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物書きさんに50のお題:10

10、交換条件


 地面と水平な弧を描き、木刀は空を切った。

「もらったぁあ!!」

 響いた怒声が大気を震わせ、重い振動となって頭上からのしかかって来る。

 視線をあげると木刀を手にした男が、太陽を背にずいぶんと高い位置に見えた。竹刀の斬撃を真上に跳躍してかわしたらしく、男の両足は今も地面についてはいない。

「……っち!」

 舌打ちをして、男を睨んだまま後ろに飛んだ。

 男の怪力に重力を掛けあわせた一撃は、例え竹刀を盾にしたところで、それすら破壊する力を持っているだろう。しかし多大な力を必要とするため、大振りなうえ動きに溜めがあり、回避は容易だった

「うおぉりゃぁ!!」

 掛け声と共に、木製の刀身が地面に叩きつけられる。

 衝撃が大地に伝わり、男を中心に周囲の砂利と砂粒が真上に跳ね上げる。

 たちまち砂埃が立ち込めて、男の姿を隠した。

「今のをよけるったぁ流石だぜ! なぁ! 副会長さんよぉ!!」

 砂のフィルターの向こうで男の嬉々とした声が聞こえる。

「ストップ! 待ったです! 先輩に会長さん!! 何やってるんですか! やめてくださいよ!」

 周囲の人垣を押しのけて、一人の少女が割り込んだ。

「おい、ガキ。退きやがれ! これは俺とこいつの問題だ」

「何言ってるんですか! 会長さん! そういう問題じゃないですよ! 防具もなしにそんな凶器振り回したら、もし直撃したら怪我は免れませんよ!!」

 男の怒鳴り声に負けない声量を上げて、少女は睨む。

「それに会長さんは昨日急に倒れたばかりじゃないですか! 最近働き過ぎでしたし過労ですよ! 無理しないでください!」

「……話になんねぇなぁ」

 生徒会長は再び木刀を構えた。

 今、この男の精神状態は正常ではない。例え少女が間に居ようがお構いなく木刀を振り回すだろう。

「……下がってろ」

 男の様子を伺いながら、少女に告げる。

「嫌ですよ! それに先輩も先輩です! 病院を抜け出した会長さんを連れ戻すために会長さんを探していたのではなかったのですか!」

 悲鳴のように少女が叫んだ。

「無論。そのつもりだ」

「……っへ? ならどうして……」

 キョトンとした顔を少女が向けた。

「この馬鹿に言葉で説明しても無意味だ。病院に閉じ込めるなら足の2・3本折った方が早い」

「……ふぇー!!! せ、先輩。まさかそんなくだらない理由でこのような死闘を繰り広げてるんですか!?」

「くだらない? ちげぇな……これは互いに譲れねぇモノを賭けた戦いだぜ!」

 素っ頓狂な声を上げた少女に男が答える。

「昨日は倒れた俺を運んだのはこいつらしいな。俺は借りを作らねぇ主義でな。この戦い。俺が勝ったら借りは無しだ! んでこいつが勝ったら、しかたねぇえがしばらく寝ててやる! そいういうことだぜ!!」

 男は地面を蹴り、再び襲いかかってくる。間に入った少女の存在は、やはり無視して攻撃をしてきたが、極力巻き込まないようにしているのだけは分かった。しかしそれはこちらも同じ事で、どうしても動きに制約が出来てしまう。大きな動きが取れず、出来るだけ最小限の動きで木刀を躱すが、剣先は重い割に素早い。すぐに捉えられて、竹刀で受け止めることを余儀なくされた。

 瞬間、バキリと嫌な音が竹刀から聞こえた。見れば木刀を受け止めた竹刀に蜘蛛の巣状の亀裂が入っている。

「今度こそもらったぁあ!」

 竹刀の刀身に半ば埋没している木刀に、さらなる力が込められる。竹刀を砕き、そのまま仕掛ける気なのだろう。

「……しかたない」

 竹刀を手放し、打ち下ろされる木刀に向かって拳をつきだした。直ぐに拳に木刀がぶつかるのが分かり、同時に木を砕く感触が伝わる。

「せ、先輩……。木刀を素手で折るとか……人間ですか?」

「いいじゃねぇか! やっと本気を出す気になったみてぇだな!!」

 折れた木刀を投げ捨てて、生き生きとした表情を浮かべる男。その隣で少女が呆れた表情で立っていた。

「……というか借りを作らないとか言って、会長さんはいっつも私に仕事回してるじゃないですか? それも借りですよね? だとすれば私はどれだけ会長さんに借りがあるのです?」

 少女の言葉に、場の温度が一気に下がった気がした。

「……あれ? 会長さん。どうしました?」

 生徒会長が固まった表情を少女に向けている。

「……おいガキ」

「何です?」

「俺が勝ったら借りは無しだ!! ただしテメェが勝ったらコイツとの戦いは止めてやる!!」

「え? えーと? えぇーーーーー!!!!!?」

 言葉を理解した少女は、慌てて身を翻すと人混み向かって突っ込んだ。

「逃げんじゃねぇ! 勝負だ!!」

「ひぇー!! お助け下さいー!!」

 昼休みが終わるまで、まだ30分以上時間がありそうだった。

本来ならまったくチャンバラなテーマではなかったのですが、なんとなく刀を持って戦うようなシーンが書きたくなって……、その結果こんな感じの話になりました……。

とは言えこれを書いたのは実は10月9日。そして10月27日である今日はお題が25個で丁度半分書き上がったおります……。

んー、本当は何を思ってチャンバラにしたのか、イマイチ覚えていない……。

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