表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート召喚魔導士は、だいたいどこかで詰みかける。  作者: 月野みみ
第1章 はじまりの”言葉”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/24

EP14「バエる!(2)」

レストランを出ると、通りはすっかり祭りの顔になっていた。


石畳のメイン通りの両側には屋台がずらりと並び、

その奥には教会の塔が見える。


花飾りの下では、楽団の演奏に合わせて人々が踊っていた。


子どもたちはボール投げの屋台に群がり、

的に当たるたびに歓声が上がる。


焼き菓子の甘い匂いと、串焼きの煙が混ざり合い、

通りいっぱいに流れていた。


「うわぁ……!」


ミーナは思わず声を上げた。


「すごい人!」


シャルルが尻尾をゆっくり揺らす。


「迷子にならないでね。」


焼き菓子の屋台。

串焼きの屋台。

ゲームや記念グッズの屋台。

人の流れはゆっくりだけど途切れない。


「屋台って、こういう感じなんだね!」


ミーナはきょろきょろと辺りを見回す。


「ミーナの世界にもあるんじゃないの?」


「あるよ!でもこんなにたくさんは並ばない!」


子どもたちが笑いながら走り抜けていく。

通りの奥では楽器の音が鳴っている。


「ねぇシャルル、あれ見て!」


ミーナが指差した先には、小さな屋台があった。

色とりどりの杖が並んでいる。


「杖?」


「おもちゃだね。」


屋台の前に立つと、店主が笑顔で声をかけてきた。


「いらっしゃい!建国祭記念の魔法の杖だよ!」


机の上には四種類の杖が並んでいる。


赤。

緑。

金。

青。


どれも先端に小さな魔石が埋め込まれていた。


「きれい……」


ミーナは思わず赤い杖を手に取る。


「これ、本当に魔法出るんですか?」


店主がうなずく。


「お客さん、観光客かい?

ロスペリアの街ではね、二日目の夜、教会前に集まって一斉に光を打ち上げるんだ。

小さな花火だけどね。」


「みんなで?」


「ああ。建国の日を祝うための合図さ。」


ミーナは目を輝かせた。


「楽しそう!」


シャルルが杖を覗き込む。


「“spark”の魔石だね。」


「スパーク?」


「火花。小さい光が出る魔石。」


ミーナは四本の杖を見比べる。


「どれにしようかな?」


シャルルが言う。


「赤じゃない?エスピラ様の色だよ。」


ミーナは首をかしげる。


「えー、でも金色のほうが魔法っぽくない?」


「いや、エスピラ様でしょ。」


「見た目の話してるの!」


二人でしばらくにらみ合う。

店主がくすっと笑った。


「祭りなんだ。好きなのを選びな。」


ミーナは少し考えてから、目を閉じて唱えた。


「どーれーにーしーよーおーかーなー」


ミーナの不思議な歌に、シャルルも店主も目を丸くする。


「……それ魔法なの?」


「違うよ!」


「てーんーのーかーみーさーまーのーいーうーとーおーりッ!」


そして手にしたのは、


「これにします!」


赤の杖だった。


店主が受け取る。


「毎度あり…」


呆然としているシャルルと店主を横目に、

ミーナは杖を受け取ると、満足そうにくるくる回した。


「わぁ、軽い!」


そのときだった。

通りの向こうで叫び声が上がる。


「泥棒だ!」


人がざわつく。

小さな男の子が泣きながら叫んでいた。


「お金とられた!」


黒い服の男が人混みをかき分けて走っていた。


「逃げてる!」


ミーナは反射的に動いた。


「待って!」


人の間をすり抜ける。

犯人は噴水のある広場の方へ走っていく。


「追いつけない……!」


ミーナは杖を握る。

どうしよう。

追いつけない。


そのとき、噴水が目に入った。


水。


ミーナは息を吸う。


“splash!”


噴水の水が弾けた。

水しぶきが犯人にかかる。


「うわっ!」


男がバランスを崩して転ぶ。

その隙に周囲の大人たちが取り押さえた。


「捕まえたぞ!」


ざわめきが広がる。


「今のって?」

「呪文魔法…?」


周囲の人たちがミーナを見る。

ミーナは少し照れくさそうに笑った。


「えへへ……」


その様子を、人混みの少し後ろから見ている男がいた。

黒いローブ。

フードの奥から、静かな視線がミーナを捉えている。


「……呪文魔法。」


男は小さく呟いた。

そしてゆっくり笑う。


「面白い。」


隣にいた仲間に低く言った。


「見たか?」


「ええ。」


男は小さく笑った。


「まだいたとはな…“言葉”を使う者が。」


人混みの向こう。


ミーナはまだ噴水の前に立っていた。


その背中を、男はじっと見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ