第9話 「のどかな?一時。新たなる旅立ちの門出」
「なあ、加賀瑠璃よぉ」
コトッ。
「何だ」
コトッ。
「そろそろ飽きて来ないか?」
コトッ。
「何がだ?」
コトッ。
「何がじゃねぇ!お前が俺の城に来てからというもの、まぁ丸3日間、何で不眠不休でチェス打ち続けなきゃなんねぇんだぁぁぁ!」
神実の森の死闘から5日がたった。1日目は森から城に戻るのに費やし。2日目は加賀瑠璃からこの世界でのことを詳しく説明してもらうのに費やし。その後の3日間は、まぁ、チェスに費やしていたわけだが。よほどのゲーム好きの今鶴でも、流石にこたえたらしい。
「仕方がないだろう。お前がゲームをしたいと言ったから…………チェック。」
「誰も丸3日間チェス打ち続けたいとは言ってないですがね……なめんな!チェックメイト」
「…………ふむ。これで連戦連敗か。何回ぐらい戦ったよ?」
「そうだな〜。500は越えたんじゃないか〜?」
「それにしても今鶴には勝てんな。なんでだ?」
「おいおい。俺はイカサマなんてやって無いぜぇ。『チェスや将棋、囲碁などの『二人零和有限確定完全情報ゲーム』と呼ばれるボードゲームにおいて、運の要素が含まれないこのゲームは最良の手を突き詰めれば「先手必勝」「後手必勝」「両者引き分け」に必ず行き着くことになっている。』これを知っている俺と、知らないお前とじゃいくら戦ったって勝てやしねぇよぉ〜」
「何が必ず行き着くことになっているだ。勝負事ならば先手が勝ったり後手が勝ったり、引き分けになるのは当たり前だろう」
「バカ野郎!ただゲームで先手が勝つのと、ゲームで「先手必勝」ってのはわけが違うんだよ。つまり、知っている奴と知らない奴とじゃ、しっている奴が勝ち続けられるっつーこった」
「よくわからんが、お前に負け続けた理由はわかった。よし、もうひと勝負」
「だぁあー!もういいよ!チェスは飽きたっつーの!」
「だが、何もやらないとヒマだと言ったのはお前だし、事実何もしないとヒマだぞ?」
「………しゃーねぇ。街にでもくりだすか?」
リアルでは滅多に外に出なかった今鶴が(高校には行っていた)出かけるというのはよっぽど暇なのだろうが。
ここにきてまだ、『ぬけている』と言わざるを得ない。何故なら!
チェスが飽きたのなら、『他のゲームをやればいい』という事が頭の考えからスッポリ抜けてしまっているのだから。そして『それ』は、そそくさと外に出る支度を始めている加賀瑠璃にも言えることであった。
〈〈オールド騎士共和国 城下町 酒場〉〉
「オーッス。相変わらずここはやかましいですな。」
「おお!国王様。どうぞどうぞこちらへ。」
「あっ。ばあちゃん、俺いつもの〜。」
あいよ〜。
「おう、今鶴。俺は『ブラック・ホークの絞り酒』をよろ。」
「ああ。おばちゃん、それで。」
あいよ。
「つか。お前何歳よ? 見た目未成年っぽいが。」
「年齢不詳。酒を飲むもタバコを吸うも、自分次第よ。」
「お子様に悪影響を与えるような発言すんじゃないよ!まぁ、いいけど。」
お待ち!
「ああ、どうも。」
「さて、加賀瑠璃よ。もう一度確認のため、「魂のエネルギー」「技」などについて詳しく話を……」
《えーあー、マイクのテスト中〜。マイクのテスト中〜。ゴホンッ。えー突然ですが、臨時ニュースのお知らせでーす。
隣国マルキース王国より明日、戦のお祭り『フロンティア フェスティバル』を開催いたします。カード所有者が二人一組となって戦っていくトーナメント戦。見事No. 1に輝いた優勝者の一組には、ななななんと!カード色『紫』カードレベルトップ。レベル10の『病原菌』が送られます!みなさん。奮ってご参加くださいね〜。以上!マルキース王国放送局でした〜。》
「…………なあ、加賀瑠璃よぉ。」
「ん?」
「行くか」
「おう」
「マスター。お代ここ、置いとくよ」
「どちらへ?」
「お隣さん♡『フロンティア フェスティバル』勝ってくらぁ
行くぜ加賀瑠璃!狙うは『紫』レベル10『病原菌』だ!」




