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チート召喚魔導士は、だいたいどこかで詰みかける。  作者: 月野みみ
第1章 はじまりの”言葉”

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EP18「エモい(3)」


カラーン


応接室から出て、礼拝堂に戻った時にまた鐘の音が聞こえる。


さっき見た濃紺のステンドグラスが、まだ静かに光っている。

深い水の底みたいだった教会も、今は少しだけ表情を変えているように見えた。


礼拝堂の中にはほとんど人がいなくなり、開け放たれたドアから賑やかな声が届く。


3人はそのまま教会の外まで進む。

教会の前にはいくつもの人の輪ができていた。


カラーン


ゆっくりと広がる鐘の音に歓声があがる。


ミーナは周りを見回した。

子どもたちが嬉しそうに手を叩く。

若い恋人たちが笑い合っている。

家族連れが肩を寄せて空を見上げていた。


集まった人たちの手には、あの杖。

記念グッズとして売られていた4色の杖。

ミーナも自分の杖を見る。


「あなたも持っていたのですね。

使い方は分かりますか?」


ルシアンが言う。


「えっと…空に向かって掲げるって!」


ルシアンは空を見上げる。

シャルルは珍しくミーナの腕に登ってきた。


「もうすぐですよ。」


カラーン


4つめの鐘の音。


その音の響きに合わせて、みんなが叫ぶ。


「建国祭おめでとう!!」


夜空に無数の光が上がった。


パッ。


花火のように弾ける。

人々が歓声を上げた。

周りの人に合わせて杖を掲げたミーナは、

空を見上げて止まった。


赤、緑、金、青。

4色の光が何度も何度も空中へ飛び上がる。


「きれい……」


シャルルが聞く。


「エモい?」


ミーナは笑った。


「うん、エモい。」


アクアブルーのシャルルの瞳は、まるで夜。

その中に光が反射している。

ミーナはシャルルと同じ高さで空を見ていることに気づく。


「…めっちゃ、エモい。」


大きな歓声の中、ルシアンが促す。


「さぁ、ミーナあなたもどうぞ!」


「はい!」


ミーナは杖を掲げ、叫んだ。


“spark”


その瞬間、今までのどれよりも強く、明るい光が舞い上がる。


広場に集まった人たちが驚きの声をあげる。

近くにいた何人かはミーナを凝視していた。


「…あれ?」


「ミーナ…その杖は魔道具です。

魔石に魔力を少し流せばよかったんですよ。

今のは明らかに呪文魔法でした。」


ルシアンが困ったように言った。


「ミーナは呪文魔法の前に、魔道具の使い方を覚えましょうか。」


「…はい。」


縮こまるミーナの腕で、シャルルが言う。


「ほんと君って…」


「まぁ、これから学ぶってことで。」


ミーナはまた杖を掲げ、今度は少しだけ魔力を流した。

言葉を伴わない魔法は、ちょっとだけつまらなかった。


ルシアンは二人に挨拶をして、街の人たちの輪の中に入っていく。


ミーナは杖に魔力を流す。


「……学園か。」


夜空の光が、また一つ弾けた。

ミーナは掲げたままの自分の赤い杖を見る。


「どんなことが学べるんだろ…」


「たくさんだよ。とってもたくさん。」


シャルルの答えにミーナは笑う。


「何それ?どんくらい?」


「この光と同じくらいかな?」


シャルルも笑って返す。


夜空に上がる無数の小さな光。

その下でたくさんのことが輝く。


教会の塔。

祭りのざわめき。

笑う人たち。

祈る人たち。

この国の言葉。

この街の生活。


そして、ミーナとシャルル。


「行ってみようかな、王立魔導学園!」


シャルルがミーナの決意を受け取ったように、頷いた。

そして言う。


「授業、大変らしいけど。」


「うっ。」


ミーナは一瞬だけ顔をしかめ、それから笑った。


「でも行く。」


「たぶん、またどこかで詰むと思うけど。」


シャルルが鼻を鳴らす。


「かもね。」


そのとき、広場の中央で一際大きな歓声が上がる。


見上げると、色とりどりの小さな光が重なって、夜空に大きな輪を作っていた。


赤。

緑。

金。

青。


四つの色が混じり合い、しばらく夜空に残る。


ミーナはその光を見上げたまま、そっと呟いた。


「……エモい。」


シャルルが言う。


「今のは、ちゃんと説明できる?」


ミーナは少し考えて、笑った。


「うーん……」


夜空を見つめたまま、ゆっくり言う。


「始まる感じと、終わる感じが一緒にあって。

きれいで、嬉しくて、でもちょっとこわくて。


前に進むしかないなって思う感じ。」


シャルルが目を細める。


「なるほど。」


ミーナは少し照れたように笑う。


そしてもう一度空を見上げた。


夜空の光は、まだゆっくり消えずに残っている。


祭りは終わろうとしていた。

けれど、ミーナの中では、何かが始まろうとしていた。

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