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アニメの世界じゃなんとやら  作者: 終匠 竜
アニメ:闇と光の世界地図 編
29/52

第29話「奥の手の用意は忘れずに!」

今思えばこんなにキレたのは久しぶりだな。


小学校の頃大事にしてたアニメのキーホルダーをからかい半分に川に落とされた時以来か?


さてと、なんかこう考えてる時にも体はもう止まりそうもないし。

そろそろ俺の怒りをぶつけさせてもらいますかね。


せーーのぉ!!


「サムレヴィィィィィィィィン!!」



時間が再び動きだした瞬間、今鶴の両手両足が薄く赤に輝きサムレヴィーンに特攻する。



「ふふふっ。素晴らしいお力だ。どうです? 貴方も我々の一員に」


「寝言は俺に寝かされてから存分に!!!」


「ふふっ。それは残念」



今鶴が拳を振り抜くたびに巨大な衝撃波が発生し、周囲の空気がぶれるが、サムレヴィーンは特に気にするでもなく今鶴の音像を超える拳を避け続けていた。



「そっこだぁぁは?」


「無駄ですよ。クレァ様……グフ!!!」



余裕綽々。といったように涼しい顔で超人並の動きを見せていたサムレヴィーンの腹部に、今鶴の拳が炸裂した。



「うおおおおおおぉぉぉぉぉお!!!」



『奥義』・『詮索尺度(サーチパラメイション)』により、相手の動きをある程度予測。

何発かのやり合いから次の動きを誘導し、一発を決め、均衡している状態が崩れるその瞬間を逃す事なくラッシュを続ける―――


今鶴の強者とやり合う時用に考えられた新しい戦い方だ。


ラッシュは終わる事なくサムレヴィーンの体を滅多打ちにし、「もういっちょぉーー!」と今鶴が拳を突き出した時に、再び状況が動いた。

完全に優勢の状態にいたはずの今鶴が、横からの強襲を受け真横に吹っ飛んだのだ。


「グッ……ガハァッ!」


「何を殴っていらっしゃるのですがクレァ様。私はこちらですよ?」


「くっ、ちっくしょお!!」


転がった体を右手と足で静止、反転させダッと地を蹴りサムレヴィーンへ肉薄する。


「お前! 何をした!!」


「そうですね。いわゆるアレですよ。こんな感じの」


今度は完全に拳が触れていた箇所が消滅し、スカッと拳がコントロールから外れ体制が悪くなる。

そして


「『残像だ』というやつです」


後ろから声が投げられ、サムレヴィーンのかかと落としが今鶴の背中に食い込み、巨大な破壊音と共にクレーターを作る。


「ガハッ! っ、ふざけんな!」


ブオンっという風切り音を発生させる回すように放たれた右の拳を、サッとその場を飛び退くことで回避するサムレヴィーン。


「そんなもん。俺の詮索尺度(サーチパラメイション)が見落とすはずがない!」


「私の奥義『記憶残存(サービバル・メモリー)』は本体の記憶をその場へと残すことが出来るのです。

つまり、それは残像でありながら、息もしてるし心臓も動いているのです」


「あーそう! ご丁寧にっどうも!!」


ボンッ

と地面が一瞬で陥没し、今鶴の体が真紅に輝き始める。


「『サード・ギア』だあ!! おらぁ!!」


さっきまでの速度とは比べ物にならないほどの速さで、サムレヴィーンに右ストレートを見舞う。


そして見えた。

一気に強化のレベルが上がった今鶴の目に、分身するかのようにスーッと体から抜け出すようにサムレヴィーンが横移動をしている事が。


「うぉっらぁぁあ!!」


半ば強引に左足を振り上げ、滑るように半回転し今鶴の後ろに回り込もうとしたサムレヴィーンの、横腹に突き刺さる。


「グブッ……や、やりますね」


吹き飛びながらも、まだまだ余裕があるような。

そんな雰囲気を醸し出している。


「クソッ。浅い!」


追撃しようと地を蹴ろうとした瞬間、強化された超直感が「ヤバイ!」と告げたため、地面が陥没したのみで収まる。


「おや。っと。まさか追撃を行わないとは。『追撃者(ブースター)』の名が泣きますよ。……まぁ、見事と言っておきますかね」


スッと右手を地面にかすらせその反動を利用し、回転するように体制を整えたサムレヴィーンは、ニヤッと笑う。


「何をしようとしていた。楽しみたいとまで言ってくれたんだ。これも素直に教えてくれるよなぁ」


「ふふっ。いやはや、ここまでとは想定外ですよ。さすがの私でも少し厳しくなってきましたかね。あ、それと。さっきの「楽しみたい」というのは挑発ですので、あまり間に受けないでもらえると」


「んだよ。教えてくんねえの?」


「貴方に勝つには少し工夫が必要なようですからね。しかしそうですね。私の切り札で貴方の力を封じようとしただけですよ」


「サラッと恐ろしいこと言ってくれやがって。こいつはマジでヤバいかもな。おいマリ!!」


浅いとはいえ一発貰ってんだぞ?何であいつあんな平気そうなんだよ!!


「ひゃっひゃい!!」


「はは。驚かせてスマン。こいつはヤバい。俺もマジでやるからアズたちと安全な場所に逃げろ!!」


「え?でも……」


「いいから早く行け! 巻き添え食うだろうが!!」


「はい。分かりました。頑張って……死なないでくださいね」


最後にボソッと口にした言葉は今鶴には届かない。

しかし、今鶴にはそのよく聞き取れなかった言葉が最大のエールだと感じた。


「おうよ!」


「マジでやる。という事は。あの『フォース・ギア』という技ですか?」


「チッ。やっぱ知ってるか」


「私とメリエス達は記憶が繋がっている状態になっていましてね。今鶴殿のその技はもうすでに記憶済みです」


「あーそうかよ!もう攻略されてそうで恐ろしいことこの上ないな!ならこれは知ってるか?指輪よ!繋げ!『我が思いは……」


「させません」


「なっ!」


とんでもない豪速で、一気に目つきが変わったサムレヴィーンが直ぐそこまで迫り目を見開く。

そしてその一瞬の隙はこの状態では命取り以外の何物でもなく、


スッと伸ばされたサムレヴィーンの手が俺の体に触れた。

その瞬間視界がグラリと揺れとてつもない喪失感に見舞われる。


「ぐっ、お前……何を」


「わが最高にして最強奥義『記憶消去(デリート・メモリー)』の発動が完了したのですよ。貴方は今、自らが行おうとしていたことそのものを忘れてしまったのです」


「何を言って……」


そう言って再び自分の奥の手を使用するべく行動に移そうとし、体が動かない。

まるで今行おうとしていたこと自体が理解できていないかのように。頭で考えようとしてもボンヤリとしたもやがかかって逆に記憶から消えてきそうにも思える。


「おいおい……冗談だろ……」


「ふっふっふっ。これは私に取っても奥の手でした。消すことができる記憶は私が熟知している相手の記憶に限りますし。直接触れねば意味を成さぬ上、消えた記憶が何なのか、他人に教えてもらうだけで記憶が戻ってきてしまいますからね。まぁわかりやすく説明すると、思い出せそうで思い出せない!そんな状態で誰かに教えて貰うと、あーなるほどとなるようなものです」


ヤベッ!マリたちはもう避難させてるからここにはいないし。っていうかそれが狙いか!


「クレァ様。もう貴方には勝ち目はありません。私の奥義は時間制限付きですが、その間に貴方を殺すことなど造作もありません。何せ私が消した記憶は貴方の奥の手だけではなく、『貴方のたった一つの技』もなのですから」


……たった一つの技って、おい。


つまりあいつが言いたいのはこういうことか?


お前はもう技使えないよ? と。

勿論奥義も使えないよ? と。

奥の手も使えないよ? と。


ふざけんなよ!?んだよその鬼畜プレイ!?


「諦めてください。幸い、貴方は強い。ライ様と共に私とくるのであれば命は助けましょう。しかし、それなりの制限をさせて頂きますが」


クソッ! 何かないのか! 何か!?


思考回路をフル活用し、新たな活路を見いだそうと試みた時、ふとある言葉が脳裏をよぎる。


え?コレって……消えたんじゃ……

いや、違う。消えたのはコレ以外の何かなんだ。


これならまだ、何とかなるかもしれん!?


「さあ! クレァ様。加賀瑠璃様を連れて、私と……」


「ふざけんなよ」


「ん?」


「誰がお前なんぞについてくか! 加賀瑠璃を傷つけたお前は俺にフルボッコにされると決まってんだよ! バーーーカー!」


「……はぁ……クレァ様。私は貴方はもう少し利口な方だと思っておりました。

まぁいいでしょう。そうまでして死にたいのであれば、是非もありません。死んでください」


サムレヴィーンはチャキっと一丁の拳銃を構える。


「『奥義・記憶残存(サービバル・メモリー)』」


拳銃が空中に五つ姿を現した。


「へー。お得意の残像か?」


「言いましたが、これは全てが本物になります。この意味はお分かりですね? では、さらばです。クレァ様」


パラララララッ!というような軽い音が響き計六つの拳銃が火を吹いた。


そして俺は、片膝をついたまま地を眺め徐に顔を上げる。


そしていつの間にか砂となり始めていた砂漠のようなこの場所にあるものを握り振りまいた。


大きな砂埃が舞い、俺の前を包む。そして


ギャリリリリリン!!


というような耳をつんざく音が耳に残り、砂埃は晴れた。


「……っし!」


小さく心でガッツポーズ。


「な、何を、何をしたのですか! 唯の、能力を封じられた人間が銃弾を弾くなど」


「根本がちょっとずれてるよ、お前」


「……?」


「悪いけど。能力ってのは戦えば戦うほど強くなるっていうのがこのアニメの大前提なんだ」


「この、あにめ?」


「そ。このアニメ『闇と光の世界地図』は、常に成長を続けるキャラ達の飽きさせないところがヒットの一番の理由なんだ」


「何を訳のわからないことを……」


「つまりだ。俺が今までのままだと思うなよって事。最初はあまり強くない奴は後々なんかクソみたいに強くなるっつーお決まり展開だよ。

まぁ俺は最初から割とチート風だったからあんまり成長幅は広くないとは思うけど、今この状況ならかなり成長したように見えると思うよ?」


「む、無駄ですよ。どうやって弾丸を弾いたかはわかりませんが、私にはまだ奥義が」


サムレヴィーンが言葉を言い終わる前に、俺は右手に握っていた石を大小それぞれ約7つ、サムレヴィーンに投げつけた。


「ふっ。何ですかこの石は?こんなもの。避ける必要もっ……づ!!」


石の速度は並、いやそれ以下のような速さ(仕方ないじゃん!バリバリインドア派!強化されてなかったら所詮こんなもんですよ!?)でサムレヴィーンに接近した石は、触れた直後爆発するような音を立ててサムレヴィーンをはるか後方に吹き飛ばした。


「グッ……ガハッ! 何故、一体何が!!」


「分からないか? ならもう一丁!」


ブンッというような音を上げて放られた柱の欠片を観察するように避けたサムレヴィーンの後ろで巨大な音と砂埃が舞う。


「! ま、まさか。そんな……」


「悪いな。このパターンに持ち込めば俺を倒せると思ったんだろうがちょっと詰めが甘かった」


そこで一度口を止め、ニヤリッとした表情でサムレヴィーンを眺めてから言い放つ。


「『追撃者(ブースター)』第2の技!『ブースドン』!!」


どうも『終匠竜』デス。


サムレヴィーンの喋り方が色々とごっちゃになってたので直しました。

気をつけてはいたのですが。

すんません。

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