵の懐に急襲して近接戦闘にて、シールドの効かない物理攻撃のレールガンで蹴散らしたのでありましょうか!?」


興奮のあまりカミ大佐はおもわず質問していた。



「いやいや。それが出来る状況ならそうしただろうがね。先ほども言った通り見晴らしが良すぎるあの宙域では奇襲のような真似は出来ないよ。超短ワープも私なりに考えてみたのだが、なんせデータが無さ過ぎて実行できなかったんだ。」


「レールガンは秒速約7キロの速度。マッハでいえば20を超えるほどの速度で噴出される。通常兵器としては驚異的な速さなわけだが、君たちも知っている通りこの宇宙空間は広すぎて、まさに近接戦闘専用のサブウエポンに成り下がっている。ビーム兵器主体となっている今日の射程は約60万キロと言ったところだね。約2光秒の距離さ。」


「そんな距離から発射したとしても約24時間程かかる計算になるんだ。これではとても兵器としての利用価値はない。そこで発想の転換って訳だが…」



俺たちは、ゴクリと固唾を飲みこんだ。



「射程距離の大分手前からレールガンを撃つ隊を決めて、それぞれ決められた座標に向かって連続射撃をさせたんだ。当然、それが当たるわけもないのだが…ただ、敵をこちらの思惑通りに誘導する事には成功したんだよ。要するに網を張ったのさ。」


「敵艦隊を宇宙空間の中で右往左往させ、分断を図りながらこちらの射程に誘導したんだが、これが面白いようにうまくいったって訳さ。膨大な量の情報計算で旗艦のコンピューターシステムが熱暴走寸前だったけどね。」


特に誇る様子も無く、と言っても謙虚にも見えない淡々とした様子で話が進んでいった。


俺たちは驚くと言うより関心の方が強く、逆に自分ならそう出来たであろうか―と空しい自問を繰り返すばかりであった。


既存の兵器も含めたシステムをこういった形で―しかもあのような状況下で…

発想力やアレンジなどという言葉では言い表すことが出来ない実行力と瞬時の判断力…


俺は改めて「こいつには敵わない。」と思い知らされた。


ふと脇を見やると、それ以上に打ちひしがれた様子の参謀達がいた。



とは言え、収穫は十二分にあったような気がする。


アキヤマに礼を言って、俺たちは部屋を後にした。

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