スピンオフ(1)「記録の神」
※本編のスピンオフ短編です。
まだお読みでない方は、第一章プロローグから読むと
チト詰みの世界が分かりやすいと思います。
現在、第二章(学園編)も準備中。
更新までの間、少しだけ寄り道の物語です。
もしも言の座の神々が、日本に転生していたら?
記録の神 テオ・クロネル
たぶん、「小説家になろう」に投稿するweb小説家。
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夜。
静かな部屋に、キーボードの音だけが響いている。
カタ、カタ、カタ。
机の上にはノートとペン。
開かれたパソコン。
画面には、小説投稿サイト。
ペンネーム。
黒猫ネル。
カーソルが、ゆっくりと動く。
ネルは少しだけ考えた。
――もしも。
もしも、言葉を司る神々が、
この日本という世界に生まれたら。
彼らは、どんな生き方をするのだろう。
表現する者。
伝える者。
記録する者。
考える者。
それぞれの役割を持つ神々が、
この世界で普通に暮らしていたら。
ネルは小さく笑った。
「ふふ……今日はどの記録を残そうかしら。」
カタ、カタ、カタ。
文章が画面に浮かび上がる。
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もしも言の座の神々が、日本に転生していたら?
〜なお本人たちは普通に暮らしている模様〜
最新話 投稿
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ネルは少しだけ指を止めたあと、
静かに「投稿」を押した。
カチ。
画面が更新される。
投稿完了。
新しい記録が公開された。
ネルは満足そうに画面を眺める。
「さて。
次は、誰を書こうかしら。」
窓の外には、静かな夜。
星が瞬いている。
ネルは再びキーボードに手を置いた。
カタ、カタ、カタ。
記録は続く。
物語は、まだ終わらない。
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その頃。
ベッドの上でスマホを見ていた少女が、声を上げた。
「あっ!」
陽月 澪音子。
この世界でのミーナの名前だ。
画面を見つめて、目を輝かせる。
「“もし神”の最新話、更新されてる!」
布団に潜り込みながら、にやっと笑う。
「やった、寝る前に読むのにちょうどいい!」
スマホの画面には、こう表示されていた。
作者:黒猫ネル
ミーナはまだ知らない。
この物語が、
ただの小説ではないことを。
そして。
作者が、
ただの小説家でもないことを。
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静かな部屋で、ネルは空を見上げる。
「……記録は、始まったばかり。」
カタ、カタ、カタ。
新しい物語が、また紡がれていく。
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――記録は、まだ続く。




