表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千物語  作者: 松田 かおる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

雛人形をしまう日

「うわあっ!」

思わず声を上げて、あたしは目を覚ました。

そして、

「…今夜もかぁ、まったく」

誰もいない部屋の壁に向かって、思わず毒づいてしまった。


訂正、誰もいないわけじゃなかった。

あたしは起こした体をよじって、背後に飾ってある「雛人形」に視線を向けた。

雛祭りの後から毎晩、この雛人形が夢に現れては

「早くしまえ~」

「さっさと片付けてぇ~」

と、恨みがましく訴えかけてくるのだ。

暗闇にヌっと現れる色白の雛人形は、ちょっとしたホラーだ。


確かに雛祭りが終わって一週間近くが経っているのに、まだ片付けないでいるあたしが悪いと言えば悪い。

でも言い訳をすれば、ここのところずっと仕事が忙しくて家に帰ってくるのは真夜中、帰ってきても必要なことだけ片付けて、あとはベッドへ直行の繰り返し。

彼氏とだって、まともに会う時間がない。

だから正直言って、雛人形を片づける気力と体力が残っていないのだ。



『いつまでも雛人形を出していると、お嫁さんに行き遅れる』

とか言われてるし、あたしもそれは解ってる。

けど、どうしようもないんだから仕方がない。

そう自分自身に言い聞かせながら、あたしは布団に潜り込んで眠りに入った…




「今日も失敗かあ」

男雛が溜息をつきながら言うと、

「仕方ないわよ、彼女本当に忙しいんだし」

女雛がそれに答えた。

「それに」

女雛が続ける。

「あの子のお父さんも言ってたじゃない、『あいつを嫁になんかやらん』って」

それを聞いた男雛は

「でも、あの子のお母さんには『早くあの子にいい人が見つかるように』って願かけされちゃってるしなぁ」

困ったような口調で言い、

「まぁ、結局は『本人次第』ってことか」

どことなく諦めを含んだ口調で続けた。

「そうね、最後は自分自身だものね」

女雛もそれに同意した。




「はい、もしもし?」

翌日の夜中。

玄関の扉を開けたタイミングで、彼氏から電話がかかってきた。

「今から!?」

驚きを隠さず、あたしは声を上げた。

『残業で電車がなくなってしまったので、泊めて欲しい』

とのことだった。

「…まぁ、別にいいけど」

ということで、彼が今から家に来ることになってしまった。


そこで気づいた。

…雛人形、まだしまってなかった!

さすがに出しっぱなしじゃまずいよね。

あたしは大急ぎで雛人形を片付け始めた。

-ちょっと乱暴に扱うのは勘弁してね-

そう心の中で雛人形に詫びながら片付けていると、

「やれやれ」

という声が、どこからか聞こえてきたような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ