第12話 「ほんわりのどかに爆発してください」
「あーあぁ。やっちまったよ…………」
魂のエネルギーの大量消費を覚悟の上で、『ブースト』を足にかけ、時間が切れたら再び技をかけるを繰り返し街を高速で走りまくった今鶴は、自分の嫌〜な予感を見事に的中さしてくれた加賀瑠璃を前に、眉間を押さえ大きなため息をついた。
「嫌、あの〜、な。その〜〜別に俺が悪いわけではなくてだな。ただ〜、うん。わかるだろ?」
冷や汗ダラダラで「自分は悪くない」と全力で言い訳をこころをる加賀瑠璃に、暗くニッッコリとした笑顔を向けたまま、今鶴は口を開ける。
「わかるかぁぁぁぁぁぁぁ! そんなもん!!!!」
ズガァァン!
重く凄まじいゲンコツが加賀瑠璃の顔面に炸裂した。尚も今鶴は叫ぶ
「てんめぇぇ! いつの間にか姿を消して、人が闘ってる間に(余裕ではあったが)何してるかと思えば、『ルールを無視して襲ってくる敵、返り討ちにしてどーすんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』」
そう、今鶴が想定していた中でも最も最悪の部類に位置していた『ルール違反』である。
まだそうとは限らないが、そもそもが一度敵と闘ったらその場で今日は戦闘は終わりなのである。
そこに持ってきて、再び敵を攻撃するというのは明確なルール違反なのである。要するに、『襲われたからといって返り討ちにしてしまっては、加賀瑠璃もルールを違反した事になるのではないか』ということだ。
そして、追い打ちをかけるように『これはチーム戦』だ。加賀瑠璃が失格。退場にでもなれば俺も連帯責任で失格になるのでは?と今鶴は考えていた。
レベル10のカードを手に入れる手段が一つ削れたと今鶴は乾いた笑みを浮かべ膝から崩れ落ち。加賀瑠璃は、大丈夫だ。俺は悪くない。と光のない目で繰り返していた。
絶望といった言葉はこの時のためにあったのか。そう全人類が信じ込んでしまうであろう世界が、そこには形成されていた。
〈〈マルキース王国・ホテル〉〉
いつまでも落ち込んでいるわけにもいかない。取り敢えず冷静に状況を判断しようと、今鶴はある少女の名前を呼んだ。
「『アズ』出てきてくれ」
キュワァン!
といった軽やかな音と共に、何も無かったはずの空間に一人の少女が生成された。
「はい!マスター」
手を後ろで組み、上機嫌にそれでいて上目遣いで今鶴に話しかけ「あぁ!」と今鶴の目がくらんだ。
ニコッと笑った顔は素晴らしく綺麗で直視できない。最初の「〜なのか?」とか「〜なのだ」といった口調が嘘のように綺麗な喋り方だ。
アズ曰く「マスターのお好きな喋り方に変えました。」(ニコッ)だそうだ。
「マスター?」
我が主の行動を訝しみ軽く拗ねたように再び呼びかける。
「ふぅ。OK。大丈夫だ。いろいろと確認したいことが…………」
「プロポーズなら喜んでお受けいたしますよ」
今鶴の理性を一発で刈り取る一撃が不意打ち紛いに叩き込まれ「ごふぁあぁ!」といった異様な絶叫を今鶴は余儀なくされた。
「は、ははHAHAHA。ん〜ん? オ、オーケー。ちよ〜っと落ち着きたMAへよ。アズさんよ。じょ、冗談が過ぎるのではないか〜。HAHAHA」
まさしく、落ち着いていない人間のそれである。
勿論アズのような美少女にこういった風にされるのは、今鶴とて男。嬉しくないわけがない。毎日毎日アズはあの手この手で、今鶴にアピールをし続けている。
今鶴はそれに応えられる気持ちを持っている。だがしかし、今鶴は自分の気持ちを押し殺す。
全ては、『ロリ○ン』のレッテルを貼られることを恐れてである。何というチキンハート。自分でもそう思う。
「マスター………」
シュンッ。それを全身で体現したかのごとく、それは今鶴の動揺を加速させる。
「おぉおおお! アズよ。そんな顔をするでない。大丈夫だよ。プロポーズでは無いが、嫌いというわけでも無いし、逆に……いやいやいや! そんな事を話すがために呼んだんじゃないって!!」
「ふふっ。すみませんマスター」
ワザとなの?ワザとだよねぇ!と頭を抱え叫ぶ今鶴。アズといえば今鶴の「嫌いでは無い」という言葉を思い返し、顔を赤らめ思わずふふっと笑っている始末だ。
「大会の事ですよね」
「あ、ああそうだ」
さてどうするべきか?
そんな風に少女に相談するのはおかしいのでは?
そう思う方もいるだろう。彼女はこの世界では実に珍しい『使い魔』としての存在なのだ。使い魔とは、主人と思念で会話ができたり、主人のカードのレベルや技の種類を教えてくれたりとかしてくれる実に便利な存在なのだ。まぁ、自我を持っている個体は激レア中の激レアなのだが……
それは置いといて、だからこそ、この場面でアズに相談するのは極めて当然なのである。
「問題無いと思いますよ」
「へ?」
「確かに『その場で勝負は終わり』などと書かれておりますが、『敵と闘ってはいけない』とは名義されておりません」
「え? た、確かにそうだけどさぁ」
ちょっと屁理屈すぎやしないか?と今鶴は呟くが、「大丈夫だ」と念を押す。
「既に、『闘いが終わって安心していたら、襲われた』などといった苦情を申し入れたチームが幾つも存在します」
「そ、それで…………」
「本部から、『油断するテメエらが悪いんだよ!プギャーwwwww』といった返信が送られているそうです。」
「タチ悪いなおい!」
返信を送られた人間の心情を予想し心の底から同情するものの
「あっぶねー! ラッキー」
安心という感情が同情など消し去り、自分の安否を喜ぶのであった……
どうも『終匠竜』デス。
遅まきながら、第1話〜第7話。かなり大きく改造してしまい、どうもすみませんでした。
改造する前にその話をよんでくれた方が見直した時は、
「なんじゃこりゃ!」
と、さぞ思ったことでしょう。
これも全て設定の甘い作者のせいであります。猛省しております。
今後こういったことはないよう、全力を尽くし小説を書きます。 又、出来るだけ更新速度を速め、ページ数も増やしていこうと思っております。
コメント、感想などなど、いただけたら幸いです。今後もどうぞよろしくお願い致します。




