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チート召喚魔導士は、だいたいどこかで詰みかける。  作者: 月野みみ
第1章 はじまりの”言葉”

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EP 11「ちがくない?(2)」

シャルルと街の中心へと歩くミーナは気づいた。


「魔法、使っている人いない…」


「そうだね。 呪文魔法は昔のものになってるんだ。

今は魔法といえば『魔道具』なんだよ。」


先を歩いていたシャルルが街灯を見上げながら言ったあと、ミーナの横に並んだ。


「皿洗いのスポンジも魔道具だよ?

あのスポンジには“wash”が刻まれた魔石が中心に入っている。

だから魔力を流せば、汚れた皿がきれいになる。

普通に力をいれてゴシゴシするより、ずっと楽に皿洗いができる。」


「それ、早く言ってよ!!!」


「ミーナは呪文が使えるからいいじゃないか。  

それよりも、あの屋台の車輪には“drive”が刻まれた魔石がついているから、魔力を流せば簡単に動かせるよ。」


「じゃぁ、あの街灯には“light”が刻まれた魔石ってこと?」


「そうだね。本当に便利だよね?」


シャルルが楽しげに、そして感心したように言う。

ミーナの心がチクリとして、足が止まる。


「…ねぇ…シャルル…

私が呪文魔法を練習する意味ってあるの?」


思ってたより後ろから聞こえたミーナの声に、シャルルは止まって振り返った。

ミーナが不安そうな顔をしている。

ほんの一瞬、シャルルがミーナの目を見る。

そして、もう一度前を見て言った。


「とりあえず、教会入ってみない?」



--------------------------------------------------------------------------------



教会の外観から想像していたよりも、中は質素だった。

だだっ広い室内に、木製のイスが整然と並んでいる。

遠く正面には、一段高くなった場所に小さな祭壇があるだけ。

飾りらしい飾りは、ほとんどない。


けれど——


数歩踏み入れた瞬間、印象が変わった。


大きな石の柱。

アーチ型に連なる高い天井。

見上げるほどに広がる空間。


そして何より、四方を囲むステンドグラス。


「……きれい……」


朝の光が東の窓から差し込み、教会の床をゆっくりと染めていく。


赤い光。


まるで朝日そのもののような色だった。


「エスピラ様だ……」


シャルルが小さく呟く。

その赤い光の中で、教会全体が静かに呼吸しているように見えた。


「ようこそ、教会へ。」


入口近くで立ち止まっていた二人に、穏やかな声がかかった。

振り向くと、黒い服に灰色のガウンを羽織った男性が立っていた。

いかにも教会の人、という雰囲気だ。


「あっ、えっと……」


突然話しかけられて、ミーナは言葉に詰まる。

横からシャルルが言った。


「魔力量を測りに来たんでしょ。

エマさんの手紙渡しなよ。」


「あ、そっか。」


ミーナは慌てて手紙を差し出す。


「Here you are.

Please read this letter.」


男性は手紙を受け取った。

それを確認すると、シャルルはくるりと背を向けた。


「ちょっと散歩してくる。」


そう言って、教会の奥へ歩いていく。

男性は一瞬驚いたようにシャルルを見たが、何も言わず手紙に目を落とした。

ミーナは少し不安になって呟く。


「動物ダメだったかな……」


静かな教会の中で、紙をめくる音だけが響いた。

手紙には、

ミーナが外国から来たこと。

英語が母語ではないこと。

エマの店でフィールドワークをしていること。

そして——


呪文魔法を使うこと。


が書かれている。

しばらくして、男性は手紙を閉じた。

そしてミーナを見た。


「なるほど。」


穏やかな声だった。


「こちらへどうぞ。」


男性の手招きで、ミーナは祭壇の前まで歩く。

男性は後ろの棚から小さな魔道具を持ってきた。

金属の台座に、ビー玉のような透明な石がはめ込まれている。


「ここを触ってください。」


言われるまま、ミーナは石に手を触れた。


その瞬間——


石の中心から 一本の細い光が走る。

そして、二本、三本――

五本の光が放射状に広がる。


“Level five…”


男性が呟く。

だが、光はそこで止まらない。


五本の光は、大きな柱を昇り、

やがてアーチ形の天井へと伸びていく。

ミーナが驚いている間にも、光はどんどん強くなっていく。


「眩しい!」


思わず目を閉じた。

その瞼の向こうで、光が膨れ上がっていくのが分かる。

小さな魔道具から出ているとは思えないほどの光。

教会の中が、いつの間にか光に満ち、ステンドグラスに反射する。


東の窓。

朝日の赤が、まるで火が灯ったように輝く。


南の窓。

薄緑の光が風のように軽やかに揺れた。


西の窓。

黄色のガラスが、金色の輝きを放つ。


そして北。

濃紺のステンドグラスは、光を包み込むように深く濃く光った。


四色の光が、教会の中を巡る。


揺れながら、流れながら、

やがて——


すべての光が、ミーナのもとへ集まってきた。


そして。


東へ。


赤い光が一気に走る。


次の瞬間。


教会の中が、濃い赤色に染まった。


まるで朝日そのものが教会の中に現れたようだった。


そして光は、

ミーナの体へと吸い込まれるように消えていった。


静寂。


「……言の座の神が、反応した……」


男性の呟きが、静かな教会に落ちた。

ミーナが恐る恐る目を開ける。

そして——


「あーーーーーー!!」


叫んだ。


手元の魔道具が、

きれいに真っ二つに割れていた。


「どうしよ!!

ヤバい、壊しちゃった!!!」


慌てるミーナの足元に、いつの間にかシャルルが戻っていた。


「ほらね。」


シャルルは呑気に言う。


「測る方が大変って言ったじゃん。」


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