表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート召喚魔導士は、だいたいどこかで詰みかける。  作者: 月野みみ
第1章 はじまりの”言葉”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/24

EP1「ヤバい!(1)」


「ヤバいヤバいヤバい!!」


陽月あかづき 澪音子みなこは家を飛び出した。


「入学式で寝坊ってなに!? ほんとに最悪なんだけど!!」


制服は完璧。

昨晩きっちりアイロンをかけた。

カバンの中身もチェック済み。

準備は完璧だった。


目覚まし以外は。


「これで遅刻とか、最高にお笑いじゃん!

ヤバすぎ!!」


駅まで全力疾走。

信号が赤。


「うわぁ、マジかぁ……!」


息を切らしながら、小さく呟く。


「turn green, turn green, turn green……」


中学の英語の先生の真似から始まった癖。

おまじないみたいに、英語でお願いする。

信号が青に変わる。


「え、ウソ。So lucky!」


走る。

改札前、人混み。


「ムリムリムリ!」


小声で。


「go away, go away, go away……」


なぜか自分の前の改札だけ、人が流れるようにいなくなる。


「は? なにこれ、ヤバっ!

I'm the luckiest girl!」


ホームへの階段を駆け降りる。

目の前で、電車の扉が閉まりかけている。


「ちょ、待って――!」


思わず叫んだ。


"STOP!!!!」"


その言葉は命令だった。


発車の音楽が途切れた。

扉は閉まるきる寸前で凍りついた。

電車だけじゃない…


世界が止まった。


音が消えた。

人々は彫像のように静止している。

風だけが、ミーナの髪を揺らす。


「……え?」


その静寂の中で、声が聞こえた。


―ミーナ・アカヅキ、こっちへおいで―


足元に、光が走る。

英語の文字が、円を描いて浮かび上がる。


“Come to the other end.”


「え……?」


光が弾けた。

足場が消える。


落ちる。


空も、音も、時間も、すべてが反転する。


「ヤバいって……!」


その言葉を最後に、ミーナの世界は途切れた。



-----------------------------------------------------------------------------



――どさっ。


「いっった……!」


固い地面に投げ出され、ミーナは顔を上げる。

ホームへの階段から落ちたと思っていた。

でも目の前には電車がない。


そのかわり、空が、青い。

でも、知らない青だ。

見たことのない形の雲。

見たことのないレンガ造りの建物。


「……なにここ。」


胸の奥が、ひやりと冷える。


「え、ちょっと待って。

さっきまで駅だったよね?

入学式だよね? これ夢?

いやでも痛いし…」


とりあえず立つ。

動く。

動かないとどうにもならない。

それがミーナの性格だった。

そのとき、背後から、落ち着いた声がした。


“Are you injured?”


ミーナが振り返る。

広場の石畳の上。

ミーナの前に、ふわりと影が落ちる。

クリーム色の長い毛並み。

ふわふわの尻尾。

アクアブルーの瞳。


「……猫?」


毛並みの美しい猫が、優雅に座っていた。

そして、口を開く。


“Did you hit your head?

Are you all right?”


「え?…しゃべる猫?」


不思議なことはいっぱいある。

とにかく目の前のことから始めるしかなかった。


「よかったあー! 英語分かる!」


なんとか聞き取れたことに安心して、にっこり笑う。


「I'm fine!

I think… maybe.

Um, where am I?”」


アクアブルーの瞳が、わずかに細くなる。

そして、流れるような発音で話し始める。


“You have been summoned to the realm governed by the Word.

This is not your original world.

Please remain calm and follow my instructions.

There are multiple risks including—”


「……待って待って待って!!!」


ミーナは両手をブンブン振った。


「さすがに早いって!!!

えーと……えーと……slower please!」


猫は黙る。

数秒。


「……」


そして、尻尾がゆらり。


(念話)

『ねぇ、エスピラ様。この子であってる?』


こと

エスピラが固まる。


「……は?」


その顔が青ざめる。


「え、ええ……?」


エスピラ、絶叫。


「ええーー?! 英語喋らない感じーー?!!」


エスピラの絶叫を聞きながら、猫は目の前の少女を見る。

異世界の広場で、ミーナはまだ必死だった。


“Okay, okay… one more time!

Slowly! Very slowly!”


猫はだんまり。

ミーナは猫に向かって必死。


“Very slow!

Like… kindergarten level slow! ”


シャルルはため息をひとつ。


“...This might take a while.”


ミーナはにやっと笑う。


「だいじょーぶ! なんとかなるでしょ!」


シャルはもう一つため息をついて、天を見上げる。

ことのエスピラはさらに遠くを見つめた。


「えっ……ヤバい感じ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ