第38話「VS『無敵』その4」
「ガァァァァアアア!!!!」
その雄叫びは大気を揺るがし、直接的な衝撃となって俺たちの体に圧がのしかかる。
「……ふぅ。久しぶりに使ったな、これ。もうストックが一枚しかないよ、どうしてくれる」
「お前のストックなんか知ったこっちゃないなぁ。でも温存はしといてくれよ? 俺たちの仲間になった暁には色々手伝ってもらうから」
やばい
やばい
やばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!
どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする!!!
一番警戒してたことが起こった!
使われた! 『閻魔』のカードを!
だからあれほど刺激しないように気を使ったのに!
いやいや刺激しないようにあの化け物とやりあうとか無理だから! 空前絶後の無理ゲーだから!
下手すりゃ、全滅する……
「距離を取るぞ! ライ! 今すぐ離脱……」
「『奥義』・『死刑宣告』」
禍々しい鬼の生首が出現し、大きく開かれたその口に手を突っ込みとてつもないスピードで紙切れを取り出した。
その前の奥義コールを聞いた瞬間ほぼ反射的に叫んだ。
「『聖剣・ジャスティス』ゥゥウウ!!!!」
指輪から飛び出した白い球体が弾け、白銀の正義の劔が姿をあらわす。
そして俺たちの盾になるように必中不可避・視認不可能の強制の力にぶつかり。
カッ! と発光しその死の衝撃を跳ね返した。
「…………はぁ……はぁ……切り札、使っちまった。……はぁ……でも、危ねぇ。ジャスティス出してなかったら、全員終わってた」
跳ね返した死の衝撃は『判決・地獄遺棄』と綴られた紙へと衝突し、紙を粉々に打ち砕いた。
「た、助かったよ。ジャステ……」
地面に突き刺さっていたジャスティスの塚を握り
塚ごとボロボロと崩れ落ちてしまった。
「ま、マジかよ……。完全防御に悪意強制反射のスキル持ち聖剣だってのに。冗談にほどがある」
「それはこっちのセリフですよねぇ」
乾いた笑みを浮かべていると、『無敵』から声がかかる。
先ほどより声がだいぶ低くなっており、まるで地の底から響いて来ているようにも感じる。
「今のを防ぐとか、おまけに【神言書】まで打ち砕いちゃって。人間業じゃないですよ。化け物ですか?」
「お前ほどじゃない」
なんとも予想外だが。ラッキィーーーーーーーーーーーー!!!!
偶然とはいえ死刑判決のために必要な【神言書】をぶっ壊してくれるとは、ありがとうジャスティス!
「ライ。運がきてるぞ! このまま一気に畳み掛ける! しかも、いいニュースだ」
「急になんだ。何がいいニュースだ……」
「起きてるよな? 来てくれ!」
右腕を高々と上げて声を高らかに宣言する。
「アズ!」
キュルワァンというその場に似合わない軽やかな音がなり、一人の少女が爆誕する。
というかまぁ。
アズが復活した。
来てくれ! セ○バーーー!!!
「私をネタ扱いしないでください。マスター」
「俺というオタクの最大限の愛情表現だ。元気になったようで良かったよ、アズ」
下げられ前に出された俺の右の掌にアズが触れ、その瞬間アズの体に『病原菌』の鎧がまとわれる。
なんというか……エロいな。
「これで戦力は一気に増えた。レベル10三人に、レベル6相当のカード所有者。勝てるもんなら勝ってみやがれ!」
「手数で押すということですか……なら、こちらも」
くるか!
「ライ! お前は白と黄と赤をやれ! 黒には手を出すな! アズ! お前が黒だ。絶対に近づくな。遠距離からウイルスゴーストの遠隔操作で一気にケリをつけろ! マリは青を! ひたすら硬いから攻撃しないで生命力を削ってやれ! 超絶硬い分超越遅い。だから、逃げながらゆっくりぶっ飛ばせ!
緑と『無敵』は俺が足止めする。全員終わったら即俺のサポートに来てくれ。てか来てくれなきゃ俺が死ぬから、そこんとこよろ」
「な、なんだ? いきなり言われてもわけわからん」
「いいから俺が言ったことちゃんと覚えろ! じきにわかる!」
「いざ、咎人を戒めし地獄を統べる番人達よ。今一度この地上に再誕し、我に力を
『奥儀』・『鬼』」
がこん! と音を立て大きく顎を落とした鬼の生首の口に手を突っ込み、詠唱を唱えながら奥儀コール。
ズルズルと大きく開いた口から、それぞれユニークな
『赤』『青』『緑』『黄』『白』『黒』
の【 鬼 】達が棍棒を携えてその姿を現した。




