第11話 「1回戦開始!『ブースト』奥義炸裂!?」
静かだ。
何が静かって?
この場所がだ。
各地で戦闘が行われているならば、もっとやかましくていいはずだが。
静かすぎる。
そして、今一番の問題は…………
「あんの野郎ォォォ! どこいきやがったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
加賀瑠璃が、消えたことである。
「くそ〜。何処だよあいつ! 面倒くせぇなぁ」
ウロウロと敵の方へ向かっていく今鶴であるが、決して戦闘になって困るわけではない。
ただし問題は、加賀瑠璃が何処かで何かルール違反でもしないかである。普段は大人しく口数も少ないが、こと戦闘にあたっては人が変わったように暴走するのである。
つまり、ここは加賀瑠璃を先に見つけるのが得策なのであるが。
今、今鶴が1人であることは敵チームにもバレており、今この時を敵が逃すはずもなく……
「! きたか?」
1人は巨大なサイボーグのような体つき、もう1人は小柄な少年。
おそらくサイボーグの方はカードを使っているであろう。背中についたジェット機により少年を抱え浮遊している。
その瞬間空間が歪み、周りの風景が一変した。そこで今鶴は理解する。対戦者同士が遭遇すると、その場で戦闘専用の空間に飛ばされるのだと。
「君が、『チーム・スターライ』ですか?」
ふむ、サイボーグの声軽く高いな。似合わん。
「そうだけど?あんたらが俺の対戦相手?」
「私は『機械』のカード所有者、パワァーです」
「僕は『血液』のカード所有者、ユラクティグ・スルー・エータ・ロイと申します」
「中二病?」
「本名です!」
「えーと。俺は……」
「あなたは名乗らなくて結構です。どうせすぐ死ぬので」
「あらそう。んじゃ遠慮なく」
フォンッ
といった音を残して今鶴が消えたように見えたであろう二人に知る由は無い。今この瞬間、今鶴が瞬時に浮遊する二人の背後に回り込み、技を使用する一歩手前だという事に。
「『ブースト』同時三連出力」
今鶴の右腕が、3発分のブーストの輝きに包まれる。
「! ヤバい!パワァー。後ろ…………」
「『奥義』・『超重圧弾』!」
後ろを振り向こうとした二人に容赦なき鬼の一撃が見事に炸裂し、はるか地中まで埋められていく姿を見ながら、今鶴はこう吐きすてる。
「よっしゃ! あ、でもあいつら。埋めちまったけど、どうやって元の場所に戻んのかな?」




