第30話 「知識の力っ!悪魔との決着!!」
「この威力。成る程、新たな技を控えていたのですか。これは苦しい」
「……とてもじゃねぇが、苦しいって思ってる顔じゃねえなそりゃあ」
言葉とは裏腹に実に楽しそうに笑みを浮かべるサムレヴィーン
「ふっふっふっ。いいですねいいですねいいですねぇっ!?
友のピンチに目覚めた新しい力を持ってそれを守ろうとする。実に私好みのシチュエーションです」
「……その心は?」
「そして立ち上がった瞬間、再び地に落として絶望へと突き落とすのが、私の一番好きな事なのです」
「やっぱ最高のクズ野郎だなっ! てめぇっ!?」
こんなクズ野郎は初めてだ。
マジでいけすかねぇ。
……ん?
この世界で、クズ野郎?
……それって
……っ!
そうかっ!
そうかそうかそーうかっ!?
思い出したぞこのクソ野郎。
このアニメの中でそこまで腐りきったやつは一人しかいない。
そもそもがおかしいんだ。
この世界にサムレヴィーンなんてキャラは存在しなかった。
それに
『魅力』のカードを使うはずだったのは『クリス』というゲスなイケメンだったし、『土製』のカードは、どっかの国のお偉いさん直属の兵士、メルが使ってたはずだ。
あんな奴ら俺は知らない。
俺が加賀瑠璃と接触したせいで、世界が狂ったのか?
え?
そう考えると、俺って犯罪者?
だってそうだろ?
アニメの設定デタラメに狂わせちゃったんだから。
ってんな事言ってる場合かっ!?
「サムレヴィーンか。お前味方にまで偽名使ってるのか? それとも、味方にも自分を偽名で呼ぶよう指示してるのか?」
今はそんな事は関係ない。
この勝負が終わってから考えればいい事だ。
「偽名?」
「はぁい。今ので脈拍と呼吸がぶれたぜ? 嘘 確・定っ!」
取り敢えずハッタリをかましてみる。
んなこと俺にわかるかっ!?
「いやはや何を言い出すかと思えば、偽名? 一体それは……」
やれやれ といった感じに首を振るサムレヴィーンに、ビッと指を突きつける。
「お前、ウィリー、いや、ウィリアム・クリトラァーだろ」
サムレヴィーン改め、ウィリアム・クリトラァーは一瞬で凍りつき、次の瞬間には今まででは考えられないほどの殺意に満ちた視線を向けた。
「クレァ様。貴方はそれを何処で? 」
「あぁ。その口調素じゃないんだからやめろよ。普段通りでいいんだぜ?」
「……ふぅ。………………おいおいふざけんなよ。テメェ一体何者だ?」
やっと素になってくれたか。
これでわかりやすい。
そもそも最初からおかしいと感じていればこんな事にはならなかったんだ。
アニメに出てきてない知らないキャラもいるから、特に気に留めなかったが、よく思い出してみろ。
あいつらは『ヨウゴラスの悪魔』と名乗ったんだ。
『ヨウゴラスの悪魔』?
あいつらって第47話「悪魔たちの祭典」で主人公たちに自分の土俵で勝ち誇ってたくせにボッコボコにされたあの『6人組』だろ?
名前もちゃんと覚えてるし、カードだって覚えてる。
俺が極めたこの世界で、知識で勝てると思うなよ?
「ウィリー。第69話で、主人公たちを殺せと雇い主に命令されていい奴ぶって接近。その後主人公のパーティーのヒロイン二人を殺して最高に俺たちファンの敵に回った殺し屋。使用するカードは『記憶』。使う技は『メルド』『ドモルド』『メル・クリム』『ド・メルドム』」
よくよく思い出してみれば、主人公たちに接近した時にあんな感じな喋り方だった。
ペラペラと情報を吐き出す今鶴に、ウィリーは初めて戦慄したような視線を送る。
「……おいおい。本当になんなんだよ……。お前は」
「俺か? この世界を作った神に人生を捧げる信者ですが何か?」
「神のおたく? まさかてめぇっ!?
スルト教の信者か!?俺に恨みがある奴に依頼でもされたのか?」
「あんな 頭の狂った信者どもと俺を一緒にするなよ。俺がそんな風に見えるか? あ?」
「あぁ見えるね。俺にはそれ以上にお前が狂って見えるよクレァ様。そんな情報をわざわざなぁ、殺してくれと言ってるようにしか思えん。まぁ、どっちみし殺すんだが」
「俺もそのつもりだクズ野郎」
このキャラ。ウィリーは他に幾つも世間のゴミクズが光り輝いて見えるほどのクズっぷりを発揮した話がある。
その中で今俺の頭に残ってるのは
第96話 「神殺しと実験の末路」という話だ。
「繋がったよ。お前が加賀瑠璃に言ってた事がな。名前はなんつったか、えー、そう! 光の使途を生み出す実験の場所『エデン』での事だろ?」
「……ッ!殺すっ!?」
もはや何も言わずに無表情で両手を向けるウィリー。
させねえよっ!
「『ブースドン』ッ!?」
握っていた石を全力で投擲、頭に血でも登ってたのか反応が遅れたウィリーの左手に触れ……根元から轟音を立てて引きちぎった。
「うぎゃぁぁぁぁああああああああっっ!!!!」
俺の『ブースドン』は、物体の力を強化する強化技。
石に込めれば大砲クラス。砂に込めて俺を覆うように被せれば盾がわり。
欠点を言うなら俺の力は強化できないとこだな。
全く、強化できないもんかねぇ。筋トレでもすっか?
お?
なんかひっかかるなぁ。
まいっか。
つかいつまで叫んでんだ、やかましいわっ、とぉ!
再び拾った石を投擲。
お。
間一髪で避けましたか。
動きがオーバーだってお前。
「……はぁー!……はぁー!……ふざけんなよっ!殺す!殺してやるからなぁ!!」
血がドバドバと流れ出る左腕を抑えて、俺に殺気を放ってくる。
さっきの三分の一ぐらいだけどね。
「お前素に戻ってから一気に弱くなったよな。お前は冷静だった方が強かったぜ? それにさぁ……顔色悪いぞ? 」
とかなんとかいっておきながら、実際冷静になられても困るので挑発をしてみる。
「ぐ、……グァァィァッ!!!!」
怒りの絶叫を上げる。
痛みでそれどころじゃないみたいです(笑)
「所詮お前は暗殺業。主人公に殺されなかったのが不思議なくらいだ。それにお前その血の量だと結構ヤバいだろ? もう無理だって。
俺はまだバリバリ石投げられるし、お前は冷静を欠いた状態で十分に動けない? ドゥーユーアンダスンっ?」
「こ、ここここここ殺すぅぅぅぅぅうううううっ!!!!!!!!」
アンダスタってくれないようです。
一気にこちらへ駆け出してくる。
どうせなんの用意もしてないんだろう。
さっきまであんなだったのに、ダメージを食らうとこれか。
やっぱり一瞬の油断が命取りって本当だな。
「あ、そう。ま、俺もお前の事ムカついてたし丁度いいけど。殺すってのは勘弁してやろうか? やっぱりアニメの中とはいえ、人殺しはさぁ」
血が上って色々はっちゃけたが。
どうしよっか。
でもやっぱ加賀瑠璃にひどい事したしなぁ。
「まぁ、いいや。……やってやるっ!?」
俺は石を握りしめ、オーバースローで全力投球した。
そしてなんとなんと、約一時間の攻防の末、俺に軍配が上がったのだった。
あの状態で一時間とか、しかも俺も無事じゃないし、
やっぱあいつバケモンだわ……
あいつの正体気づいてまじ正解……俺、花丸大正解……
そう言って俺は、掻っ捌かれた横腹と綺麗に両断された左足に、『思い出した』自分の初めての強化技で回復作用を強化しながら、そっと意識を切り離したのだった……
【崩れ始めた城ルーム・今鶴vsウィリアム・クリトラァー=勝者『今鶴』】




