スピンオフ(3)「伝達の神」
※本編のスピンオフ短編です。
まだ読まれていない方は、第一章プロローグから読むと
チト詰みの世界が分かりやすいと思います。
現在、第二章(学園編)も準備中。
更新までの間、少しだけ寄り道の物語です。
もしも言の座の神々が、日本に転生していたら?
伝達の神 テオ・テリオン
たぶん、癒し系Vtuber。
配信者ネーム:りおん
⸻
「こんばんは。」
やわらかい声が、配信に流れる。
画面には、やさしく微笑む青年のアバター。
「りおんです。」
コメント欄がゆっくり流れる。
『こんばんはー』
『今日も来ました』
『癒し』
りおんは少し照れたように笑う。
「今日は、雑談配信にしようかなって思ってます。
眠れない人とか、作業してる人とか。
よかったら、ゆっくり聞いていってください。」
コメントが流れる。
『癒される』
『声が優しい』
『今日も助かる』
りおんは少し首をかしげる。
「僕の声……ちゃんと届いてます?」
コメントが反応する。
『届いてるよ!』
『めっちゃ届いてる』
『世界に届いてる』
りおんは安心したように笑った。
「よかった。
声って、不思議ですよね。
同じ言葉でも、言い方で全然違う。
怒ってるみたいに聞こえたり、優しく聞こえたり。」
少し考える。
「だから僕、思うんです。
言葉って、届け方が大事なんだなって。」
コメント欄が盛り上がる。
『いいこと言う』
『それな』
『今日も哲学』
りおんは笑った。
「哲学じゃないですよ。
ただの雑談です。」
コメントは続く。
『癒し』
『寝落ちする』
りおんは少し小さな声で言う。
「それなら嬉しいです。
今日は、みんなゆっくり休んでくださいね。」
⸻
その頃。
ベッドの上。
イヤホンをつけた少女が、布団に潜っていた。
陽月 澪音子。
スマホの画面には配信アプリ。
見ている画面には、こう表示されていた。
りおん|雑談配信
ミーナは目を閉じながらつぶやく。
「今日も……りおくんの配信聞きながら眠ろ。」
りおんの声が、やさしく流れてくる。
「眠れない人、大丈夫ですよ。
僕、ここにいますから。」
ミーナは少し笑った。
「やさし……」
スマホの画面にはコメントが流れている。
『声届いてるよ』
『いつもありがとう』
ミーナはまだ知らない。
この声が、
ただの配信者の声ではないことを。
そして。
その言葉が、
だれかの心へ優しさを届けるものであることを。
⸻
画面の向こうで、りおんは優しく言った。
「僕の声、届いてる?」
コメント欄
『届いてる』
⸻
――記録は、まだ続く。




