第24話 「不完全燃焼醸し出す決着!今鶴vsアリア」
元・今鶴達が、ヨウゴラスの悪魔たる者たちと共にいた場所には、土で出来た『巨大な城』が建っていた。それはもう可愛らしく、メルヘンの世界に出てきそうな体積のおかしいものだ。入口のあたりは急激に狭く、城のてっぺんは弾けるように広がっている。
その形態を目の当たりにしているのは、ただ1人当然のように頭数から外されていた弄月のみだ。中に入ろうと近寄ってはみたがとても入れるような代物ではなく、試しに刀で切ろうとしてみたが、文字通り歯が立たなかった。
現在・今鶴達は、それぞれ大広間のような所で敵と対峙していた。様式は様々。煌くシャンデリアが連なる階級の高そうな家柄の大広間であったり、鬱蒼と木の生い茂るジャングルであったり、結婚上のように仕上げられた部屋であったりする。
ある部屋では•『目の下にクマを浮かばせるメガネ少年と露出の多い服装の眼帯少女』
ある部屋では•『白髪で長髪の目つきが悪い青年と燕尾服を纏い片手で読書に勤しむ青年』
ある部屋では•『サラッとした茶髪に大きなリボンが目立つ少女と虎にまたがる原始人のような少年』
今この瞬間にも戦いが始まりそうな状態で、それぞれお互いを睨みながら、何故か会話をしているのだった。
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【ジャングルルーム・アズvsメリエス】
「まんまとマスター達と分断されたというわけですね」
「そうだっぺ。改めて、オイラはメリエス。あっ!そうそう。この部屋の壁を突き破ろうなんて考えは、よしといたほうがいいっぺよ」
「こんな、どこまで続いているのかすらわからないジャングルの真ん中で部屋の壁を探すこと自体、無理でしょう?」
言外に『そもそもそんな考えに至るか アホ!』という言葉がにじみ出ていたが、メリエスは「ん! それでいいっぺ」と、気にする様子もなく言葉を返す。
まぁ、こんな壁なんて考え自体、どうでもいい事なんですけどね…………アズがポツリッと呟いた言葉は、メリエスには聞こえなかった。
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【結婚式ルーム・今鶴vsアリア】
「改めまして。私アリアと申しますの。宜しくね」
「…………眼帯なんつーイタすぎるキャラ設定…………どうにかなんなかったのかよアンタ」
「ふふっ。貴方メガネがとっても似合うのね。すごく素敵よ」
「は?」
「私には貴方を傷つけることなんてできないわ」
「……その心は?」
「貴方が格好良すぎるからよ!」
もはや今鶴は何も言わない。絶対零度の視線を向け静かに右人差し指をこめかみに持って行き、トンットンッと叩いた。即ち『頭大丈夫?』と。
「貴方『スター・クレァーン』っていうのでしょう。サムに聞いたのだけれど。本当にサムったら物知りねぇ」
「あの胸糞悪い執事か」
「『スター・クレァーン』、『スター・クレァーン』。実にいい名前ね。私、虜に・なっ・ちゃい・そう♡」
「な!?」
その時、徐ろにアリアが眼帯をとった。今鶴は『しまった』と思い目を逸らそうとするが、今鶴の目はしっかりとアリアの翠に輝く目を視界に定めてしまった。
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「! この感覚。まさかマスターの身に何か」
何か言い表せない悪寒に背筋を震わせながら、何処かに入るはずの想い人に視線を送り探そうとするが、それを許さない悪魔が邪魔を入れる。
「戦闘中に余所見は禁物っぺよ!『ガルダ』!!」
「っ……く!!」
地面からズダダダダタッと剣やら金槌やらを飛ばしアズを攻撃する少年『メリエス』。
またがる虎の速度は凄まじく、アズの劣化版とはいえ『ブースト』された目を上回るほどだ。
一方アズといえば、我がマスターの事に気が入ってしまい戦闘に集中できず防戦一方の状態だ。
メリエスは『土製』というカードの使い手。エネルギーを集中させ、そこに自分の創りたいもののイメージを注ぎ込む事で、色々な物を作り出せる能力だ。ただし、土を加工して創り出す能力故、近くに『土』が無いと意味をなさないというリスクもある。
メリエスは大きな槍を創り出し、アズの背後を取った。「もらった!」とばかりに槍を突き出し、大きく技名をコールする。
「『ガルダドム』!」
おそらく自分の創った物を一段階強化させる技なのであろう。槍の形状が変化し、虎の速度が上がった。
そして、槍がアズを貫く約1cm手前で……状況はひっくり返った。
「させない! 『ムーブリア』!」
高い声が響き渡り、アズに迫っていた、否、アズに触れた槍が『グニャリ』と曲がった。
「なんだっぺ?」
その一瞬の隙は大きいもので、アズはその場を全力で離脱し、置き土産とばかりに離脱する瞬間メリエスに蹴りを見舞った。
「っ!?」
メリエスの錫杖が地面を叩き、土の盾を形成し辛くもアズの蹴りをしのいだ。
「誰だっぺ! 邪魔すんのは!!」
その視線の先には果たして、決意を込めたような表情をしたマリがいた。
「おまんは。っつうかなんでここにいるっぺか?」
本来なら戦闘ができると判断された者は2人しか入ることが出来ないよう城は形成されたのだが、ここで1つ問題が生じた。城が形成される直前に、マリは自分に能力をかけてアズの背後に隠れていた。気配を感じられないほど自分を弱くして、気づかれない内に敵の力をごっそりと下げてやろうと考えていたのである。それが功を奏し、戦闘ができると判断されずこの部屋に滑り込めたのだ。
「アズさん! クレァさんに何かあったのかもしれないのでしょう? 早く行ってあげてください! ここは私に任せて。貴方しか、ここから抜け出せる人はいないんです!」
「? ……くははっ! 冗談キツイっぺよぉ〜。抜け出すなんてそんなん無理だっぺ」
「ありがとうございますマリさん。マスターは必ず」
メリエスの言葉は華麗にスルーし、アズはゆっくりと目を閉じ、その場からフッ消滅した。
使い魔の能力の一つ『帰還』である。マスターと一定以上離れている場合に、念じる事で即座にマスターの元へと移動できる能力だ。
「んな! どうなってるぺ!?」
「貴方の相手は私です!『ムーブリア』!!」
メリエスのまたがっている虎が急にうめき声を上げ始め、まるでメリエスの重みに耐えられなくなったかのように地に突っ伏し、消滅した。
「ど、どどど、どうしたっぺ!」
マリの『減少』第2の技『ムーブリア』は、無機物の存在力量を減少させる技。槍はその貫通力を失った為ひん曲がり、虎は生命力が減少し次第に衰え、最後には生命力が『マイナス』に達し消滅したのである。
「貴方の能力は私の能力とあまり相性が良くないようですね」
「へへっ!なかなかおもしろくなってきたっぺな」
2人は共に不敵な笑みを浮かべ、周りの空気は一気に緊迫した状態へと突入した。
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「……マスター! ご無事ですか!?」
キュワンッといった軽い音を残し、虚無の空間から存在を表したアズはそう叫んだ。
「あら? 貴方どなた?」
その時、不意に背後からアズへと言葉を投げかけられた。
「その声は!アリ………………」
だが振り向きざまにはなったアズの言葉は、そこで途切れた。
まるで見てはいけないものを見たかのように、脳が現実逃避を始める。
「……へ?」
その余りに惨たらしいまでの現実ショッキング映像により、アズの目から光が消滅するのだった。
どうも『終匠竜』デス。
新年あけましておめでとうございます。
今年はアニメや小説などなど、かなり充実した年となりました。
皆さんはどうでしたか?
今回の話の都合上、いろんな場所で同時刻での展開というのを初めて書いたのですが、大変ですね!
どの戦いもなんかよくわからん展開になってしまうというか、まとまりが上手く付かなくて、どの戦いも決着つかずに不完全燃焼な話になってしまいました。
次回ではアリアとメリエスとの戦いはそれはもうバチコ〜ンと気持ち良く終わらせられるよう頑張りますので、どうか今後も温かい目で見守ってくれたら嬉しいです。
加賀瑠璃とサムレヴィーンとの戦いは次の次となります。
今回の一番の目玉といっても過言でもない戦いとなりそうなので、最後まで引っ張ろうと思います。
この作品を書き始めてから、始めての正月です。
いや〜。そうそう総合ポイントの上がらないこの作品ですが、読んでくれる方々がいてくれているおかげで作者は頑張れております。
今年も『アニメの世界じゃなんとやら』をどうぞよろしくお願いします!!!




