第22話 「筋肉と忍術の妨害!弄月の能力」
「えっ? では今鶴殿の事は『クレァ殿』と呼べば良いのでござるかな?」
「…………はい。…………そうしてもらえると」
現在弄月城の食堂に座って、青い顔をしてため息をついた今鶴の声は、震えていた。
それもそのはずだろう。
「あぁ〜 ………… 俺なにやってんだろ」
自分で勝手に決めた『偽名』を使うということをスッポリ忘れて、堂々と、それはもう素晴らしく我が本名を名乗ったのだから、馬鹿としか言いようがない。
「偽名の話はホテルで聞いていましたが、どうしてそう名乗ったのか、ツッコまないべきかと思いまして……スミマセン」
「ははっ。謝るなよマリ。俺が馬鹿なだけなんだからさ」
「ああ。すっかり忘れてた。つい流されて今鶴と言ってたわ」
「いいんだよライ。加賀瑠璃とも口走った俺では、返す言葉もない」
「今つ、おっとクレァ殿。ま、まあ。元気出してくだされ、よくあることでござるよ」
「励ましてくれるのか? だか何だろう? 最初のは愉快な皮肉なのかな?」
「まぁスターよ。そう悲しい顔をすんな。そんな直接干渉能力なんて珍しいもんなんだし。少しぐらいなら大丈夫だろ」
「……そ、そうか?」
「ああ。その通りでござるよ。」
「……そうか。そうだよな。」
少し自分を取り戻した今鶴は、深く深呼吸をして素早く置いてあったパンにかじりついた。
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〈〈和の国・爆・カー・車内〉〉
「爆・カーが動いたって事は、本当に場所知ってるってことだな」
「嘘なんてつかないでござるよ。まだしばらくかかるでござるがな」
「てか。弄月は名前そのままでいいのか?」
「うーん、偽名も悪くないと思うのでござるがなぁ。今更という感じでござるし」
「まぁ、あれだけのお偉いさんだとなぁ」
今鶴も取り敢えず一国の王なのだが、国王としか呼ばせていないし、自覚も全くないのである。
「今何時ぐらいだ? まだ夜だろう。何でこんな時間に出発したんだ?」
「いろいろあるのでござるよ。というかこの『車』というものは素晴らしいものでござるなぁ。楽であるし、速いし、中は広くてしかも涼しいでござる」
物凄く大きい車であるがゆえにその広さも尋常ではなく、普通の乗用車の形をしたトラックである。
冷暖房完全完備。いろいろな武器が整備されたその戦闘力は、戦車10台分ぐらいは軽くしのぐであろう。
「俺がアニメの中で見た車で一番良さそうなものだ。事故とかないし」
「アニメ?」
「ああこっちの話。こっちの話」
「おいスター。何かくるぞ」
「ああ。そうみたいだな」
スガァァァアァァァァァァァン!!!
巨大な爆音が車内に響いた。だが傷1つつかずに車は走り続けている。
「ガァー! うるっせえなぁ! 誰だ、こんにゃろー!!」
爆・カーを緊急停止させ、今鶴たちが飛び出る。
果たしてそこには、巨大なロケット砲を幾つも担いだ筋肉ゴリマッチョのおじさんがいた。
その時、今鶴たちの時が止まった。
全身真っ白になり口をあんぐりと開けて、ただ呆然と立ち尽くしていた。
延々とマッスルポーズを繰り返しやり続けるおっさんの服装はピチピチパンツ1枚のみ。
「わーい\(^o^)/世界一キモい肉塊があるよ!?」と今鶴は心の中で感想をつづった。
「ンッフーン。我がベリーキュートな肉体に見惚れているのかなお嬢さん方? ンチュッ!」
アズとマリに向かって放たれた暗黒強のブラックレーザーは、アズの全身を逆だたせ、マリを固まったまま口から魂を吐き出し倒れさせるに値した。
そして今鶴の後頭部に血管が浮き出る。
「テンメェーー! キモいんだよ! 今すぐ消えろ! それとも俺がこの手で直接消してやろうか? あぁん!!」
そう言って中指を突き出す今鶴に
「クレァ殿! 上でござる!!」
上空から奇襲がかかった。
「うおっとたったった! 危ね〜。サンキュー」
辛くも奇襲を回避した今鶴は、心の中でかなり動揺していた。
気配を全く感じなかったのだ。暗闇から突如何処からともなく現れた相手に小刀を向けられたとあっては、動揺しないこともないだろう。
「ほほう。我が最強忍法『忍びの術』を見破るとは。お主なかなかの手練れだな」
成る程、奴は忍者か。忍ぶ事のエキスパートとあってはあれだけの力は頷ける。
と勝手に解釈をした今鶴は、
で? どうする?
と新たに動揺するきっかけを自分で作り出し、目を回していた。
「おい! お主。忍びと言っていたでござるな。何の目的で拙者らを襲ったかはわからぬが、名を名乗ったらどうでござるか!」
「おおう。これは失敬。我は『影』。以後お見知り置きを。」
「影?」
「ふふふ。拙者の能力と同じだ。」
「成る程。お主の気配が感じられぬのは、この暗闇に溶け込ませておるのでござるな。拙者も名乗ろう、我が名は」
「いや結構。興味もない」
「そうでござるか?」
ああーややこしい! 暗くてどっちがどっちかわからん!!
と今鶴は頭をかきむしっていた。
「では。名も知らぬ侍よ。その命、頂戴いたす」
サーッと消えたかと思うと、弄月の脇腹に軽く傷がついた。
「グッ!」
はっはっはぁぁぁぁぁ!!悪いが諦めるんだなぁぁぁ!!
ズバッズバッズバッ
幾つも弄月の体に傷がついている。
「ぐああああああ!!!」
「おい!ちょっと待ってろ!今俺も」
「クレァ殿! 此処は、拙者に任せてほしいでござるよ」
「えっ?でも」
スッと目を閉じた弄月は、中腰になり、長く息を吐き出し、手を腰に滑らせた。
「カードセット! 『両断』! 抜刀・左脇差し!」
ブワッと白いオーラが弄月を包んだ。
「神経を研ぎ澄まし・集中の限界を突破し・心を解放し・見えない真実を捕まえる!!」
無駄だぁぁぁぁぁぁぁ!!
「『奥義』・『鏡花切断』!」
スパァンッ!
白い円を描いて空虚に向かって降り抜かれた白く輝く刀は、一瞬巨大なエネルギーを放出し、輝きを失った。
そして
「ぐうおぁああぁぁぁあ!!!」
腹を支えて倒れる忍びの姿がそこにあった。
「安心するでござるよ。峰打ちでござる」
弄月のその言葉はもう聞こえていないのか、倒れたままピクリとも動かない忍びに対し、言葉を続ける。
「切り捨て御免」
どうも『終匠竜』デス。
第4回目プロフィール発表!!
今回はマリで。
本名:ローレシア・マリン
年齢:15歳
所有カード:『減少』
使用可能技:『減少』・『ムーブ』『ムーブリア』『ザ・ムーブルス』『?』『?』
キャラ設定:ふわっとウェーブのかかった銀色の髪に、琥珀色の澄み切った瞳。だいぶ人見知りで、普段顔を隠している(今鶴たちと一緒に行動するようになって、フードをつけるのを止めてきている)。フロンティア・フェスティバルの決勝戦で今鶴に惚れる。今鶴たちにより、人間として、女としても成長してきているようだ。
ってな感じですかね?
マリも結構強い設定にしたいっすね。使える技を少しチートにしようかな?




