第7話「技が出ない?『追撃者(ブースター)』死の危険」
俺はどうなったんだろう?
今鶴はまず、そう思った。
「確か……えっと、何だ。そう、勝負だ。あいつは、加賀瑠璃は何処だ。」
朦朧とする意識に無理矢理スイッチを入れ、起き上がり、目を開ける。
その際に、自分の左腕に激痛が走ったが、気にせず加賀瑠璃を探した。
加賀瑠璃は、10メートルほど後方で腕組みをして、今鶴を睨んでいた。そして、言い放った。
「貴様! 俺をなめているのか。なぜ技を使用しない! 威勢が良いのは口だけか!」
「…………は?」
何言ってんだあいつ? 俺はちゃんと技を使ったぞ。
技名をしっかりとコールした!
だがあいつは無傷。技が出なかった? のか?
なんでだ? なんで技が出なかった。訳がわから……
「だが、妙だな威力が少ない技とはいえ即死のはずだが。外したか?
まぁいい。貴様が俺をなめているのならそれでな。
後悔して死ね!
コール! 第一の技『ブスルダ』」
加賀瑠璃の右手に、湾曲を描いた鉄の棒に針金のような糸の貼られた『弓』が精製され、左手には、先が異様に捻じ曲がっている『矢』が精製された。
そして、ギリリッと容赦なく矢の標準を今鶴に定める。
「くそっ。出ろ! 出ろよ! 『ブースト』『ブースト』!!。」
尚も、技は出ない。
「ショット!」
矢が放たれる。バシュッ、と軽い音からは想像出来ない豪速で今鶴の眼前まで迫った。
あ、死ぬ。
走馬灯なのだろうか?ホンの残り数センチが何時間にも思える。
なんとかしなきゃ死ぬな。冗談抜きで。ははっ頼む。頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む。出てくれよ!
喉よ避けろと言わんばかりに今鶴は叫ぶ、嫌、それは、叫ぶと言う言葉では到底言い表せないものだった事は確かだが。
『ブゥーーーーーーーストぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉォぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!!』
ズドオォン!?
爆発が起こり、派手に土煙が上がる。
「…………おいおい、もう終わっちまったのかよ。レベル10だと言うから相手してやったてのによぉ。ケッつまんねぇ」
再び加賀瑠璃は眼を閉じる。さも、つまらなそうに。ふてくされるように。眼を閉じる。
だが、それも束の間。加賀瑠璃は直ぐに目を開けることになる…………
「……おい、おい! クソガキクソガキうるっせぇーーんだよぉー!! くらいやがれ!! 『ブーストーぉぉぉぉぉぉぉ』!!」
「なぁにぃ。後ろ……」
ズガァン!!
金色に輝いた今鶴の右手が、加賀瑠璃の腹をぶん殴った衝撃は森全体を響かせ、森の全生態が恐れをなしその場を離れた。
「ハァ、ハァ。どうだっ。ハァ、ようやく決められたぜ。あ!あと!
俺はクソガキじゃあねぇ。今鶴。今鶴虎終だぁ! 覚えとけー!ハァッハァー。
へっ。俺の技『ブースト』は、『自分の体の一部のみを特大強化する』技だ。
お前の矢は確かに強えーが、俺の強化した足の速度には追いつかない。お前の後ろに回り込むなんぞ1秒かからない。そして、付け足しておくとすると
『俺の強化したパンチの威力は象5体ぐらいは普通に一瞬で粉々に粉砕出来る。』まぁ出なかった時は焦ったがなぁ!!
おそらく致命傷」
「俺の、勝ちだ!」
加賀瑠璃はピクリとも動かない。
動かずに
加賀瑠璃は、仰向けになったまま、ごく静かに、ごく自然に、呟いた。
「………………グラブディオル・ブスルダム」




