お疲れ様でした。
最・終・回!!
「魔力を受け継いだのは妹の方ですって……」
「あら……可哀想に。折角先に生まれたのに、跡取りになる可能性が無くなってしまったのね」
「そう、本当に……って、あら! まぁ、その……失礼しますわ。おほほほほ」
……これで何回目だろう。パーティーが開かれるたびに、いや、村中であたしの噂を聞く。
元々跡取りになる気はなかったから、別に魔力が無くたって構わない。
ただ、こう行く先々で噂を聞くのは……良い気分では無い。
「はぁ。冒険者にでもなるかな」
誰も聞いてないだろうが呟いてみる。魔力が無いと分かった時点で親にはよく思われていないし、私自身この家に未練も何もない。
そうと決めたら私は早い。早速自分の部屋に行き、旅支度を済ませた。そして、こっそり窓から抜け出す。
私が居なくても両親は気にしないだろうし、妹は頭が良いからきっと理解してくれる。
「……さあ、これで自由だぞ」
今まで私を縛り付けていた何かから解放された気がした。いや、元々縛り付けるものなど無かったのだ。
「……行こう」
私は、歩き出した。遠くを目指して。
~~~~~
その光景を見届けた僕は、気が付いたら元の部屋に戻っていました。そこにはノエルさんもいて、僕らは無言で見つめあっていました。
しばらくして、僕は沈黙に耐え切れなくなって切り出しました。
「ノエルさん……」
「……リルハ……」
「どうしましょう。今までずっとギャグ(?)路線だったのに、急にシリアスになっちゃいましたよ。どうしたらこの重い雰囲気壊せますかね?」
「安心しろ。その発言でぶっ壊れたから」
そういえばこういう奴だったとでも言うかのように、ノエルさんは頭に手を当ててため息をついてます。
「少しでもお前を凄いと思った私が馬鹿だった」
「む、何か失礼ですね」
「それで、契約は解けたのかね?」
あ、仙人さん。忘れてました。
「うーん……あんまり変わってない気がしますけど」
「あたしもだ」
「ふむ、失敗だな!」
「「えぇっ!?」」
「絆が足りんという事だ。これからも絆を深めたまえ」
「えぇ……」
「ここまで来た意味……」
僕らは仙人さんにお礼を言って、魔王城への帰路につきました。
「ったく、結局まだお前と一緒なのか」
「そうですねえ。僕は結構嬉しいですよ。今回の旅も、なんだかんだ言って楽しかったですしね」
「……そうだな。じゃあ、改めて」
ノエルさんは僕に向き合って、手を差し出しました。
「よろしく、リルハ」
僕は笑顔で、
「こちらこそ!」
って、言いました。
—————あれから数十年。
最近、ノエルさんは床に伏したままです。
……寿命が近いのでしょう。魔王になったとは言っても、元は人間ですから。
僕は聖剣だから寿命は来ませんけどねっ☆
…………
「寂しくなります。ノエルさんが居てくれないと、僕誰にも使ってもらえないじゃないですか」
「新しい……奴を、探せばいいだろう」
「そう簡単にはいかないんですよ。僕にだって相性とか好みとかありますし」
「そういう……もんか」
「ええ、そういうもんです」
「……」
「……」
「……ねぇ、ノエルさん。僕、あなたにあえて良かったですよ。人使い荒いしガサツだしたまに喧嘩もしたし……でも、楽しかったですよ」
ノエルさんはふっと笑った。
「そう……か。それはよかっ、た……」
「! ノエルさんっ!?」
「……」
「……っ、ノエル、さん……」
「おやすみなさい」
大切な人が居なくなるのって、こんなに悲しかったっけな。
「……あれ、リルハさんどこ行くんです?」
「んー? ちょっと休憩してくるよ」
「え、でもそっちは……」
地下へと続く長い階段をゆっくりと降りて行く。最下層にあるのは、使われなくなった魔道具やガラクタがしまわれている倉庫です。
僕には丁度いい。
「よっこいしょーっと。ちょっと埃っぽいかなあ? まあいっか」
次に誰かが僕を見つけるまで、僕もゆっくり休むとしますか!
壁に持たれて目を閉じる。何故でしょう、ノエルさんが見えました。お別れでも言いに来たんでしょうかね?
「……もし、また誰かに拾われるとしたら。ノエルさんのような人だと良いなあ」
そう言うとノエルさんは、今まで見たことが無いような笑顔で言ってきました。
『ありがとう』
って。もう涙腺崩壊ですよね!
「こちらこそ、ありがとうですよ……」
もう二度とノエルさんに会う事も無いだろうけど、ノエルさんがいたから僕はここに来れた。楽しい時間を過ごせた。
だから、もう一度そんな時間が来るまで、僕は大人しく眠ってますよ。
「……おやすみなさーい!」
長かったけど、短かった。
……次は、どんな人が僕を使ってくれるかな?
楽しみに、待ってよう。
聖剣、はじめました
遂に完結です!!
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
大分間が開いてしまいましたが……忙しかったんです……お待たせしてしまって本当に申し訳ないです……
短編から始まった話ですが、これで本当にお終いです。
最後にもう一度、
本当にありがとうございました!!!