第40話「VS『無敵』 決着」
「『裏奥義・憤怒之道"阿修羅"』」
うら……おうぎ…………
裏奥義ィイイイイイッッッ!!!!!!!!?!?!!!??!!
覚醒した俺が最初に目にしたのは、足を組み怒りに顔を歪めた巨大な阿修羅像が『無敵』の奥義を槍で受け止めているところだった。
阿修羅像の頭の上の空間に固定されているように顕在する、真紅に輝く仰仰しい姿の一本の槍。
その槍が阿修羅像の意のままに操れるのか、『無敵』の外側が黒く中に黒い点のようなものが見える球体を抑え込み
なんと驚くべきことにその理不尽なまでの消滅の忘却を跡形をなく貫き、勢いを衰えさせず真っ直ぐに『無敵』へと迫った。
「ッ!? しょ、障壁最大展開! 『奥義』・『防御とは最大之攻撃也』」
『無敵』も負けじと目の前に攻撃反射の盾を乱雑に隙間なく敷き詰める。
黒板を引っ掻くようなものの、約一億万倍気持ちが悪い音が空間を劈いた。
そしてもう末恐ろしいというかなんというか……
その反射の盾も全てをぶち壊し未だのろのろと、しかし一切衰えていないその速度のまま、しっかり着実に槍は『無敵』へ近づいて行く。
「うっそぉ! お、おお、『奥義』・『完・全・防・御』!!!」
阿修羅像をはるかに凌ぐ巨大な青い壁が出現し、槍がぶつかった場所がぐねぐねと捻れヤバイ感じの共鳴音を発し始める。
「ぐ……うおおおおおおおおお!!」
「貫け! 阿修羅!」
おそらく、槍に付加された力は『分解』。
さっき全ての盾を粉々にしたのもそうだが、今も攻撃を受けた瞬間それをそのまま反射する盾の能力を
盾自体を分解することで防いでいる。
しかし、このままだと。
「おおおおおおおおお……って、あ」
「ぬ。限界か」
盾がピシピシと音を立てながらひび割れそこから光が漏れ出し、
槍も同様にひびの螺旋は止まることをせず。
パシィィィィイイイインッッッ!!
二つの武器が爆砕し、そこに隆々していたエネルギーが不完全燃焼を呻くように大気へと暴風をまき散らした。
そして身動きを封じられるほぼ(・・)全員。
俺も実際、動けなくなるはず、だった。
だが、俺の体の周りの紫色の霧状のものが台風並みの暴風を俺から弾いていた。
『マスター。黒鬼ちゃんは倒しました。遅くなって申し訳ありません。私の最後のエネルギーを込めました。行ってください!』
遠くから届く念話にありがとうと返し
「『フォース・ギア』!」
バンッと地を狩り出来るだけ最速に、障害物が出来るだけ少なく、一直線に目的地に届くように!
風を、音を斬りはらい背後に出現した俺に戸惑う『無敵』。
「奇しくも、さっきとは逆だな。『無敵』ぃ!」
「ぐ、何故この中で、自由に……」
「お前とライみたいに中心にいた訳じゃないからお前たちほどGは受けてないし、アズの力も借りてるからな」
「しかし、貴方のその態勢では今直ぐ僕を倒すことはできないでしょう。逆に、僕なら、直ぐに貴方を消せますよ」
バキボキと骨が露骨に折れる音を意に返さず、漆黒の右手を俺へと振り抜く。
あーあー、そんな無理な態勢でやるなよな。
「『奥義』・『生命現象』」
「がふっ!」
『無敵』の右手が急速に動きを弱め、遂には大きな重力に引っ張られるように勢いよく垂れられた。
「ありがとう。マリ」
「だが、その、……態勢では……攻撃に、パワーは、のら、ない……」
「だろうな。でも、ライ・アズ・マリの三人が作ってくれた最初で最後かもしれない勝機なんだ」
だから、これで終わらせる。
そう呟いて、ギラリと光を反射する黒い短剣を握りなおし
「『停止剣・ロック』!」
くないのような形をした飛来物が約10本ほど『無敵』に刺さり、『無敵』の動きを拘束する。
「グハァッ……! こ、こんなもの、二秒、あればぁ!」
体に力を込めているのがありありとわかる。
「そうだな。二秒経てば、お前は動けるようになるだろ。
けど、俺たちの勝ちだ」
俺の絶対的な確信の表情に訳のわからないものを見る目で応じる『無敵』
―――1秒……
コッチッ……
「何を考えていたかわかりませんが! 万策ついたようですね!」
その場から微動だにしない俺の顔に、動けるようになった『無敵』が遠慮なく消滅の右手を振り上げ……
パリィッン
という空間が破砕する音にその動きは止められる。
「え?……へ? ……あれ?………………あ、あぁぁぁあ!!!!」
「時間、60分ジャスト。あれから2秒経てばそれだけでよかったんだよ」
理解するが早いか、騙されたような顔をする『無敵』に、今度こそ言い放つ。
「俺たちの勝ちだ!」
ふぃ〜、これで現・世界最強との勝負決着です。
てかこいつ普通に倒しようがねぇだろ!
どんだけバケモンなのよまったく。
この後一気にクライマックス?
って感じになるかどうかはわかりませんが、この一件で一気に勝負は傾きました。
はてさて、今鶴は目標を達成できるのか!




