第17話 「修羅場降臨!想い爆発!!」
「さて……。取り敢えず『病原菌』のカードはゲット出来たものの、どうすっかね〜」
「やっぱり……。その……使ってみるしかないんじゃないですか?」
「いや、マリよ。それはな『取り憑かれたことが無い者』の考えだ。結構精神がやられるんだぞ?特にこれは『紫』の高レベルカードだ。危険度も群を抜いてる。あの国の王の側近もそう言ってただろう」
…………時は少々遡り、カード授与式……
「優勝おめでとうございます。スター殿。私は『ランス』。フロンティアフェスティバルの司会者及び、現代国王のお側人です」
「はぁ……、どうも」
「これが優勝商品、『病原菌』のカードです」
「おおぉ!これは……」
純色の紫に輝くカードは、超極濃密度のケースに入れられても焦る事なく、その存在感を露わにしていた。
「つきましては、そのカードの注意点をいくつか……」
「………へ?」
「実はこのカード、ただの一度も使われているところを見た者がいないんです。前の所有者が誰だったのか、それすら分からずにこの王国へと流れ込んできました。『紫』のカードは『黒』のカードの次に危険なカード色のカードでもあります。精神作用や障害。このカードを使い何が起こるかは、誰も知らないのです」
「…………あのなぁ……んな物景品に出してんじゃねえぇえよ!!!!ふざけんな!!じゃあ何か、「使ってもいいですけど、何が起こっても保証しませんよ」って事か!!!」
「はい、その通りです」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!!!! …………はぁ。話がうますぎると思ったよ」
「すいません。国王様は、なにぶんお祭りが好きな方でして…………どうしても強い方にお越しいただくには、やはりこういったものを景品にしなければいけませんので。ですが!そのカードがレベル10だというのは、しっかりと鑑定能力を使って検証済みです。強力なカードだというのも保証できます!!!!」
「はぁ、わかったよ。取り敢えず貰っとくよ」
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「…………って感じで、今に至るわけだろ?」
「…………そうでしたねぇ〜。」
「あっそういえば。聞きたかったんですけど、『カード』って…………その……き、『危険』な物なんですか?」
「いや、物によるよ。特に、暗く薄暗い方に位置する色はかなり力を発する分、危険が多いんだよ」
「そうですか。あの……それで…………ラ、ライさんというのはどんな方で?」
「お前本当に人見知りなんだな。その質問5度目だぞ」
軽く呆れたように今鶴は苦笑いする。
「すみません。安心できる方なら大丈夫なんですけど。怖い人かと思うと、やっぱり不安で……」
「いいっていいって。要するに、俺は少なくとも安心できるってことだろ? それだけで嬉しいよ」
そう言ってマリの頭を撫でる今鶴。
目をパチクリとごかし、即座にサッと顔を俯かせるマリ。顔が真っ赤になっているの隠すためと、もう1つ、口元がどうしても緩んでしまい、だらし無い顔になってしまっていたのを見られたくなかったからである。
そんなようなピンク色の空気を漂わせる2人に、割って入るのは、小さな少女であった。
「マスターー? そろそろ、ライさんとの待ち合わせ場所に着きますよぉ〜」
「おおぉう!! わっわかった〜〜!! わかったから、そんな目で俺を見ないで!!!」
絶対零度のジト目を向けられ、ヒ〜!と声を上げる今鶴に、また違った方向から声がかかった。
「おーい。今つぅうおっと! スターよぉ〜い。こっちだ〜」
と無表情で低いトーンのまま大きな声をあげて、今鶴とつい呼びそうになったのは他でもない。ライもとい加賀瑠璃だ。
「おおー!!! 加賀瑠璃よーー!!! 会いたかったゾーーー!!!! テメェをぶっ飛ばすためになぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「うおァァァァァぁぁぁぁぁぁ!!!!! ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
ズドオォォアァァァァァァン!!!!
ニッコリとした顔の額にははっきりとした血管が浮き出ており、いい笑顔のまま、輝く右腕は地面を陥没させた。惜しくも加賀瑠璃は即座に反応し、地面を転がるように避けた。
「いいじゃないか!!!! あの時みたいに剣とか出して対処できたんだろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ぶっちゃけて言うと、加賀瑠璃との死闘の時も同じように『魔剣』を取り出して戦ったのだ。
そうでなければ、何も知らない今鶴が戦い慣れている加賀瑠璃に勝てるわけがないのだ。
もちろんティルブリンガーではないが、同等か、又はそれ以上の危険なものを使ったのも確かである。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 使いたくなかったけどテメェがいなかったから使うハメになったんだろうガァァァァ!!!!しかもあんな強力なやつを!!!危なかったんだぞおおおお!!!!」
「悪か、ちょっ、悪かったって!だから、頼むから拳を止めてくれーーーー!!!!!」
ズドオォン!ズドオォン!ズドオォン!
地面に多数のクレーターを作ろうとも、対象自体がものすごくうまく避けるので、とうとう今鶴が諦めた。
「はぁ!はぁ!さあ、説明してもらおうか?なんであの時お前いなかった!」
「分かんないって!気づいたらお前消えてるし。あ、でもあらゆるビルにモニターが察知されていて、全国放送されていたみたいだから、内容は知ってる。」
「そうか。なら話が早い!俺の状態見てたんならわかるだろ!わかってんなら一発殴らせろ!」
「ん?おい、そこにいるのはアレか?スターに抱きついた女の子か?」
果てしない暴論を叩き込む今鶴を華麗にスルーし、視線をマリの方へと持っていく。
「…………あ、あの『マリ』……です。…………宜しくお願いします」
「宜しく?」
「あ?ああ。マリも俺たちと一緒に行動する事になったんだ」
「ふむ……。まぁ詳しい話は後でゆっくりするとして、取り敢えず宿にでも行かんか?」
その加賀瑠璃の一言に3人は深く同意し、話の続きはホテルへと持ち越された。
〈〈マルキース王国・最高級ホテル・スイートルーム〉〉
「…………おい!」
「話は全部まとまったんだから自分の部屋に戻れよ!ライを見習え!」
レオの修行の事、魔剣の事、マリを仲間に加える事、全てを事細かく説明し、加賀瑠璃も自分がなぜその場に行けなかったのか「おそらく…………」と前置きをおいて詳しく説明し、(最終的にやっぱり今鶴に殴られた)全員納得しその場は解散した。…………はずなのだが。何故かアズとマリが今鶴の部屋から退室を拒んでいた。
「アズさんが部屋から出るなら、私も、その…………出ますけど」
「マリさんが退室するのであれば、考えてもいいですよ」
バチバチッバチ!!と火花を散らす2人は再び口論を始める。
「そもそもがおかしいです。女性が男性の方の部屋に1人で残るなんて〜!クレァさんの身にもしもの事があっては困ります!」
「貴方が困る理由なんてあるんですか〜?別にいいじゃないですか、私は少しでも好きな人のそばにいたいだけなんです。貴方はどうして私の邪魔をしようとするんですか?」
ニッコリと、それでいて挑発的なその顔は『貴方は「好き」と面と向かって言えますか?』と言った言葉を含んでいた。
何かを考えるような感じだったマリは、即座に覚悟を決めたような顔をした。
そして、ザッと今鶴の前に立つ。
「ク………………クッ…………クレァさん!!」
「はっはい!」
マリは強く意思のこもった言葉とは裏腹に、顔を真っ赤にしどこか懇願するような上目遣いで今鶴を見た。
今鶴は勿論、その場で神経がオーバーヒートを起こし、意識を切り離そうとした。しかし、それを許さない一撃が、意識を半ば強引に引き戻す。
「……す、すすす『好き』なんです!!守ってくれた時から、ずっと好きでしたー!!!」
「…………………………………………なんだって?」
「んん〜。ん?はっはっはっオーケー話し合おう。…………えーと好き?スキ?すき?LOVE?トモダチッ?好き?何で?好き?ワッツ!あぁ〜友達的なね。あれね。好きね。スキッ。すき?ん?すきって何だっけ?」
マリの言葉は今鶴の脳の許容範囲をマッハで突き抜け、脳は自然と現実逃避を始める。
だがしかし、逃げ道は事あるごとに閉鎖される。ある意味エグい。天然の第2の死神の降臨である。
「そうです!その好きです!ラブなんです!!」
「何でだ!何でそうなった!おかしいでしょ!何で俺なの!」
「何でと言われましても…………き、気づいたら好きになっちゃってたんですよ!!!!」
『本気』だという事は凄く伝わってくる。
顔は耳まで真っ赤にし、目には小さく涙が溜まっている。おそらく死ぬほど恥ずかしいのであろう。
当然だ。初恋の相手に初めての告白ときたもんだ。それに緊張しないなんて言ったら嘘だろう。
それでもしっかりと、潤んだ目で今鶴の目を見つめている。
「…………俺は、お前が思うようなやつじゃないと思うぞ。ボッチだし。バカだし。やる事なす事失敗ばかり。全然かっこいいところなんてどこにも無いんだぞ?」
「…………クレァさんは、私を助けてくれました。本当だったらもう死んじゃっててもおかしくないのに、生きていられるのはクレァさんのおかげなんです。…………だから、かっこいいところがないなんて、そんな事ありません!凄く、物凄くかっこよかったです!!あの背中を見た時、白馬の王子様はいるんだって思いました。クレァさんは私の、王子様なんです!!!」
そう宣言するマリに、誰がはぐらかすなんて事なんかできようか。今鶴はここまで自分を思ってくれていた事を肌で感じ、嬉しいを通り越して、本気で泣きそうになった。
「わかった。…………ありがとう。なんか、俺なんかをそんな風に言ってくれて。その、すぐに答えが出せそうにないんだ。正直困惑してる。でも、物凄く嬉しい事は確かだ。マリみたいな可愛い子にそんな風に言ってもらえただけで、俺、泣きそう、グスッ」
「クッ、クレァさん?」
「あ、ちょっ、大丈夫。ゴホンッ!ちゃんと、今日の事は真剣に考える。ちょっと時間がかかるかもしれねぇけど。その時にまだ、俺の事をそんな風に思ってくれていたら、ちゃんと返事をするから。そういう訳で改めて!宜しくな!マリ!」
マリはパァーといったような笑顔の花を咲かせ、今鶴はついドキッとしてしまった。
「はい!宜しくお願いします!」
と言って安心したように目尻に溜まった涙を笑顔で拭くマリと、その顔に見とれていた今鶴に、ずっと黙って最後までその場を見届けたアズが今鶴に抱きつき、首を突っ込んでくる。
「マスターもホンットに鈍いですよねぇー。マリさんの気持ち、普通なら気づきそうなものなのに」
「エ!もしかしてお前!知ってたのか!?」
「知ってたというかすぐに気づきましたよ。多分レオさんも、ライさんも気づいてたと思いますよ?」
「嘘〜〜ん!!マジでくぁー!!!」
自分の察知能力はそれほどまでに低いのかと、心で涙し、行動で頭を押さえた。
そしてアズは、再びマリに話しかける。
「でも、やっぱりマスターは渡しませんよ。マスターは、私が貰うんですから」
「 望むところです。アズさん。絶対にクレァさんには私を好きになってもらいますから」
「意外としっかりとした女性で安心しました。私もうかうかしてられませんね。宜しく。マリさん」
「こちらこそ。やっぱりライバルがいないと盛り上がりませんしね。宜しくお願いします」
ウフフッと、さっきの口論とは違うとても和やかな雰囲気に、今鶴は一瞬キョトンとした顔になるが、すぐにやれやれといった苦笑いとなり、「一件落着ってやつかな?」と心の中で言いまとめた。
そして、そのすぐ隣の部屋で、加賀瑠璃が壁にもたれかかりながらその一部始終を聞いており、心の中で今鶴に「今鶴……ファイト」と静かにエールを送るのだった………………
どうも、『終匠竜』デス。
なんか修羅場回というかマリの告白回みたいになっちゃいました。告白シーンとか初めて書きましたけど、いやーヤバイっスね。凄く難しいです。
こんなに難しいものを作者の皆様は書いておられたのですね!
メッチャ尊敬します。
なにぶん至らない所もありますが、次回も一生懸命書かせていただきますので、どうぞ宜しくお願いします!!




